ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

追跡開始10分

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追跡開始10分、対象が乗る馬車1台だけが、小道に入っていった。


「この小道は今日僕が野盗を捕まえた場所ですね。」

「野盗がいないんじゃ怪しまれるんじゃないか?」

「多分1組だけなら大丈夫だと思いますよ?」


そのノアの言葉通り馬車に乗った商人はその道を通る際、首を傾げつつもすんなりと通って行った。

その後暫く進んだ先で別の野盗が馬車を引き留め、2人の野盗が、籠に入った剣や弓、斧といった武器を商人に渡す。
対して商人は野盗にパン等の食糧が詰まった麻袋を野盗に渡している。


「朧さんが野盗と出会したのはここですか?」

「いや、ここから先に更に行った三叉路だ。」


2人は商人と野盗がいる所から樹上に身を潜め、やり取りを覗き見ていた。


「では、そこまで追跡を続けましょう。」

「うむ。」


武器と食糧の受け渡しが終わった商人は、更に道を進む。
三叉路に差し掛かった所で林の奥から大柄な男がぬぅっと姿を表す。


「アイツだ、アイツと出会した。」


朧がポツリと呟いた所で<聞き耳>に会話が聞こえてきた。

<ここに【魔法使い】が来なかったか?>

<魔法使い?真っ白な嬢ちゃんなら来たぜ?>

<ああ、多分そいつだ。両親から貰った杖なんだと、"似た物があればそれなりの値で買う"ってさ、本当に自分の物だと知らずに…くくくっ。>

<俺も野盗やって長いが、アンタもなかなか悪だねぇ。>

<何言ってる、そのお陰でお前達が食えて行けてるじゃないか。>

<そりゃそうだ。>


「かーっ…悪どいねぇ…」


このノアの発言に朧が「何か聞こえるのか?」と聞いてきたので「聞かない方が良い」と答える事にした。

その後商人が馬車に乗り込む所を見た朧が「街で気になってた奴だ」と確認が取れた。
商人は再び道なりに馬車を走らせ、姿が見えなくなった所で


「さて、捕らえに行きますか。」

「ノア君、ここは私にやらせて貰おう。」


ノアから了承を得ないまま樹上から飛び降り、大柄な野盗の背後に音も無く降り立つ。

シュドッ!     ドサッ!

野盗の首筋に手刀を繰り出す朧。


「ふん、所詮は野盗、他愛無い。こんな奴に今まで煮え湯を飲まされていたとはな。
さて、さっさとこいつを連れ『ズドッ!』「うごあっ!?」


朧が油断した時だった、昏倒したハズの野盗が突如起き上がり、朧の右脇腹に拳が深々と突き刺さる。

朧はまともに食らい、地面を数回跳ね、そのまま俯せに倒れる。


「奇襲は上手く行ったが所詮は女、俺を気絶させるには力が足りなかったな、他愛無い。
おやぁ【忍】とは珍しい、お前みたいに気の強い女が好みな奴もいるんだ。
今からさっきの商人を呼び戻して人買いを「はい、そこまでだ。」


男が反応するよりも早く腕を首に絡め、瞬時に落とす。
野盗の男が崩れ落ちるとそこにはノアが立っていた。


「大丈夫ですか?朧さん。」

「…すまない、出しゃばって捕まえに行ったらこの様だ…」

「まぁこの際無事なら良かったです。
が、次から気を付けて下さいね。」

「面目無い。」


その後脇腹に痛みが走り、地面からなかなか起き上がれない朧を気遣ってノアが抱き上げ様とする。

しかしその時朧は思い出す。
装束の下に剣を2本、クナイ10本、手裏剣10枚、その他煙幕や忍道具一式を隠し持っている為、体重含めた総重量が80キロを越えている事を。


「ま、待って待って…私、今大分重いから抱き上げちゃやぁ…」

ヒョイ!「え?」

「装束の下に色々隠し持ってるんですよね、さっき走ってきた時に音が聞こえたので分かりました。
それにしたって朧さん華奢なんですからもう少しちゃんと食べた方が良いですよ?」


男性に抱き抱えられた事が無かった為顔を真っ赤にする朧。


「う、うるさい、余計なお世話…ぐぁっ!?」

「先程打たれた所が痛むんですね?ちょっとお待ちを…」


ノアはアイテムボックスから回復玉を取り出し、口に含む様に言われ、素直に口に入れた。


「くっ…この歳(19)になってまで幼子の様な扱いを受ける事になろうとは…」

「はいはい、身から出た錆と言う事で我慢してください。」

「ぐぬぬ…」

「それにしても朧さん、焦ると口調が素に戻るんですね?さっきの焦った時の声可愛かったですよ。」

「ぬぁあああっ!忘れろぉ忘れてくれぇ!」

「……。」

「おい!何とか言え!」


朧さんを抱き抱えつつ大柄な野盗を引き摺って人の居ない林の奥へ進んで行くノアだった。






ペチペチ、ペチペチペチ「おーい、起きれますかー?」


ノアは先程落とした野盗を木に吊り、顔を叩いて目を覚まさせる。


「ん…お…お前さんか?さっき俺を落としたのは…?」

「ええ、そうです。」


野盗は周囲をぐるりと見回す。


「通りから大分離れてんな…何だ?尋問かい?」

「話が早くて助かります。先程の商人の事を色々聞きたくてですね…」

「尋問しても無駄だぜ、俺は元々【拳士】だったんだ、<苦痛耐性><激痛耐性>耐性系は一通り持ってんだ、生半可な攻撃じ『ドバァンッ!』ぅごはぁっ…!?」

「おー、言った通り耐性系のレベルはかなり高い様ですね。
強目に打ったのに内臓を少し傷めた程度とは…」

「おま…ちょっと待で…何だその威力は…お前の拳…ハンマーで出来てんのか…?」

「いえいえ、普通の拳ですし【拳士】でもありません。
どうです?少しは喋って貰えませんか?」

「ふ…ふぅ…この程度じゃあ喋れないな…言っておくが喋るつもりは無『チュドッ!』ぅ!?ごぁああっ!?」

「お、おいノア君、もう止めてやれ…死んでしまうぞ!」

「そうだ!…死んだら情報は聞き出せないぞ?
まぁ、話すつもりも無いがな…それにお前さんもその歳で人殺しはやりたくないだろう?」




野盗の一言に体がピクリと反応する。
確かにノアは人殺しはやった事無いしするつもりも無い。
野盗はそれを見越している為、余裕の表情を見せている。
『このガキは俺を殺さない』と。

(へへ、拳の威力は異常だが、このまま誘導して何とか解放まで持っていけりゃあ…ん?アイツ何する気だ?)


ノアは切り株に座り込んだ朧の所まで行くと「これから見る事は他言無用でお願いしますね」と伝えた。

(まさかアイツ…殺しをやるのか?いや、それは無いハズだ、アイツの目に人殺しをやるだけの覚悟が見えない。
では何だ?あの忍が?まさかな。)

ノアは再び野盗の前まで戻ると、申し訳なさそうな顔をして告げる。


「あなたは恐らく、本当に死んでも口を割らないでしょう。
ですが姿を見られたからには貴方を処分しなければなりません。」

「へっ!何だ?モンスターの餌にでもするってぇのか?」

「お、よく分かりましたね。」

「へ?」

「じゃあグリード、後よろしく。」


ノアが名前を呼んだ瞬間、地面から長大な何かが飛び出してきた。
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