ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

2人同時に

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合図も無しに2人同時に駆け出す。接敵間近で最初に動いたのはベルドラッドだった。

大振りの右を繰り出す動作にノアは加速し更に前進する。
前進すると思っていなかったベルドラッドの拳は空を切りがら空きになった脇腹に重い左の2発を打ち込む。

ドドッ!     「うぐっ!」

怯んだ所に正面の腹に1発右を打つ。

ズムッ!     「ぐっ!」

すれ違い様左手の付け根でベルドラッドの横顔に掌底打ちを繰り出す。

ゴッ!     「がっ!」

2、3歩よろめくが攻撃の手は緩めない。
ベルドラッドに向け駆け出すと待ってましたとばかりに左を思いっきりノアに振るうが

「予備動作がでかい。」

ノアはその場でピタリと止まりまたベルドラッドの拳は空を切る。
振り上がったベルドラッドの腕を左手で押し付け、がら空きの左脇腹に重めの右を2発と中段蹴りを繰り出す。

ドドッ!ズドッ!     「うぐぁっ!」

ベルドラッドは苦し紛れに左腕に力を入れる。

「く!おあっ!」

押さえ付けられていた左腕を力任せに振り拘束を外すが、振った腕も掻い潜られ顎に1発、左顎の関節部に1発掌底打ちを食らう。
足が縺れ、後ろによたよたと下がったので正面から腹とみぞおちに1発ずつ打ち込むが辛うじて踏み留まる。

ドッ!ドスッ!     「うっ!ごはっ!」

(みぞおちに打ったんだ、相当息苦しいハズなのに立ってられるのは相当打たれ強いのだろう。)
 
「いやー…ここまで滅多打ちにされるのはいつ以来かな…何だ君の拳は、速いのに重い。
新人冒険者だからと舐めて掛かってこの体たらく、君の固有スキルを引き出す前にこっちが参ってしまうわ。」

「こちらとしては今ので伸びてくれると有り難かったのですがね。」

「はっはっは!伊達に闘技場に通ってないからね。打たれ強さは誰にも負けんよ。」


そんな2人の和気あいあい(?)とした光景を見ている観客はと言うと

「隊長、完全に楽しんでるな…調査の日程決まってるんだから早く終わらせて欲しいんだけどな…」

「それにしても何だあの少年は、隊長の攻撃を回避しつつダメージも与えるとか…そりゃ俺ら即制圧される訳だわ…」


片やルドルフ、ミラ、大剣持ちパーティ

「うわー昨日のあいつめっちゃ強いじゃん。やべ、俺ふざけた事言っちまったよ…」

「終わったら謝っときなよ、バル。
ルドとミラは知り合いなんだっけ?」

「俺は彼に命を救われた。」

「その上私達に<スキル>を教えてくれたわ。」

「何にしても挨拶はしとかないといけないわねぇ。」


片やジェイルパーティ

「ノア君にこの前稽古を付けて貰ったが…やっぱり速いな…」

「うー、ノア君の戦い方って見てて熱くなる物があるよ。こう、滾るっての?」

「お互いまだこれからって感じね。ノア君に至っては呼吸乱れてないし…」

「はわわ…(負けないでって言ったけど怪我しないでとも言っておけば良かった…)」

ノアの動きに改めて驚くジェイルに何故かウズウズするロゼ。
落ち着いて観戦するポーラにあわあわするクロラ。三者三様である。


「凄いですね…話には聞いてましたがこれ程とは…」

「まだまだにゃ、昨日の戦闘の時はもっと速かったのにゃ。それに、ベルドラッドの方も目付きが変わったのにゃ。」


ライルの言葉の後エメラルダがベルドラッドの方を見ると笑顔はそのままに目がギラついていた。

一拍置いた後ベルドラッドがノアに向かい駆け出す。
先程より滑らかな動きをしているので何か発動したのだろう。
ベルドラッドはノアに接近すると素早い左を繰り出す。
ノアは最小限の動きでこの攻撃を回避、ベルドラッドの太い腕がノアの目の前で空を切る。

ゴッ!     「ぐっ!?」

ノアは顔の側面に強い一撃を受け、思わずよろけるが踏み留まる。

「良い1発が入ったな!これを食らって倒れないのは流石だ!」


ノアは今の一撃に混乱する。

(おかしい…確実に避けたハズなのに少し間があってから何かを食らった。)

考える隙も与えないかの様にベルドラッドが迫る。さっきのお返しとばかりに正面から腹に正拳付きを繰り出す。
それをノアは強烈な払い手で打ち払う。

ズンッ!     「…がはっ!?」

先程同様防いだハズが、重い一撃がみぞおちに入り、呼吸困難になり掛けるが何とか息を整える。

「ぐっ…ごほっ!…っはぁ!…はぁ。」

「どうだ!この攻撃は見えないだろう?私の持つ【固有技】の1つだ。」

ベルドラッドはそう言いノアの反応を窺うとノアの口角が上がっている様に見えた。

(笑った?まさかこの状況で?まぁ恐らく虚勢だろう…)

追撃の為ノアに接近するベルドラッドだが逆にノアが急速に接近する。
虚を衝かれたベルドラッドは拳を振るうがまたもやノアはギリギリで回避する。

(ふ!これでさっきの二の舞だ…あれ?)

回避し終えたノアたが更にそこから半歩程後退した。
すると何も見えはしないが目の前で猛烈な速さで何かが通り過ぎる音と風が起こり、ノアの着ているシャツの襟に何かが掠る感覚があった。
ノアはその感覚を確かめた後明確に笑みを溢す。


ノアの表情にベルドラッドは焦りの色を隠せなかった。

(…こ、この少年はたった、たった2発食らっただけで【弐撃】の効果と間合いを把握しやがった…)


【弐撃】…【拳士】の固有技の1つ。腕部外側に不可視の腕を形成し、自分の攻撃の後時間差を付けもう1発繰り出す。威力は自身の攻撃力に依存する。


ノアはベルドラッドの技を2回食らって気が付いた事があった。

1つ目は2回とも同じ軌道上に打撃を食らった事だ。
これが別方向からであれば気付くのに時間が掛かった事だろう。

2つ目は2回ともベルドラッドから接近してきたからだ。間合いを把握している彼なら適切な位置取りをしたいハズだ。

その結果『効果範囲は狭いけど不可視の腕で殴ってんじゃね?』と言う考えに行き着く。
何故『腕』かと言われれば『武器使用不可』という言葉に食い付く者が飛び道具を使うとは思えなかったからと言う結構安直な考えだった。


ノアは再度接近を開始する。2歩出前まで来た所でベルドラッドが振り下ろしを繰り出す。
ノアは更に加速、膝下の位置まで体勢を低くし懐に潜り込む。

「くっ…」

ベルドラッドの反応から察するに内側は効果範囲外なのだろう。
一気に起き上がり勢いを乗せて顎をかち上げる。<渾身>を発動し腹、左脇腹、左脇の下、みぞおちに次々打ち込んでいく。
呼吸困難に陥り顔が徐々に赤みを増していく。

息苦しさに前屈みになるので顎に左から2発、右から1発打ち込み空いた左脇腹にめり込む程の中段蹴りを放つ。

呼吸困難に加え視界もぐらつく。今の蹴りで肝臓に痛打が入り激痛に膝を着く。

勝負を終わらせようと接近する。


ゴゴガゴガゴガガゴガッ!


ノアの体に超速の10連撃が打ち込まれる。
何発かは防ぐ事が出来たが2、3発良いのを貰ってしまった。


「はぁっ…はぁっ!少年!君は凄いな!無意識に奥の手を発動してしまっ…げほっ!
しかも初見で数発防ぐとは…だが、次で、仕留める。」

当初の目的から外れ、完全に勝敗を決しようとしているベルドラッドに歩を進める呆れ顔のノア。
彼の目の前に仁王立ちをする。

「ほら、これで良いですか?さっさと終わらせましょ。」

挑発の意味も込めて攻撃を誘う。
ベルドラッドはニヤリと笑い発動する。

(食らうが良い!)


ガシッ!ガシィッ!


「確かに発動中は何発か見えませんでしたが初動がまる分かりだったので潰させて貰いました。」

ベルドラッドの両拳を凄まじい力で押さえノアは続ける。

「これから当初の目的の<スキル>を発動しますが人に使った事無いのでどうなるのか分かりません。防御系スキル、耐性をお持ちなら総動員して下さい。」

ベルドラッドはノアの目が徐々に赤黒く染まっていくのを確認し寒気が走る。


「始めます。」
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