ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

前日の王都、午後1時

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前日の王都、午後1時。

王都某所の特設会場にて宴が開始されて1時間程経った頃、『新鋭の翼』リーダーのデミ・スロアは酒が入ったグラスを片手に不満そうな顔をしていた。


「ちょっと、デミ。
何不満そうな顔してるのよ、折角の宴なんだから楽しんだら良いじゃない。」

「うるさいぞ、リナ、俺は腹を立てているだけだ。」

「どうしたの?料理やお酒美味しいし、有名所の貴族や商人とも仲良く出来たし。
良い事尽くめじゃない。」

「その貴族や商人の7割位は"【鬼神】"目当てだったんだぞ?」

「仕方無いでしょ?あれだけの戦果上げたんだもの、誰だって会いたくもなるわよ。」

「アホかお前。
あの話本当に信じてるのか?あんな物創作に決まってんだろ。」

「いやいや、流石に王都の諜報部が虚偽の報告する訳無いでしょ?
諜報部の目聡さはデミの所が一番良く分かってるでしょう?」

「ぐ…む…。」


実はこのデミ・『スロア』。
とある地方の貴族の出であるのだが、1度実家が事業関係で不正を行った事があり、不正内容を知っているのはごく一部、限られた人物のみだったが王都の諜報部はいとも簡単に不正の事実を暴き、莫大な罰金と貴族の位を2つも下げる程の重い罰が下った。


「それに、創作なんかして王都に何の得があるのよ。」

「それはな…」


と、そこまで話した所で2人の元に王が歩み寄って来た。
周囲にいた参加者らは王に向け礼をする中、デミはと言うと


「エルニストラ王よ、私は御前試合を所望したい。」


と突然言い放った。

当然全く予想していなかった反応に、デミ以外の『新鋭の翼』メンバーは人前だと言うのに吹き出した。


「「「「「ぶっ!?」」」」」

「ちょっ!あなた急に何言ってんのよ!」
「やめろ!絶対面倒事になりそうだ!取り消せ!」
「すいません王様、デミは酒癖悪いもので…」
「外に出て頭冷そう、な?」
「ああ、デミ、あなた今良く無い事考えてますね…」


周りの貴族や商人もデミの発言に興味を持ったのか、集まってきた。


「…御前試合とな?」

「ええ、是非とも王都に呼ばれた我等が技を競い王や参加者の方々に我等の力を御覧頂きたいのです。」

「だがな、ここにいる者達は兎も角、【鬼神】殿は護衛依頼中で今ここには居らんのだ。
それに彼は戦いを拒み、今回それを条件に王都に来て貰ったのだ、私の一存では決められん。」

「何故です?王命だと一言言えば済む話では?」

「何故君は彼に拘るのかな?」


ここだけの話を聞いただけでもデミがどうにかノアを戦いの場に引き摺り出したい様に思っていた。


「私は彼が『作られた英雄』だと思っております。」


この発言に周囲の者達はざわつく。
デミはそれを気にする事無く話を続ける。


「だってそうでしょう、彼は冒険者になってまだ1ヶ月、なのに何ですかあの戦果は。
創作話でももう少し抑えて話作りますよ?」


周囲の者達も改めてその夥しい数を思い返してデミの話に納得の意を示す者も現れ始めた。

その反応にデミがニヤリと口角を上げる。

が、ここで1人の男性が手を上げる。


「その話少し良いかな?」

「ジョー殿、何か言いたい事が?」


手を上げたのは大商人のジョーだった。
その隣にはアルバラストの領主アルバも同席していた。


「僕はたまたまオードゥスの街とアルバラストにいたんだけど、その戦果の真偽について保証するよ。
どちらの現場にも居ましたからね、僕。」


すると、ジョーに続けとばかりに当時アルバラストの街中で待機していたと思われる商人達が手を上げる。


「私も見たぞ。」
「私もだ。」
「私も。」

「だが野盗200人を単騎で、しかも不殺でなんて不可能だ!」


この発言に「確かに」とか「不可能だ」等の声が上がるが


「「それは私達が説明致しましょう。」」


声を発したのはジョーの護衛兼従業員のルーシー姉妹であった。
忘れがちではあるが、王都では『黒髪戦鬼』『鬼神姉妹』等と呼ばれ、冒険者や2人のファンクラブ『黒髪鬼っ娘は良いですなぁ』から絶大な支持を受けている。


「「ノア…さんはあの年齢では考えられない程の力を持っています。
力の使い方を誤れば野盗200人を殺すのも容易いでしょう。
ですので私達2人で野盗に支援魔法を放ち、わざと強化させた上でノア君は斬り込んで行きました。」」


この話を聞いた全員が「何じゃそりゃ」と言う顔をするが、ルーシー姉妹は真顔で言っていたので嘘では無いのだろう。


「そうそう。
当時もその場にいる全員がこんな顔してたんだよな、勿論私も含めね。」


アルバが当時の事を思い出し、苦笑いをする。

この数々の目撃例、証言を聞き真偽を疑う者は殆ど居なくなった。

が。


「であれば尚の事戦っている所を見てみたい物ですな、本当にその少年が存在するのであれば、ですがね。」


わざとらしく声を上げたのはデミ・スロアの父親のコモン・スロアであった。


「コモン・スロア殿、王が嘘を言ってると?」

「そうは言ってません。
が、最近王都の次代の戦力として候補に上がっていた王都国立大学院生のエルベストが不祥事を起こしたり、王の息子であるエルグランド殿は旧フリアダビアにて指揮官の真っ最中。
上級冒険者もそちらに流れているので、今王都に戦力と呼べる存在が居ない状態ですよね?
最近ではヒュマノでは【勇者】が召喚され【魔王】も出現したとか。
しかもどうやらフリアダビアで猛威を振るっていたのは【魔王】の造魔だったそうじゃないですか。
この緊張状態で戦力が居ないのは如何ともしがたい。
虚勢でも良いから手元に戦力がいるのを誇示したいと思うのは、仕方の無い事では?」

(嘘って言ってるのと変わらねぇじゃねぇか!)

皆そう思ってはいるが口に出すのは止めにした。どうせまた何かしらで反論して来るのは目に見えたからだ。


「それに、それだけの力を持っていながら、謁見だけ終えて その後の宴を蹴ってまで護衛依頼?
ボロを出さない様に街から遠ざかったと言う風に捉えられますがね。」


この意見にはジョーが反論。


「彼とは冒険者として村を旅立った直後からの付き合いだが、元々欲が強くない子でしたよ?
当初私はしがない商人の端くれだ、という事で接していましたが、大商人と分かってからも付き合い方はまるで変わらなかったですからね。」


ジョーを忌々しそうに睨むコモン・スロア。
だが話手はデミ・スロアに移る。


「今父が仰った様に、我々は持っている力を王に見せ、王のお役に立ちたいと思っているのですよ。」

「ほぅ、良い心掛けではないですか。」
「そう言う意図であれば我々も見てみたいものですな。」
「【鬼神】の戦いが見れるの?なら賛成だわ!」


スロア一族の思惑や言葉の裏等をよく考えもせず、興味本位で食い付いてきた周囲の貴族が加勢してくる。

デミ・スロアの思惑通り事が進み掛けた時に横槍が入ってきた。


「ねぇ、ちょっとい~い?」


声を上げた方を見ると、青みがかった全身鎧を身に纏った【槍】の3人組パーティ『槍サーの姫君』のリーダーが面倒臭そうに手を上げていた。
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