ちょっとおかしい幼馴染

すずかけあおい

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ちょっとおかしい幼馴染②

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◇◆◇


宿題のプリントは詩音のおかげで無事終わらせられた。
授業中、廊下側一番前の席の詩音の背中を見る。
姿勢がいい。
なんとなく俺も姿勢を正す。
こうやって見ると人の手を食べようとしたりする変態には見えないんだけどな。
まあ昔から詩音はあんな感じだったか。
ご飯を食べ残すと詩音がそれを食べたがるので俺は好き嫌いせず綺麗にご飯を食べるようになったとか、今では結果的によかったと感じられるようになった。
脱いだ服を部屋に脱ぎ散らかしておくとにおいを嗅がれるからきちんと脱衣室の洗濯カゴに入れるようになったとか。
まあ、結果としてはいい事…だ。

「問三を原田」
「はい。………」

かっこいいなぁ…。
ちらっと見える横顔が凛々しくて、思わず見惚れてしまう。
透き通っていてよく響く、ずっと聞いていたい声。
好きだな。

「心、手繋ごう」
「え?」

昼休み、詩音は急にまたそんな事を言った。
どきっとする。
また手を食べられんじゃないかと思ったから。
でも本当に繋ぐだけだった。
廊下の隅っこで手を繋いで並んで座る。
誰も冷やかしたりしない。
もう見慣れてるから。
詩音は耳元でこそっと。

「あれは帰ってからってここちゃんが言ったから我慢してる」
「……」

我慢してるんだ…。
授業中のかっこよさはどこへ行った。
でもこれも俺だけに見せてくれる姿だと思うと愛おしい。
たまにわけのわからない事をしても許せてしまうくらい好き。

好きだけど。

「子作りしよう」

…わけわからな過ぎる。

「いや……は?」
「ここちゃんの子は可愛いと思う。でも子どもだけじゃなくて俺の事もかまってね」
「え?」

詩音のベッドになぜか押し倒されている俺はどういう反応をしたらいい?

…詩音って頭いいよな。
まさか男同士で子どもができない事を知らないはず、ない…よな?

「…いや、俺達まだ高校生だし」
「大丈夫。俺、学校やめて働くから!」

俺も詩音も色々そういう話じゃなくて。

「えっと、詩音も俺も男だから子どもはできないんじゃ…?」
「ここちゃん、男同士で子どもはできないんじゃ?じゃなくてできないんだよ」
「……」

わかってるんだ…。
じゃあどういうつもりだ。

「だからね、心、」
「うん」
「できるまでするんだよ」
「!?」

手を取られてまた朝のようにはむはむと甘噛みされて顔が熱くなる。
なにを始めようっていうんだ、この男は。

「ここちゃんは嫌?」
「え?」
「ここちゃんが嫌ならしない」
「……」

なんでここにきて俺に聞くんだ。
ていうか嫌ならしないって……俺は…俺はどう思ってるんだ!?

「ここちゃんはどうしたい?」

俺はどうしたいか…?

「俺とどうなりたい?」

詩音とどうなりたいか…。

「俺は…」
「うん」
「……俺は」
「うん」
「………」

そんなのわかんないよ!!

「………ちょっと、考えさせて」

なんとかそれだけ言った。
詩音は怒るでもなくただ静かに頷いて俺の頬にキスをした。

そういえば詩音とはキスもしてないのに、いきなり子作り?
いや、子どもは作れないんだけど。
それ以前に結婚もできないし。

…俺は詩音とどうなりたいんだろう。


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