ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
125 / 1,124
旅立ち~オードゥス出立まで

ダンジョンに入って35時間

しおりを挟む
ダンジョンに入って35時間。

既に食事の効果も切れ、各々自力での戦闘を強いられていた。
だが数回に渡る暴走猪との戦闘により食事効果抜きでも割と戦える様になっていた。  


「…ふぅ…暴走猪2頭目討伐っと…」

「…ポーラ、止め刺してくれてありがとー…」

「え、ええ、2人共お疲れ様…ちょっと2人共大丈夫?」

「あぁ…大丈夫、少し疲れただけだ…休めば直ぐに良くなる…」

「な…なーんか体の至る所が突っ張ってきた様な…感じが…」


ジェイルは膝に手を付き、前屈みになって息を整え、ロゼは地面に座り込んで軽く腕を擦っていた。
クロラとポーラが心配そうに2人を見守っていると


「それは覚えたての【固有技】の使い過ぎによる影響ですよ。
僕の【固有スキル】程の反動は無い様ですが、普段以上の力を発揮する訳ですから影響が出て当たり前です。
僕が言うのもアレですが、今日はもう使わない方が良い。」

「…あ、あぁ、そうするよ…」

「ら、らじゃー…」


実際の所ジェイルの【剣戟深々】は<渾身>以上の力を瞬間的に10連撃分発動する様なものなので疲労の蓄積具合は計り知れない。

ロゼの【剣嵐豪禍】はジェイル同様<渾身>以上の力を発揮する上にある程度の肉質を無視する為纏まった量の魔力を消費しており、この短期間で既に2本のマナポーションを飲み干していた。


「ロゼさんは暫くはマナポーションを飲むのも控えて下さい。
街で売ってるマナポーションは品質が少し低いので魔力酔いの恐れがあります。
見てると呼吸が早くなってる様に感じます。
既に気分が悪いハズですよ?」

「あー、バレてたかー…
そうだね、確かに今大分気持ち悪いよ…」

「ちなみにですが、ここから先は激戦が予想されます。
退くか進むかの判断はジェイルに任せます。」

「「「「激戦?」」」」




ノアは皆を引き連れ、3階への坂へと向かう。
途中から足音を立てない様に言い、坂手前の木の陰から覗き込む。


「「「「な…!?」」」」

「見て分かる通り今まで安全地帯だと思っていた坂の中で猛毒大蛇が犇めいています。
僕の感知範囲内では坂の中に最低5匹います。」

「……」
「……」
「う、嘘でしょ…」
「あの狭い中に何匹いるの…」


ジェイルとロゼは絶句、ポーラとクロラは何とか言葉を紡ぎ出すもどうすれば良いか分からないと言った状況である。


「ジェイルさん、パーティのリーダーとして考えて下さい。
あなたとロゼさんは疲労が溜まっていて万全ではありませんし、クロラさんもポーラさんもあの坂の中で戦うのは厳しいでしょう。」


ノアが「ここは一旦退いて万全の態勢で」と言い掛けた所でロゼが口を挟む。


「あ、あたしなら大丈夫…
それにお目当ての猛毒大蛇の素材が欲しいし、今ノア君とパーティ組んでるから2人ならいけるよ…」

「…分かった…だが1匹倒した段階でロゼの体調を見て進退を考えるとする。それで良いかなノア君?」

「…ふーむ、分かった。
だがこれだけは言っておきます、無理はしないで欲しい。」

「…はは、りょーかい。」





坂の手前までノアが歩き、その右斜め後ろをロゼが付いてくる形で進む。
ノアがピタリと止まった数秒後、坂の中からズルリと音を立て猛毒大蛇が這い出て来た。

ジャアアアアアアアッ!

猛毒大蛇はおもむろに頭を上げ、体をしならせたかと思うと大木の様な胴体を振り、尻尾の凪払いを仕掛けてきた。


「ロゼさん、僕の真後ろに。」

「はい。」


ロゼがノアの後ろにピタリと付いた直後、ノアが阿羅亀噛を抜き凪払いを受け流す。

シュリィン!  「うわ、すごっ…」

大木の様な尻尾を完全に受け流した為、音も静かでダメージも無い。
猛毒大蛇はその後も5合程尻尾を打ち込んで来たが悉くいなす。

(そろそろ痺れを切らしてアレが来る頃か…)

7合目の凪払いの後、尻尾の加速を利用して猛毒大蛇が噛み付き攻撃を仕掛けてくる。


「ロゼさん、離れて下さい!」

「う、うん。」


ロゼが離れたのとノアが阿羅亀噛で猛毒大蛇の噛み付きを受け止めたのは同時だった。
受け止めはしたが、勢いが凄まじく、足を地面にめり込ませながら僅かに後退しつつも停止。

ノアは右の阿羅亀噛を抜き、がら空きの喉元へ刺そうとした所、再び尻尾の凪払いを離れていたロゼに向け2、3合放つ。

ギリギリで回避したロゼは何とか猛毒大蛇の背後を取る事に成功するが


「ロゼさん!そっちはダメだ!」

「え?」


直後、暗い坂の奥から尻尾の凪払いが飛び、反応が遅れたロゼの脇腹に命中、ノアの横まで吹き飛ばされる。


「がはっ…!?げ…ぇっ…!?」


尻尾の凪払いをモロに受けてしまった為、ロゼは胃の中の物全てを吐き出す。
更にこの戦いを木の陰から見守っていたジェイルが飛び出して来た。


「!?ロゼ!」
「あ!待つんだジェイル!」
「ジェイル君今行くのは…」


飛び出したジェイルには聞こえておらずロゼの元へ駆け出す。
その時ロゼに凪払いを当てたもう1匹の猛毒大蛇がロゼに向け噛み付きに掛かる。

咄嗟にジェイルは<挑発>を発動して一瞬注意がジェイルに移るが

<殺気放出>

ジェイルの<挑発を>掻き消す程の殺気を放ち、再びロゼの方に噛み付きに掛かる。

ガギィインッ!

ノアは右の阿羅亀噛を倒れるロゼを防ぐ様に地面に突き立て、必死に押し留めるが猛毒大蛇の牙が背中に突き立つ。


「うぐっ!?」

「遅くなった!ノア君、今すぐ加勢を。」


2人の元まで辿り着いたジェイルはノアに加勢の意を告げるも


「は、早くロゼさんを連れて2人の所へ…直ぐに回復魔法をお願いします。」

「分かった!連れて行ったら直ぐに戻「いや、いい!皆の元で防御態勢を取って待機しててくれ。」

「し、しかし…」

『強請るなよ、小僧。
今『俺』はお前の<挑発>で弱体化している上に<耐性スキル>を総動員してこの苦痛を耐えている。
足元も覚束無いお前と手負いを庇いながらの戦闘が出来る程余裕は無い、正直足手纏いだ。
今お前さんが出来るのはその娘を連れてここを離れ、俺の弱体化を解除する事だけだ。』


『俺』がジェイルの方を向くと目を赤黒く光らせ、猛毒大蛇の毒で顔の半分から手の指先までが毒毒しい色に染まり、顔中の穴という穴から血を噴き出したノアがそこにいた。

その姿を見たジェイルは必死にロゼを担ぎ、直ぐ近くまで来ていたクロラ、ポーラと共に木の陰まで下がる。


(『おい『俺』、流石にこのままじゃマズイだろ?変わるか?』)

(それはあくまで最終手段だ。出来る限り自力でどうにかする。)

(『分かった、お!どうやら弱体化が解除された様だ。
これで少しはマシに戦える様になるだろう。』)


ノアは現在、<激痛耐性><苦痛耐性><出血耐性><毒耐性(中)><麻痺耐性(中)><睡眠耐性(中)><幻覚耐性(中)><痛覚遮断(小)><気絶耐性><やせ我慢>を発動して猛毒大蛇の毒に耐えている。
が、完全に無効化している訳では無いのでそれなりにダメージは入っており、右手には今感覚が無い状態である。
何も処置しなければあと5分で死に至る状況であった。


(とりあえず手早く倒さなきゃならないから【一鬼呵成】を使うぞ。
まぁ回復しないとマズイってのが本音だがね。)

(『了解した。』)


ノアは弱体化が解除された事で力任せに猛毒大蛇の口をこじ開け、背中から牙を引き抜く。

直ぐ様【一鬼呵成】を発動し、剣を地面から引き抜き、飛び上がる。
直ぐにノアの体が蒼いオーラに包まれ回復効果が始まるが、解毒はされてない為傷口が塞がらず流血が止まらない。


「どちらにしろ早目にけりを付けないとマズイな…」
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...