ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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王都編

お呼びしました

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「ノア様、アグナス家の職人をお呼びしました。」

「早過ぎない!?」


朝方、キエフからの追っ手が退いたお陰で伸び伸びと屋台でケバブを貪っていたノアの元に、ジョーの護衛のラーベがやって来た。

【防具】ギルドでの要請の話から6時間も経っていないにも関わらず、もう来たというのだ。


「『今は丁度閑散期で暇してた所だぜ、へへへ。』だそうです。」

「貴族の割りに結構軽いですね…」

「ノア様も御存知の方々ですよ?
もう既に【防具】ギルドの方へ向かっておられますが、どうしましょう?」

「何ですって!?急がなきゃ!
という訳ではい、ラーベさんこれ食べて下さい。」

「え?」


ノアからケバブの包みを渡されたラーベは困惑している。


「ずっと働きっ放しだったのでしょ?
少しお腹鳴ってましたよ。」

「んな!?」


顔を赤らめたラーベがノアを追い掛けるが、ギリギリ追い付かない速度で走るノアの後を着いていく事しか出来なかった。





ズザザァッ!「すいません、お待たせしました!」

ノアが【防具】ギルド前に滑り込むと、既に建物の前にジョーが立っていた。


「おや、大分早かったね。
それにしてもラーベは大丈夫かな?」

「も、問題ありません…」


ノアの後ろには膝に手を付け、肩で息をしたラーベが立っていた。
とても大丈夫そうには見えないが、それならばとジョーは話を続ける。


「アグナス家の者達は既に中に居るから挨拶してくると良いよ。」

「あ、ありがとうございます。」


ノアは、扉を開け、建物の中に居るというアグナス家の者達の所へと向かった。







「ほぅ、流石王都だ。
中々良い道具揃ってんじゃねぇか!」

「俺らの居るオードゥス何かボロっちぃ道具しかねぇもんなぁ?」

「ボロいんじゃねぇよ、年季が入ってるって言えや!
それを言うならお前ぇの愛用のハンマーもボロボロで、また一歩オークに近付いたんじゃてぇかぁ?」

「んだと、コラ!」


工房の奥から口喧嘩が聞こえてくる。
でも何故だろう、この口喧嘩の言い合いに何処と無く心当たりがあるのは。

とにもかくにもノアは意を決して工房の奥へと向かい、即座に頭を下げる。


「ほ、本日は僕の防具作成の為にご足労頂きありがとうございます。」


と頭を下げたノアに


「あれ?ノアじゃねぇか!」

「お?お前さん王都に来てたのか!」


と声が掛かったので頭を上げると、オードゥスの街で武器、防具の店で職員として働いていたデオとガーラが立っていた。


「あれ?デオさんに、ガーラさん。何で2人がここに?」

「何でって、オードゥスに居たら、王都から防具製作依頼の要請が入ったから来ただけだ。」

「え?と言う事はアグナス家の貴族の者って2人の事だったんですか?」

「貴族の出ではあるが、そう言った振る舞いが苦手で出家したんだがな…
ってかお前さんボロボロじゃねぇか…」

「ええ、昨日色々ありまして…
それで、防具の新調をお願いしようとした訳なのですが…」


と、そこまでノアが言った所でジョーが話に入って来た。


「ノア君が素材を持ち込んだのですけど、【防具】ギルドの方々では何の素材か分からず、かといって替えの素材がある訳でも無いのでお二人を頼った、と言う訳ですよ。」


ジョーを先頭に商会の従業員兼護衛のルーシー姉妹、ドゥ、【防具】ギルドの面々が工房の中に入ってくる。
尚、カサグリアは王命の為不在。


「なる程な、それで防具製作に特化した俺達に依頼した訳か。
…にしても何の素材を持ち込んだんだ?お前さんは…」


そう、
話の肝はそこなのだが、ここでノアは周囲の者に頭を下げる。


「申し訳ありませんが、素材の名前や出所は今回伏せさせて下さい。
元々【防具】ギルドで製作可能だった場合も他言無用でお願いするつもりでしたので、ご容赦下さい。」


このノアの発言に【防具】ギルドの面々は「え?何で」と言う顔をする。
それを代弁するかの様にジョーが問い質す。


「理由を聞いても良いかな?」

「えーっとですね…この素材の出所、入手方法、経緯含めて全てが『ややこしい』んです。」

「どう言う事?」

「素材の出所と入手方法に関して言えば、現段階では外交問題(?)に発展するかも知れないですし、素材を入手するのであればフリアダビア以上の戦力を整えて行かなければ絶対勝てないでしょう。
経緯に至っては突拍子も無い事の連続過ぎて理解されないと思います。
と言うか、今の感じで察して頂けると助かるのですが…」

「なる程ね、『現段階では』か…
分かった、そこまで言うなら私からはこれ以上言う事は無い。」


ジョーは色々と察してくれた様で、直ぐに身を引く。
それによって【防具】ギルドの面々は、思う所はあるだろうが、声が上がる事は無くなった。


「はい!という訳で本題に移らせて貰います。
デオさん、ガーラさん、素材をお渡ししますので、くれぐれも声を荒げる事の無い様お願いします。」

「分かってるっての。」

「安心しな、こう見えて場数は踏んでるから滅多な事じゃ驚かんよ。」


2人から何やらフラグが立った感じがしたが、一先ずアイテムボックスから『大海獣の柔肌』を1枚取り出して作業台に広げる。


「何だ?このでかくてブヨブヨな皮…は…」


『大海獣の柔肌』…海洋系最強種の一角、クラーケン(成体)の体表皮。
通常状態ではごく一般的な動物の皮と大差無いが、特殊な組織構造により、瞬間的な衝撃に対して圧倒的な防御力を誇る。
これを防具として用いれば、例え羊皮紙程の厚さでもバリスタの様な致命の一撃すらも防ぎきるだろう。


「「んなっ!?何じゃこりゃあっ!?」」


素材の説明文を読んだデオとガーラは目を見開き驚きの表情でノアを見る。


「おい!ノア!こりゃどう言う事だ!?何だクラ「シーッ!シーッ!」

「おいおい!何だってこんな伝せ「ガーラさん
!荒げてる!荒げてますって!」


その後もどうにか声を荒げる2人が発する単語に食い気味で言葉を被せ、周りに気取らせない様にしつつ、2人が落ち着くまでこの流れは続いた。






「見事なまでのフラグ回収でしたが落ち着きましたかお二方。」

「あ、ああ、すまない…」

「面目無い…
こりゃ確かに『ややこしい』素材だ。
こんな物おいそれと口に出したら色んな連中が根掘り葉掘り聞いてくるだろうな。」

「その分性能も凄まじいがな。
おぅノア、ちょっとこのナイフでこの皮ぶっ刺してみ?」


デオがノアに自身のナイフを手渡し、作業台に広げた『大海獣の柔肌』に刺す様に伝える。


「どうやら瞬間的な衝撃に対して圧倒的な防御力があるらしいからな、どのみちお前さんの防具にするんだから性能を確かめとくに越した事は無いだろう?」

「それはそうですが…」

「良いか?作業台を壊すつもりでやれ?
壊しても心配するな、弁償してやっから、ガーラが。」

「おい、待てデオ。」

「よーし…」

「少しは躊躇ってくれ少年よ…」


ナイフを握り込んだノアは、徐に振り上げ<渾身>を発動して勢いよく振り下ろした。
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