2 / 3
続く約束
しおりを挟む
薄ピンク色の花びらが舞う。桜大がひとり暮らしをしているアパートの近くにある公園は、満開の桜を見るために訪れる人で賑わっている。少し歩いたところにある川沿いにも桜が咲いているから、そこも見に行こうか、と話す声が聞こえてきて、桜大は隣を見あげた。
「俺たちも行ってみる? せっかくの桜大の誕生日だから、たくさんデートしたいし」
「うん」
桜より綺麗な微笑みを向けられ、とくんと心臓が高鳴った。頬が熱いから、きっと顔が赤くなっている。
大学が離れているのに、一志との距離は縮まった。正確には高校二年の秋から距離が変わった。幼馴染は恋人になり、高校を卒業してからも頻繁に会っている。隣に住んでいたときよりも意識して、会おう、会いたい、と互いに思って行動するから、ますます近い存在となる。
桜大ははらはらと落ちてきた花びらに手を伸ばすけれど、受け止められなかった。他の花びらもうまく手のひらにのってくれない。隣の一志も手のひらを出し、そこに吸い寄せられるように花びらがのった。一志は花びらを桜大の手にのせ、桜を背景にして穏やかに微笑む。春の陽射しのごとく温かな微笑みに、さらに心臓は跳ねあがる。
「誕生日おめでとう」
今日六回目の「おめでとう」だけれど、何回言われてもくすぐったい。
「もう何回も聞いたよ」
少しの照れくささが、また頬を熱くさせる。可愛げのない答えを返す桜大に、一志は目尻を緩めた。幼い頃からずっとそばにあった、心が包み込まれる笑顔だ。
「だって嬉しいんだ。桜大が生まれてくれた日に、今年もふたりで桜が見られること」
きゅっと軽く手を握られ、心臓が激しく脈打つ。まわりに見られていないかと周囲を確認したが、皆一様に桜を見あげていて気がついていない。軽く握られただけですぐに離れていった温もりに寂しさを覚え、一志を振り仰ぐ。変わらない笑顔を向けてくれる恋人に、甘えてみたくなった。
「来年もまた、一緒に桜を見てくれる?」
今から来年の約束なんて気が早いかもしれないが、約束したい。高校二年のあの日の約束が叶っているから、次の約束も叶うと思える。
期待が顔に出ていたのだろう。一志はふっと噴き出して、桜大の頬をひと撫でした。
「そうだね」
視線を桜に向けた一志をぼうっと見つめる。柔らかな陽射しが照らす横顔は、眩しいほどに輝いて見えた。
「できたらそのときには、桜大と毎日一緒にいられたらいいな」
「え?」
「ルームシェアしない?」
目をまたたく桜大に、一志は笑みを絶やさない。
「……そういう大切なことを急に言うの、やめてよ」
ただでさえ人の心なんて読めないのに、一志の考えることはときおり突拍子もなくて、驚かされてばかりだ。
「でも学校離れてるよ。ちょうどいいところが見つからないんじゃない?」
「新しいところを借りるんじゃなくて、今の桜大の部屋がいいな。近くにこんなに綺麗な桜があるし、俺、早起きは苦にならないから、毎朝桜大を起こしてあげる」
朝起きるたびに一志に会えるなんて、想像しただけで頬が緩む。
答えるかわりに一志の手をぎゅっと握る。でもきっと――。
「ちゃんと答えてくれないと、俺、心は読めないよ」
「嘘ばっかり」
思ったとおりのことを言われ、おかしくなる。
「大賛成!」
跳びつくように一志に抱きつく。まわりの目を気にするよりも、一志に気持ちを伝えたかった。心が読めても読めなくても、素直な気持ちは思いきり表現したい。
薄ピンク色の花びらが、風にのって舞い落ちる。
来年は、一志ともっと近い距離で桜を見られるだろう。
「俺たちも行ってみる? せっかくの桜大の誕生日だから、たくさんデートしたいし」
「うん」
桜より綺麗な微笑みを向けられ、とくんと心臓が高鳴った。頬が熱いから、きっと顔が赤くなっている。
大学が離れているのに、一志との距離は縮まった。正確には高校二年の秋から距離が変わった。幼馴染は恋人になり、高校を卒業してからも頻繁に会っている。隣に住んでいたときよりも意識して、会おう、会いたい、と互いに思って行動するから、ますます近い存在となる。
桜大ははらはらと落ちてきた花びらに手を伸ばすけれど、受け止められなかった。他の花びらもうまく手のひらにのってくれない。隣の一志も手のひらを出し、そこに吸い寄せられるように花びらがのった。一志は花びらを桜大の手にのせ、桜を背景にして穏やかに微笑む。春の陽射しのごとく温かな微笑みに、さらに心臓は跳ねあがる。
「誕生日おめでとう」
今日六回目の「おめでとう」だけれど、何回言われてもくすぐったい。
「もう何回も聞いたよ」
少しの照れくささが、また頬を熱くさせる。可愛げのない答えを返す桜大に、一志は目尻を緩めた。幼い頃からずっとそばにあった、心が包み込まれる笑顔だ。
「だって嬉しいんだ。桜大が生まれてくれた日に、今年もふたりで桜が見られること」
きゅっと軽く手を握られ、心臓が激しく脈打つ。まわりに見られていないかと周囲を確認したが、皆一様に桜を見あげていて気がついていない。軽く握られただけですぐに離れていった温もりに寂しさを覚え、一志を振り仰ぐ。変わらない笑顔を向けてくれる恋人に、甘えてみたくなった。
「来年もまた、一緒に桜を見てくれる?」
今から来年の約束なんて気が早いかもしれないが、約束したい。高校二年のあの日の約束が叶っているから、次の約束も叶うと思える。
期待が顔に出ていたのだろう。一志はふっと噴き出して、桜大の頬をひと撫でした。
「そうだね」
視線を桜に向けた一志をぼうっと見つめる。柔らかな陽射しが照らす横顔は、眩しいほどに輝いて見えた。
「できたらそのときには、桜大と毎日一緒にいられたらいいな」
「え?」
「ルームシェアしない?」
目をまたたく桜大に、一志は笑みを絶やさない。
「……そういう大切なことを急に言うの、やめてよ」
ただでさえ人の心なんて読めないのに、一志の考えることはときおり突拍子もなくて、驚かされてばかりだ。
「でも学校離れてるよ。ちょうどいいところが見つからないんじゃない?」
「新しいところを借りるんじゃなくて、今の桜大の部屋がいいな。近くにこんなに綺麗な桜があるし、俺、早起きは苦にならないから、毎朝桜大を起こしてあげる」
朝起きるたびに一志に会えるなんて、想像しただけで頬が緩む。
答えるかわりに一志の手をぎゅっと握る。でもきっと――。
「ちゃんと答えてくれないと、俺、心は読めないよ」
「嘘ばっかり」
思ったとおりのことを言われ、おかしくなる。
「大賛成!」
跳びつくように一志に抱きつく。まわりの目を気にするよりも、一志に気持ちを伝えたかった。心が読めても読めなくても、素直な気持ちは思いきり表現したい。
薄ピンク色の花びらが、風にのって舞い落ちる。
来年は、一志ともっと近い距離で桜を見られるだろう。
67
あなたにおすすめの小説
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
そんな拗らせた初恋の話
椿
BL
高校生で許婚の二人が初恋拗らせてるだけの話です。
当て馬と受けが一瞬キスしたりします。
Xのツンデレ攻め企画作品でした!
https://twitter.com/tsubakimansyo/status/1711295215192121751?t=zuxAZAw29lD3EnuepzNwnw&s=19
もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい
マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。
しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。
社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。
新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で……
あの夏の日々が蘇る。
諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】
カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。
逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。
幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。
友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。
まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。
恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。
ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。
だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。
煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。
レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生
両片思いBL
《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作
※商業化予定なし(出版権は作者に帰属)
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
テーマパークと風船
谷地
BL
今日も全然話せなかった。せっかく同じ講義だったのに、遅く起きちゃって近くに座れなかった。教室に入ったらもう女の子たちに囲まれてさ、講義中もその子たちとこそこそ話してて辛かった。
ふわふわの髪の毛、笑うと細くなる可愛い目、テーマパークの花壇に唇を尖らせて文句を言っていたあの人は好きな人がいるらしい。
独り言がメインです。
完結しました *・゚
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる