囲いの中で

すずかけあおい

文字の大きさ
2 / 22
囲いの中で

囲いの中で②

しおりを挟む
「尚紀」
「うん」

いつもどおり衛介のスマホチェック。
やましいことなんてなにもない。
…昨日の検索履歴は消したし。

「尚紀、これなに」
「えっ」

消したし…消したよな!?

「『検索履歴の消し方』って検索してるけど」
「!!」
「どういうことだ? なにか隠してる?」

どうしようどうしようどうしよう。
まさかそれを消し忘れるなんて…俺の馬鹿!
でもこういう興味って正直に言っていいのかな。
これまでに経験がないからわからないし、恥ずかしい!

「…いや、なにも?」

とりあえずごまかそう。
証拠なんてなにもないんだから。

「『男同士 セックス』、『男同士 セックスの仕方』……なんだこれ」
「!?!?」
「なに? なんでこんなこと調べてるんだ?」
「あの……」
「まさか誰かに誘われたとか、好きな男ができたとかじゃないだろうな?」

どうしよう…。
正直に言ったら、それも怒られそう。
世間のみなさんはこういうとき、どうやって切り抜けるの!?

「俺、もう寝…ひっ」

立ち上がって部屋に逃げようとしたら、足首を掴まれた。

「逃げるな」

目が怖い。
ぶんぶんと足を振ってみてもがっしり掴まれていて離してくれない。

「座れ」

嫌だ、怖い。
怒られる。
逃げたい。

「座れ」

もう一度言われて、恐る恐る座る。
顎を掴まれて顔を背けられないようにされた状態で詰問が始まる。

「あれはなんだ」
「あの…えっと」
「なんであんなこと検索した?」
「それは…」
「好きな男ができたのか」
「…違う」
「じゃあなんだ」

いや、違わないのか?
でも、俺が衛介を好きなのはずっと前からだから、好きな男ができたわけじゃない。
これ、どう答えたらいい…?

「あの…その、ちょっと勉強したくて…」
「なんのために」
「それは…」

オナニーのためなんて言えない!!
どうしよう…。

俺が必死で脳みそをフル回転させて言い訳を考えていたら、大きな溜め息が聞こえてきた。
びくびくと衛介を見ると、冷めた目で俺を見ている。

「尚紀」
「は、はい…」
「外出禁止」
「え」
「外出禁止だ」
「学校は?」
「行かなくていい。俺も行かない」

まずい…このままだと大変なことになりそうだ。

「違くて…あの、好きな人ができたわけじゃなくて」
「外出禁止」
「その…ちょっと、色々想像するのに調べただけで…」
「想像? なにを?」

形のいい眉がぴくりと上がる。
怖い…。

「あの…あの…」
「『あの』じゃわからない。はっきり言え」
「……衛介と、セックスするのを想像しました」

言ってしまった…。
嫌われたらどうしよう。
ちらりと様子を伺うと、衛介は目を見開いて固まっている。

「衛介…?」

動かない。
この隙に部屋に戻ろう。
と思ったら手首を掴まれた。
そう簡単にはいかないらしい。

「……」
「衛介?」
「………」
「どうしたの?」
「…………」

なに?
この無言はどういう意味?

「……どういう想像をした?」
「えっ」
「想像したことを言え」
「やだよ!」

そういう罰!?
恥ずかし過ぎて口になんてできない。
今度は手をぶんぶん振って離してもらおうとするけれど、やっぱりがっしり掴まれていて離してくれない。

「逃げたら外出禁止だ」
「ひっ」

頬をぎゅっと掴まれて、潰される。

「やめへ」
「離して欲しければ言え」
「……」

もう、言うしかないのか…。

「いうから、はらひへ」
「言え」

離して、が通じたようでぱっと手が離される。

「……衛介に、えっちなこといっぱいされるの想像した」
「“えっちなこと”じゃわからない。詳しく言え」
「詳しくって言われたって…よく知らないし…」
「あんなにスマホで検索してたんだ。知らないことないだろう」

ぎゅっと目を瞑って、もう知らないと思って口を開く。

「……いっぱいキスされたり、触られたり…指とか、…衛介の、挿れてもらうの想像した…」

声がどんどん震えて小さくなっていく。
目を開けられない。
衛介がどんな顔をしているか知るのが怖い。
泣きそう…。

ちゅっ

目尻に溜まった涙を吸われる感覚にびっくりして目を開ける。
真剣な瞳をした衛介が正面から俺を見ている。

「……衛介?」
「……………誕生日プレゼント、期待してろ」
「? うん」

それだけ言うと衛介は部屋に戻ってしまった。
俺より先に部屋に戻るなんて珍しい。
じゃあ俺は少しリビングにいようかな。

「あれ」

スマホがない。
衛介が持っていったのかな。
特に急ぎで使うこともないからいいけど。
ていうかなんで消した履歴を見れたんだろう。
衛介はなにをして履歴を復活させたんだ…?

しばらく考えてみてもわかるはずがなく、首を何度も捻っていたら眠たくなってきた。
部屋に戻らないと。
そう思うのに身体が動かなくて、うとうとしてしまった。

「…?」
「起きたか」
「えいすけ…?」

目を開けると俺の部屋だった。
ベッドの横に衛介が座ってスマホをいじっている。

「ごめん…俺、寝てた?」
「ああ。抱き上げても起きないくらいしっかり寝てた」
「運んでくれたんだ…ありがとう」

見ると衛介がいじってるのは俺のスマホ。

「なにしてるの?」
「別に」
「じゃあ返して」
「ほら」

スマホが返ってきたのでそのままベッドサイドに置く。
衛介が髪を撫でてくれるので目を閉じると、前髪を避けて額に柔らかいものが触れた。

「…衛介?」
「よく眠れるように」
「小さいときもよくやってくれたね」

今考えると随分大人びたことをする子どもだなぁと思うけど、衛介ならおかしくない。
むしろ王子様のキスのようだ。

「……衛介」
「なに」
「俺がエロいこと考えてたの知って、幻滅した?」
「遅い第二次性徴期だろ」
「だいにじせいちょうき…」
「もう寝ろ。おやすみ、尚紀」
「おやすみ…」

こうやっていつも俺は衛介に守られてきたんだな…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...