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【番外編②】甘く溶かして
【番外編】甘く溶かして ①
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奏の10代最後のバレンタイン。
特別なことをしたいとわくわくして当日を楽しみにするけれど――。
前話から少し時を遡った話です。
*****
今年のバレンタインはなにを贈ろうか。俺にとっては十代最後のバレンタインだから特別なことをしたい。藍流と流風にたくさん喜んでもらいたい。
試験勉強の合間にプレゼントするものを考える。チョコはなににしよう、プレゼントも贈りたい――考えているといくらでもわくわくできる。その分試験勉強に集中できなくて、さすがにそれはまずい、と気持ちを引き締める。でもすぐに頭の中はバレンタインになってしまう。バイト中もずっとそればかり考えていて、楽しくて仕方がない。
「奏、ご機嫌だね」
「!」
突然現れた流風にどきりとする。頭の中を読まれたりはしないと思うけど、藍流と流風には俺のことはすぐにわかってしまう。
「どうしたの?」
「夕飯の買い物に来たんだ。今夜は俺が作るよ」
俺のバイト先のスーパー。レジのバイトをすることになるまで色々話し合いもした。なんとかバイトをすることができて今に至る。店はみんないい人ばかりで、すぐに仕事も楽しくなった。
「試験なのにちゃんとバイト入ってるけど、大丈夫?」
「流風だって同じでしょ。俺はそれでもちょっと減らしてるから大丈夫。今夜はシチュー?」
「そう。冷えるからね」
流風はレストランのホールでバイトをしていて、シフトによって帰りが早かったり遅かったりする。それでも藍流の働く居酒屋よりは閉店時間が早いので、夕飯を作るのは流風か俺が多い。藍流もバイトが休みの日は作ってくれて、藍流と流風が作ってくれるごはんはとてもおいしくてわくわくする。なにか仕掛けがあるわけではないのだけれど、俺にはふたりが作ってくれたものだというだけですごいごちそうだ。
「じゃあ先に帰るね」
「うん。気をつけてね」
会計を終えて流風が手を振りながら帰って行く。こういうときは少し寂しい。いつでも一緒にいたい。早くふたりにくっつきたい。
スーパーにもバレンタインの特設売り場がある。俺の働く店では、正面入り口目の前の一番目立つところ。休憩中に見てみると、可愛くておいしそうなものがたくさん。
でも俺は知っている。藍流と流風にとって、俺以上に可愛いものはないことを。――自分で考えてものすごく恥ずかしいが真実だからな、と苦笑してしまう。
手作りでも買ったチョコでも気持ちがこもっていると高校生の頃に言ってくれた。だから余計に迷ってしまう。試験で忙しいし、買ったほうが簡単なのは本当。だけど藍流と流風に関してはそれで済ませたくない。いつでも力いっぱい、精いっぱい愛してくれるふたりには、それ以上を返したい。
というわけで、手作りに決まった。さて、なにを作ろうか。俺にとって十代最後のバレンタイン。ふたりがすごく笑顔になってくれたら嬉しい。
特設売り場を離れて休憩室に向かう途中で青果売り場をとおる。目に飛び込んできた、鮮やかな赤。いちごだ。きらきらして宝石みたいないちごが、きちんとみんな同じ方向をむいてパッケージに入っている。
「そういえば……」
藍流と流風と付き合ってから初めてのバレンタインには、ふたりがいちごをチョコでひとつずつコーティングしたものをプレゼントしてくれた。特別と言ったらこれしかない。決めた。
わくわくで心が弾んで、ついでに足取りまで軽くなった。
試験とバイトとバレンタイン。必修レポートが思ったよりも時間がかかってしまった。どれも手を抜きたくないと思ったから気合いを入れすぎたのかもしれない。バレンタインの準備が全然できなかった。
一応春休み。
「奏、大丈夫?」
藍流が俺の顔を覗き込んで聞いてくる。まだ少し肌が火照っていて、暖房が暑く感じる。
「なにが?」
「ちょっと痩せたんじゃない?」
心配そうに頭を撫でられる。痩せただろうか。
「うん。このあたり細くなった」
ベッドに横になる俺の腰のラインを流風がなぞる。そのやんわりとした感覚にぞくりと快感が駆け抜けていく。
「そんなとこ、やだ……」
身体を捩って逃げようとしたら、藍流と流風は俺の肩や背中にキスをしながら身体中を撫でていく。じわじわと肌が熱くなり、息が弾む。
「ここも痩せた」
藍流が首を撫でて、肩が跳ねる。
「ここも」
流風が太腿を撫でるので、びくんと震えてしまう。そんな触り方をされたらおかしくなってしまう。
「意地悪しないで……!」
布団をかぶって隠れたらとろとろと瞼が重たくなってきた。藍流と流風も布団に入り、三人で「おやすみ」とキスをしてリモコンで照明を消した。
特別なことをしたいとわくわくして当日を楽しみにするけれど――。
前話から少し時を遡った話です。
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今年のバレンタインはなにを贈ろうか。俺にとっては十代最後のバレンタインだから特別なことをしたい。藍流と流風にたくさん喜んでもらいたい。
試験勉強の合間にプレゼントするものを考える。チョコはなににしよう、プレゼントも贈りたい――考えているといくらでもわくわくできる。その分試験勉強に集中できなくて、さすがにそれはまずい、と気持ちを引き締める。でもすぐに頭の中はバレンタインになってしまう。バイト中もずっとそればかり考えていて、楽しくて仕方がない。
「奏、ご機嫌だね」
「!」
突然現れた流風にどきりとする。頭の中を読まれたりはしないと思うけど、藍流と流風には俺のことはすぐにわかってしまう。
「どうしたの?」
「夕飯の買い物に来たんだ。今夜は俺が作るよ」
俺のバイト先のスーパー。レジのバイトをすることになるまで色々話し合いもした。なんとかバイトをすることができて今に至る。店はみんないい人ばかりで、すぐに仕事も楽しくなった。
「試験なのにちゃんとバイト入ってるけど、大丈夫?」
「流風だって同じでしょ。俺はそれでもちょっと減らしてるから大丈夫。今夜はシチュー?」
「そう。冷えるからね」
流風はレストランのホールでバイトをしていて、シフトによって帰りが早かったり遅かったりする。それでも藍流の働く居酒屋よりは閉店時間が早いので、夕飯を作るのは流風か俺が多い。藍流もバイトが休みの日は作ってくれて、藍流と流風が作ってくれるごはんはとてもおいしくてわくわくする。なにか仕掛けがあるわけではないのだけれど、俺にはふたりが作ってくれたものだというだけですごいごちそうだ。
「じゃあ先に帰るね」
「うん。気をつけてね」
会計を終えて流風が手を振りながら帰って行く。こういうときは少し寂しい。いつでも一緒にいたい。早くふたりにくっつきたい。
スーパーにもバレンタインの特設売り場がある。俺の働く店では、正面入り口目の前の一番目立つところ。休憩中に見てみると、可愛くておいしそうなものがたくさん。
でも俺は知っている。藍流と流風にとって、俺以上に可愛いものはないことを。――自分で考えてものすごく恥ずかしいが真実だからな、と苦笑してしまう。
手作りでも買ったチョコでも気持ちがこもっていると高校生の頃に言ってくれた。だから余計に迷ってしまう。試験で忙しいし、買ったほうが簡単なのは本当。だけど藍流と流風に関してはそれで済ませたくない。いつでも力いっぱい、精いっぱい愛してくれるふたりには、それ以上を返したい。
というわけで、手作りに決まった。さて、なにを作ろうか。俺にとって十代最後のバレンタイン。ふたりがすごく笑顔になってくれたら嬉しい。
特設売り場を離れて休憩室に向かう途中で青果売り場をとおる。目に飛び込んできた、鮮やかな赤。いちごだ。きらきらして宝石みたいないちごが、きちんとみんな同じ方向をむいてパッケージに入っている。
「そういえば……」
藍流と流風と付き合ってから初めてのバレンタインには、ふたりがいちごをチョコでひとつずつコーティングしたものをプレゼントしてくれた。特別と言ったらこれしかない。決めた。
わくわくで心が弾んで、ついでに足取りまで軽くなった。
試験とバイトとバレンタイン。必修レポートが思ったよりも時間がかかってしまった。どれも手を抜きたくないと思ったから気合いを入れすぎたのかもしれない。バレンタインの準備が全然できなかった。
一応春休み。
「奏、大丈夫?」
藍流が俺の顔を覗き込んで聞いてくる。まだ少し肌が火照っていて、暖房が暑く感じる。
「なにが?」
「ちょっと痩せたんじゃない?」
心配そうに頭を撫でられる。痩せただろうか。
「うん。このあたり細くなった」
ベッドに横になる俺の腰のラインを流風がなぞる。そのやんわりとした感覚にぞくりと快感が駆け抜けていく。
「そんなとこ、やだ……」
身体を捩って逃げようとしたら、藍流と流風は俺の肩や背中にキスをしながら身体中を撫でていく。じわじわと肌が熱くなり、息が弾む。
「ここも痩せた」
藍流が首を撫でて、肩が跳ねる。
「ここも」
流風が太腿を撫でるので、びくんと震えてしまう。そんな触り方をされたらおかしくなってしまう。
「意地悪しないで……!」
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