ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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アルバラスト編

長大な蛇

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地面から飛び出した、長大な蛇に野盗と朧は固まっていた。

蛇と言ったが、直ぐに2人はこれが蛇では無い別の何かだと気付く。
頭の形状が明らかにおかしい。
頭は蕾の様に閉じていて所々の隙間から歯の様な物が見える。


「この子の名はグリード、見た目は蛇だけど蛇じゃない。
詳しい事は言えませんが、この子は食欲が凄まじくてね、この間ゴブリンを200匹程食べたお陰か今はこれだけ大きくなりました。」


ノアの体に纏わり付く様にしているグリード。
生まれてからまだ1週間も経っていないのに既に全長は3階建ての建物に匹敵し、胴の幅は木の幹と何ら変わりない。

野盗と朧は、ノアが何を言いたいのか分からないと言った顔をする。


「流石にこれだけ大きくなると餌代が大変なのでどうしたものかと思ってたんですが、お陰で解決しました。」

「お、おい坊主お前、何を言って…」

「確かに僕は人を殺す覚悟は無いし、貴方を殺すつもりも無い、いや、無かった。
先程も言いましたが、貴方は絶対に口を割らないでしょう。例え本当に死んでもね。
でも僕達の姿は見られた、これは由々しき事態だ。
見られた事実を隠さなければならない。
でも僕は人を殺せない。
どうする?
どうする?
そうだ…この子の腹の中に隠しちゃえば良いじゃないか、ってね。」


ニッコリと嗤うノア。
野盗を見る目が漆黒に変わる。

野盗は一気に血の気が引く。


「お、おい待て…」

「グリード、お口あーんして。」

「おい待てって言『グルォアアアアアッ!』


グリードの蕾の様な顔が開くと、中からおぞましく、凶悪な形状の第2の口が姿を表す。
4本の鋭い牙と口内にびっしりと金属の様な歯が無数に生えている。


「ひぃっ…」


このおぞましい光景に朧が声を上げる。
野盗に至っては堪ったものではない。


「待て!待ってくれ!俺をそいつに食わすってのか!?」

「まぁそうなりますね、何も話さないなら用は無いです。
別の野盗に聞きますから。
朧さん、次の現場に行きましょうか。」

「え?あ、ああ…」

「こ、の…ふざけんなぁ!ファイアボール!」


凶悪な口を開けたグリードの口内に向け、野盗が火魔法を放つ。
モロに直撃した事に流石のノアも焦るも


『グリード』がスキル<火耐性><魔力吸収><高速再生>、火魔法を覚えました。


グリードの顔辺りの煙が晴れると多少体表面が焦げたグリードが佇んでいた。


「ありがとうございます。
今の貴方の攻撃でこの子がスキルを色々と発現しました。
もし良ければ気の済むまで色々と魔法撃って頂いても良いですよ?
この子の糧になりますから。」


これを言われた野盗は遂に観念した。
「何でも話すから殺さないでくれ」と言われたノアはパァっと顔を明るくする。

だが朧に聞こえない様に耳元で呟く。


「少しでもおかしな動きをしたり証言を違えたりしてみろ、貴方が地面の上にいる限り、この子は何時でも貴方を腹の中に入れる事が出来るのをお忘れ無く。」


この言葉に野盗は無言でコクコクと頷く。


「さ、皆さん、街へ戻りましょう。」





「と言う訳で内通者と親しいと思われる野盗を連れて来ました。」

「何か色々引っ掛かる事あるけど、取り敢えずお疲れ様。
調書を取りたいからこちらでその野盗を引き取るよ。」

「あ、その調書取る時僕も同席しても良いですか?」

「ああ、当事者だから良いよ。」


街に戻ってきたノアは、早速兵士に野盗を引き渡す。
念には念を入れて何かしら理由を付けて同席する事にした結果、情報を引き出す事が出来た。


野盗は基本的に3人1組で行動し朝・晩で交代、交代した野盗らは近くの緊急避難先の穴の中で仮眠しているとの事。

『アルバラスト』の東西南北にある門の外には各6組ずつ野盗が配置されている。
他の所から流れて来た野盗もいる為、最低でも144人の野盗がこの周辺にいると言う。

ちなみに内通者の商人アリには3人の手下がおり、他の門の外にいる野盗に飯を配ったり武器を回収しているらしい。


「俺が話せるのはこんな所だ。」

「他に情報は無いか?」

「ああ、どのみち俺はあの三叉路にしかいなかったからな。」

「そうか、分かった。君は何か聞きたい事は無いかな?」


取調室の隅で今までの話を聞いていたノアに兵士が質問を促す。


「1つ聞きたいのですが、貴方本当に野盗ですか?」


周りにいた兵士、朧がノアの質問にざわつく。


「…どうしてそう思う?」

「最初に捕らえた野盗3人と比べて動きが違いましたからね。
野盗に堕ちると露骨に動きが落ちますしね。」

「ほう?野盗と今まで戦ってきたって口振りじゃねぇか。」

「両親と訓練の一貫で250人程と戦った経験則ですがね。」

「250…そりゃ何とも…
確かに俺は野盗じゃねぇ、雇われの傭兵だ。」


この発言に兵士が怒る。


「お前、さっきはそんな事一言も…」

「聞かれなかったから答えなかった、それだけだ。」


飄々と話す野盗にノアと『俺』が業を煮やす。


(おぅ『俺』、ちょっと変わるぞ?)

(ああ、頼むよ。)


「失礼、ちょっとそいつと話したいから変わって貰えるか?』

「え?ああ良い…うおっ!?」


兵士に了解を得て野盗の対面に立つ。


「何だ?脅すのか?流石に人目があるからさっきの奴は呼べねぇだ…ろ…何だ、その目は…」

『もう喋らなくて良い、埒が明かないから勝手に覗かして貰うぞ?』


赤黒い眼をしたノアが野盗の首根っこを掴んで持ち上げる。
対して野盗はノアから目を離せない。
赤黒い眼が更に紅く光り野盗は身動き1つ出来なくなる。


<強制閲覧>発動。


「ぐぁあああああああっ!?止めろぉおっ!頭、頭が割れるぅっ!」

「お、おい、少年止めろ!様子がおかしい。」

「ノア君、止め、止めてやれ!」


兵士と朧が総出でノアを止めようとするが、ノアはピクリとも動かない。


『安心しろ、強制的に頭の中掻き回して記憶を覗いてるだけだ、直ぐ終わる。』


そう言うとノアはゴミを捨てる様に野盗を床に放り投げ、兵士や朧の方に体を向ける。


『こいつは【拳士】のガーナード、王都のギルドで"アルバラスト南門周辺の野盗を纏める頭"として商人のアリから雇われた様だ。
他の門には【万能】持ちが頭としているらしい。
ただ最近アルバラストからの対抗措置が厳しくなってきたから一点集中で街を突破して街を襲う計画を商人には内緒で立てているんだと。』

「「「ま、街を襲う!?」」」

『商人の計画は穴が多く、今のままでは商人は遅かれ早かれ捕まるだろうから、"商人からの物資支給が止まったら"計画実行の合図らしい。』

「ぐ、具体的な日時や場所は分かるか?」

『物資満載の馬車が一番多く出ていく北門、王都方面だ。
時間は夕方、馬車が街から出て行く時間帯だとさ。』

「お、おい!今すぐこの情報を上へ通せ!
火急の知らせだとな!」

「はい!」


部屋には野盗のガーナード、ノア、朧、兵士が1人となった。


「はぁ…ぐぅ…っ…」

『最初っから全部話してりゃ苦しまずに済んだものを…
どうする兵士さんよ、こいつの記憶は俺の頭ん中に入ってるが。
用済みならウチの子の餌にしちまうが。』

「待て待て!重要参考人である事に変わりはない、この件が片付くまで牢に入れるから殺さないでくれ!」

『了解した、用済みになったら言ってくれよ?
ウチの子が口を開けて待ってるからな。』


その一言を言った後、ノアの目は通常の色に戻った。


「じゃあ後の事はお願いします。朧さん、行きましょうか。」

「あ、お、おう…」


部屋から2人が出た後、残された野盗の肩に兵士が手を置く。


「お前さん、とんでも無い奴に目付けられたな…」
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