ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
53 / 1,124
旅立ち~オードゥス出立まで

ぎゃあああ

しおりを挟む
「こんにちは~…」

「ぎゃあああ!」

現在午前11時、ノアが泊まる宿近くにある洋裁店。
血塗れになった服の代わりを買いに来たのだが、いきなり血塗れの少年が現れた為女性職員が悲鳴を上げてしまった。

「もー…びっくりさせないで下さいよ…
はいこちらでどうでしょうか?」

「おーぴったり、ありがとうございます。」

洋裁店を出て次は薬草小屋に向かう。

「いらっしゃーい…にゃ!?お兄ちゃん顔青白いにゃ。どーしたにゃ。」

「昨日ちょっと血を流し過ぎてしまって…チノアラシの針ってありますか?」

「お兄ちゃんチノアラシ知ってるのね、あるのにゃ。こっちにある秤に乗って貰って良いかにゃ?」


『チノアラシ』…石や鉱石を主食とするネズミ系のモンスター、名前の割りに温厚。背中の針に金属成分を多量に含んでおり処理の仕方によっては輸血針として使用可能。


「うーん…お兄ちゃんの体重なら2本にゃね、腕出してにゃ。」

「…はい。」

座った体勢で腕捲りをして台に腕を置く。 

「じゃあいくにゃ、3…2…「ブスッ、ブスッ」ほいっとにゃ。」

「いっ!ぎっ!…2で射たないで下さいよ…」

ノアの腕、血管目掛け2本立て続けに突き刺す。
刺さった針は徐々にノアの体内へ吸収されていく。

「こーいうのは思い切りが大事なのにゃ。
あ、そうにゃ!お兄ちゃんこの間作ってた回復玉うちでも作って良いかにゃ?」

「え?構いませんよ。どうしてです?」

「あの回復玉の作り方は薬草の煮出し方や作製完了の見極めの練習になるのにゃ。」

(あー確かに、回復玉作ってたら<作製の見極め>とか<調理師仮免許>とか取れたしな…)

「それで自分達でも使ってるんにゃけど30個程余っちゃって…」

「あーそういう事ですか良いですよ。全部下さい。幾らですか?」

「い、良いのにゃ!練習で作ったからお代は貰えないのにゃ!」

「そ、そうですか。であれば頂きます。
あ、そうだこちらからも1つ良いですか?」

そう言って鞄から鉄串が刺さった苦万蜂を取り出す。

「んにゃ!苦万蜂じゃにゃいか!お兄ちゃんが取ってきたにゃ?」

「ええ、こいつの毒が結構厄介そうなので武器として使えるかな、が半分。薬草小屋の人欲しいかな、が半分ですね。」

「一撃で仕留めてるから凄く状態が良いのにゃ。でもこの毒の抽出はお師匠さんじゃないと無理なのにゃ。
師匠、しーしょー。」


と店員が店の奥に向かい叫ぶ。


「聞こえてるよ。坊やだね?苦万蜂を持ち込んだのは…ほう、綺麗に仕留めたね。ほぼ無傷じゃないか。」

奥から現れたのは杖をついたもこもこの猫獣人。
背丈はノアの胸程、体毛がもこもこ過ぎて顔が見えず完全に形は球。
ついていた杖を体毛の中にしまい、代わりにモノクルを取り出し、(恐らく目の位置に)装着して苦万蜂を観察する。

「頭の一撃で仕留めてるから眼、腹、翅全部無事だね。眼、翅は装飾品。腹に毒が入ってるから薬師、医療系に割りと高く売れるから覚えとくと良いよ。
苦万蜂には1つ1つは弱い毒だけど混合されて威力の底上げをしてるの、ただ抽出には時間が掛かるからまた来てもらって良いかしら?」

「分かりました。では手元に残り8匹ありますので渡しておきます。」

鞄から残りの蜂を取り出す。少し多かったのか店員と師匠が「にゃああ…」と鳴いていた。

「眼や翅の買取金は後でギルドに報告しとくよ。」

体調も良くなり用も済んだのでギルドに向かう。
中に入るといつも通り職員が働いている。ぐるッと中を見回し、まだ目的の人物がいないことに少し安堵する。


(何安心してるんだよ、ただご飯食べに行くだけじゃないか…)

ギィッ


ノアが何故かうんうん唸っている背後でギルドの扉が開く。今更ながら<気配感知>に知ってる反応があったことに気付く。

「あ、ノア君、お待たせ~」

クロラに挨拶しようと振り向いたノアだが、扉の向こう、通りの奥に一瞬ニヤリ顔のポーラを見た気がしたが気のせいだと思いたい。

「あ、いえ、自分も今来た所ですから。」

ノアは改めてクロラを見る。気のせいか顔が赤い気がする。

「クロラさん顔赤いみたいですけど大丈夫ですか?」

「あ、うん。たまたまそこでポーラに会って少し話してたから慌てて走ってきただけ…ただご飯食べに行くだけなのに、ごめんね。」

(ははーん、何か吹き込まれたな。)

何はともあれクロラが来たのでノアは一緒におばちゃんの食堂に向かう。
ノアの隣を歩くクロラだが俯いている。会話がないのもあれなので

「クロラさん、ポーラさんに何か吹き込まれましたか?」

「ぅえっ!?あ、いやー
『クロラは彼と2人っきりになると緊張して何も話せなくなるだろうから困ったら手握っちゃえ、彼は動揺はするだろうけど拒否する事は無いハズだ』って…」

「くそぅ…ぐうの音も出ない…」

思わず言葉に出る。それを聞いたクロラはノアの手を握る。
ノアの体は強張るが振りほどく様なことはしない。

「ホントだ。」

にこっと笑うクロラの顔に

(やっぱりクロラさんは笑ってる顔が一番だな…)

などとお互い良い感じになった所で


「良い雰囲気な所申し訳無いけど、とりあえず席座ってくれないかい?」


既に食堂に到着し、カウンターからおばちゃんとチャールズがこちらの光景を眺めていた。

「ど、どどど、どこから…?(ノア)」

「えー?『くそぅ…ぐうの音も出ない…』辺りからだね。」

(ほぼ最初からじゃないかぁっ!)

せめてもの救いだったのは周りに他の人がいなかった事だろう。
ノアが無言で嘆きつつもおばちゃんに促され席に着く。
今日のおすすめはお肉たっぷりのハンバーグの様だ。2人供同じ物を注文する。
少しすると肉の焼ける音と数種の香辛料香りが漂ってくる。クロラはもとより、ノアは昨日何も食べず寝た為とても腹が減っていた。

おばちゃんが席に料理を運んでくる。
肉が少し焦げた香りとソースの甘辛い香りが合わさり2人の胃袋を刺激する。

「「いただきまーす。」」

2人供黙々と食べる。ノアが4回程食べ進めた所でふと口に頬張って食べ続けるクロラの顔を見る。
それに気付いたクロラが慌てて口元を隠して顔を背ける。

「ノ、ノア君、どうしたの?私の顔見て…」

「前にも言いましたが僕クロラさんが美味しそうに食事してる時の表情好きなんです。」


「そ、そんなに?」

「ええ、惚れるほ、どです…」

言ってる途中で自分が何を言おうとしているかに気付くが時遅し。
お互いが赤面し合う状況になり掛けた時、2人が座ってる席が影に覆われる。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...