1 / 22
囲いの中で
囲いの中で①
しおりを挟む幼馴染の衛介の作った囲いの中で生きてきた尚紀にとっては、衛介の言うことが普通だった。それは成長して大学生になってもそのままで―――。
*****
俺は箱入りっていうか、幼馴染の作った囲いの中で生きてきた。
箱に詰められていると表現するのが正しいかもしれない。
異常なまでに俺を可愛がり、俺を好きだと言う幼馴染…椎名衛介。
衛介のおかげで俺は世間をよく知らずに大学生になってしまった。
友達もいない。
尚紀には自分だけいればいいといつも衛介が言うからそういうものだと思っている。
俺には衛介の言うことが普通。
「椎名くんって、かっこいいのにいつも小井くんと一緒だよね」
そうなんだよ。
離れないんだ。
そういうものなんだ。
「尚紀」
「うん」
部屋は当然ルームシェア。
バイトは二十歳になったらしてもいいと言われている。
もちろん、衛介から。
親も『衛介くんがそばにいてくれれば安心』と衛介を信頼しきっている。
確かに俺はちょっと抜けてるところがあるのは自覚している。
スマホを差し出すと、慣れた手つきでパスコードを入力する衛介。
これは一日の終わりの恒例、スマホチェック。
誰かと連絡先を交換したり、連絡を取っていないかの確認。
別に隠すことなんてない。
パスコードも教えてあるから、俺のスマホは衛介が見て当然のもの。
「うん。大丈夫」
「そりゃ、べったり衛介がそばにいるのに誰かと連絡先の交換なんてしたら、その場でわかるだろ」
「それでもちゃんとチェックしておかないとな」
「心配性だな」
本当に俺のことばっかり考えてる。
まあ、俺が好きで彼女作る気が全くないのは知ってるから深く色々言わないけど。
俺だって衛介が好きだから、衛介に彼女ができたら悲しいし。
「おいで」
ぽんぽんと衛介の隣を示されるのでそこに移動すると、軽く抱き締められた。
「可愛い尚紀。俺が守ってやらないと、この世は危険がいっぱいだ」
「ほんと、心配し過ぎ」
「尚紀が可愛過ぎるから、どんなに心配しても足りないんだよ」
可愛い…ね。
「シャワー浴びてきな」
「うん」
脱衣室の洗面台にある鏡を見て首を傾げる。
俺は世間知らずだけど、自分が可愛くないのは知ってる。
可愛くないどころか、平凡で地味。
かっこいい衛介と並ぶとなんか…すごく……なんとも言えない気持ちになる。
衛介は見慣れないほどかっこいい。
幼稚園のときからずっとそばで見ているけど、いつまでもどこまでもかっこいい。
俺がそばにくっついていかったら、あっと言う間に人気者になるだろう。
でも本人はそうなりたいと願っていない。
俺のそばにいられればそれでいい、らしい。
こうなったきっかけは小学生のとき、俺がぼけっとしていて誘拐されそうになったから。
すぐに気が付いた衛介が親を呼んでくれて事なきを得たけれど、それから衛介の箱詰めは始まった。
俺はぼーっとしていたから特になにも感じていなかったんだけど、たぶん衛介にはすごい恐怖だったんだろう。
「衛介、シャワー交代」
「ああ。尚紀」
「誰か来ても絶対出ないよ」
「気を付けろよ」
「うん」
本当は一緒にシャワーを浴びたいらしいけど、さすがに恥ずかしい。
スマホをいじりながらカレンダーを見る。
あと二週間で俺の二十歳の誕生日だ。
衛介には絶対当日予定を入れないようにと言われているけれど、言われなくたって予定なんて入りっこない。
五月に先に二十歳になっている衛介と、初めての酒を飲んでみようという話になっている。
俺、あんま飲めないだろうな。
両親も弱いし、俺も弱そう。
でも、衛介とふたりなら大丈夫だろう。
…なんだかんだで俺も衛介に頼りっきりなんだよな。
「尚紀、なにしてるんだ」
「え、あ…ちょっとイメトレ」
「なんの?」
「初めての酒」
シャワーから戻った衛介に適当なことを言ってしまった。
いや、そんなに間違ってないか?
「酒を飲める年になっても、尚紀は俺の前以外では飲まないこと」
「うん、わかってる」
「それならいいけど」
心配性がまた出てきた。
俺の隣に座った衛介がスマホをいじり始めるので、俺はタブレットで動画を再生する。
このタブレットは衛介のものだ。
「…衛介」
「なに」
「俺って世間知らず?」
「そうだな。俺がそう育てた」
「育てたとか言うな」
誤解を招く発言はやめてくれ。
誤解するような人もいないけど。
時々ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ寂しくなる。
友達がいないこと。
衛介がいればそれでいいんだけど、でも衛介が離れていってしまったら俺には誰も残らない。
その恐怖もある。
「衛介…」
「なに」
「…結婚しないでね」
「っ!? ごほっ…」
麦茶でむせてるので背中をさすってあげると、涙目で俺を見る衛介はとても色っぽくて…。
「お、俺…もう寝る!」
「早くない?」
「寝るから寝る」
いつもリビングでばかり過ごしているけれど、俺と衛介の部屋はちゃんとある。
寝るときはさすがに別々に寝ている。
衛介が夜中に俺の様子を見に来ているのは知ってるけど。
「おやすみ、衛介」
「おやすみ」
自室に移動する。
すぐにベッドに入ってどきどきが収まるのを待つ。
あんな顔を見せられたら色々むくむくしてきてしまう。
衛介には言えないけど、俺はエロいことに興味津々。
だからひとりで収める。
下着の中に手を入れてすでに昂っているものに触れると、思った以上に熱い吐息が漏れた。
少し力を入れて扱くとすぐに昇り詰めていく。
想像するのは衛介。
なぜか俺の性欲は衛介でしか解消できない。
これだけそばにくっついていて、箱詰めにされていればそういうものになってしまうのかもしれない。
俺がエロ動画なんて見ようものなら発狂するだろうし。
だから安全なところで衛介、ということになったのかもしれない…無意識の中で。
「ん…っ、はぁっ」
衛介のはどんな形をしてるんだろう。
衛介は、どんな風に女を抱くんだろう。
……それが俺だったら…?
「!?」
自分の想像にはっとする。
衛介が抱くのが俺だったら…?
なに考えてるんだ。
あぶない。
でも。
「……」
なんかすごく…興奮する、かも。
衛介に抱かれることを想像してみる。
けど、いまいちリアルさに欠けてしまう。
スマホを出す。
男同士のセックスの仕方を検索して、検索履歴の消し方を検索する。
調べるとすごい未知の世界で、脳内がどんどんそれ一色になっていく。
うわあ、うわあああ…と思いながら、衛介に抱かれる想像がリアルなものになっていって、昂りは痛いくらいに張り詰める。
検索履歴を消して、もう一度昂りに触れた。
衛介の指で恥ずかしいところをほぐされて、衛介が挿入ってきて。
ふたりで気持ちよくなったら………。
「…ぅ……っ」
あっという間に限界に達した。
恥ずかしい。
そして我に返る。
なんてことを想像してしまったんだ…。
衛介と……衛介に……うわあ!
でも気持ちよさそうな顔をしている衛介を想像したのはなかなかすごい…リアルで。
また昂りが熱を持つ。
いけない道に踏み込んだ気がした。
53
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
