ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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旅立ち~オードゥス出立まで

例の卵

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(『おい『俺』、"例の卵"の孵化まで後10分らしいぞ。』)

(昨日の晩から『俺』が10分刻みで読み上げてるから分かってるっての。
だからこうして人の少なそうなダンジョンに潜ってんでしょ。)


現在ノアは"例の卵"が孵化するのをなるべく見られたくない為、上層1階への坂を下っている所である。


(『どんなのが出てくるか気になるだろ?』)

(気になるけど俺以上に『俺』がソワソワしてるから逆に冷静になったんだよ。
そもそも地龍ってどんななの?)

(『大体が4足歩行でゴツい見た目の巨大な竜だな、動きは鈍いが非常に防御力が高くて厄介な相手だ。
ただ地龍の卵はこんな掌に収まる大きさじゃなくて最低人間1人分はあるから蛇、蜥蜴の類いだろうな。』)

(その割にはソワソワじゃん。)

(『あまり表に出れないからな、一種の娯楽みたいなもんだ。』)


そうこう話している内に1階に到着。
<気配感知>の反応からして周囲には誰もいないようだが、念の為ダンジョンの壁際にある大木の陰に移動する。


(『おい、後1分だぞ。』)

(分かってるっての。)


ノアは卵を足元の地面に置き、その時を待つ。
何の気なしに卵の説明文を読んでいると、ある事に気付く。


【???の卵】…【特殊清掃員のお得意様】の称号を持った者から更に異常な量の餌を与えられた事で"この者になら【王】を託せられる"と判断された時に貰える卵。
卵の中には飢餓ミミズから先祖返りした強個体が誕生を今か今かと待ちわびている。
孵化まであと19秒。


「…ねぇ、今更な事聞いて良い?」

(『…奇遇だな、丁度『俺』も気になる事が思い浮かんだんだ。』)


「『【王】って何?』」


ノアと『俺』はずっと"先祖返り"と"孵化までの残り時間"に注視していた為、今の今まで"【王】"の部分を完全に見逃していた。

ビキッ!パキパキッ!バリン!

「あ!孵化した!」

卵が割れる音と共に、中から光沢のある漆黒の鱗を全身に纏った蛇(?)が顔を出す。

キュルルルルル!

「うわー綺麗な鱗。見た目は蛇だねこりゃ。」

(『何だ、蛇か…ん?いや、待て。
そいつ、眼と口が何かおかしいな。』)


その蛇(?)の顔を見ると眼は無く、顔の作りも通常の蛇と違い、花の蕾の様な形をしていた。
太さは手首程で、全長は肩から指先程の長さしかない。

ノアがまじまじと観察していると、卵から出て来た蛇(?)がノアの方をじっと見詰める。
すると色々な情報がノアの頭に流れ込んで来た。



スキル<契約>を獲得。

特殊契約の手順を踏んで『グリード』と主従契約を結びました。

【特殊清掃員のお得意様】が【国落としの主人】に変化しました。

尚、【特殊清掃員のお得意様】を持たない者からは【????の主人】と表示されます。

『グリード』の初期ステータスは契約者のステータスを適用します。

【国落としの主人】が【国滅ぼしの主】に変化しました。

尚、【特殊清掃員のお得意様】を持たない者からは【????の主】と表示されます。

『グリード』の初期ステータスが確定しました。
ステータスに見合った体格に変化します。



情報が流入が止まると蛇(?)の体が徐々に大きく、太くなっていき、背中には棘の様な背鰭が生える。

最終的に全長はノアの身長を僅かに上回り、太さは太腿程にまでなった。

鳴き声もキュルル!からグルル!に変わり、迫力が増した。


「『グリード』って名前が流れ込んで来たけど、君の名前かい?」


話せはしないだろうが一応聞いてみる。
すると蛇(?)の前に説明文が表示される。



『飢餓ミミズ』…見た目はかなり違うけど飢餓ミミズです。


【以下の説明文は【国滅ぼしの主】の称号をお持ちの方にのみ表示されます。】


【餓龍王グリード】(幼体)…飢餓ミミズの祖先にして、絶対に誕生させてはならない禁忌龍3種の内の1体。別名国滅ぼし。
存在する全ての物を食い尽くし、己の糧とする為成体になったら討伐は不可能と言われる存在。
幼体から成体への移行は年数では無く、食べた量に比例。


見た目の割に非常に温厚で、契約者に対して従順です。
足場が地面、岩の場合呼び出し可能。
空中、水中は呼び出し不可。
成長するにつれ、長大になります。
呼び出し場所に不都合がある場合、契約者の魔力を消費して魔方陣からの出現も可。

ちなみに食べようと思えば際限無く食べられますが、飲まず食わずでも2ヶ月は大丈夫です。



「……。」
(『……。』)


絶句するノアと『俺』。
『グリード』はノアからの指示を待つかの様にじっとノアの前に立っていた。


「黙ってても仕方無い、か…
僕はノア、君の主人…って事になるかな、これからよろしく。」


無言でコクンと頷く『グリード』。

するとノアの目が赤黒く染まり、『俺』が表に出てくる。


『よ!俺はノアの中にいる者だ。これからよろしくな!』


急に気配が変わり、一瞬身構えた『グリード』だが直ぐにコクンと頷く。

一応挨拶を済ませたノアはアイテムボックスを開き、動物や毒大蛇の皮や内臓、木っ端微塵に砕けた鬼苦万蜂の死骸、料理作製で出た野菜屑、等々を取り出し、地面に置く。


「君が何食べれるか分からないから色々用意してたんだ。
食べれそうなら食べてくれ。
こっちの虫の死骸と蛇の内臓は毒があるから注意して欲しい。」

無言でコクンと頷いた『グリード』は頭を地面に近付ける。

(そういえばこれ口どうなってるんだろう?)

そう思っていると蕾の様な顔がパカッと開き、奥から更に2つ目の口が姿を表す。
口の内側に金属の様な光沢を帯びた歯が無数に並び、噛み付くと同時に削り取る様だ。


「うわ…凄ぇ…」

(『久し振りにゾッとしたぜ…』)


『グリード』は、毒云々関係無しに片っ端から食い始め、ほぼ全て丸呑みで食事を終える。

するとノアの頭の中に情報が流れ込んできた。


『グリード』がスキル<毒耐性><受け流し>を獲得しました。


「え!?嘘でしょ?今ので覚えたの?」


ノアの質問に『グリード』はコクンと頷く。
素材を食ってスキルを獲得した事に再びノアと『俺』は絶句した。




「さて…ずっと引き連れる訳にも行かないから一旦潜ってて貰って良いかな?」

コクンと頷く『グリード』は直ぐ様頭を地面に突っ込んで潜っていった。


「"足場が地面、岩の場合呼び出し可能。"って書いてたけど…」


ノアは周囲を確認すると少し離れた位置にウルフがいるのを確認。
ノアはそのウルフを指差し


「『グリード』あのウルフの真下から食らい付いて食べちゃって良いよ。」

ドガァッ!ギャウンッ!?バキボキベキゴクン!


ノアが指示を出した直後、ウルフの腹の直下から『グリード』が飛び出し、力任せにへし折って一気に丸呑みした。

あっという間の出来事にウルフは何も出来ずに食い殺され、『グリード』の腹に収まった。
指示を出した張本人のノアも、あまりの出来事に口を開けたまま固まっていた。

その後、色々試した結果「頭だけ食え」と言えば地面から頭だけ食らい付いて倒したり、「前脚を狙え」と言えば的確にその箇所だけ食らい付いて行動不能にする事が出来た。


「『グリード』…君、喋れはしないけどとても知能高いよね?」


『グリード』はコクコクと頷く。


「取り敢えず色々と確認出来たから今日はここまでにしよう。」


『グリード』はコクンと頷き、地面に潜っていった。

ノアは街へ向け歩きだす。


「…とんでもないのが仲間になったね…」

(『…そうだな…』)「」
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