ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
316 / 1,124
王都編

閑話 ヤバイ奴らによる【魔王】殲滅戦(上)

しおりを挟む
時は遡り、ノアが王都で御前試合を行っていたまさにその日、大陸の南方にある『滅びの森』では轟音や悲鳴があちこちから聞こえていた。

『滅びの森』とは、この森の近くに、昔一夜で滅んだと言われている超大国の廃墟(通称『廃都』)がある為こんな薄気味悪い名前が付いている。

その森の中を息を切らしながらただひたすらに駆ける集団がいた。


「ガ、ガルディアッ!残存兵力はぁっ!?」

「我々を含め!残り300程かとっ!
今はトラディグマが殿となって『奴ら』を押さえ込んで


ポゥッ


どがぁああああああああああああああああああっ!!!!

「ぐぉああっ!?」
「キャァアアアアアアッ!?」


戦況を話していた2人と300に及ぶ集団の遥か後方で淡く光が灯った矢先、直径500メルに及ぶ大爆発が発生。

衝撃波だけで周囲の木々が根刮ぎ倒れ、集団は吹き飛ばされる。

残存兵力の大半が手足を骨折し、戦闘不能状態に陥った。


「今のはトラディグマの隊がいる辺り…まさか…」

「考えている暇は無い!急ぎ無事な兵と共に『廃都』へ向かうぞ!」

「は、はい【魔王】様!」


そう、今現在『奴ら』から逃げ続けているこの集団こそが【魔王】軍である。

僅か1週間程の間に四天王を2人も失い、そしてつい先程3人目の四天王が"蒸発"した。

最後に残ったのは、四天王の中でも"最弱"と言われている女性魔人のガルディアである。

最弱と言っても強さで言えば、フリアダビアで猛威を振るったシエストラバードに匹敵する強さを誇っている。

何故恐怖をもたらす象徴的存在である【魔王】が逃げているのかと言うと、『奴ら』が強襲を仕掛けて来たのだ。






この日の朝方、6000にも及ぶ兵を動員して魔王城を築城していた所、天空から7つの影が飛来。

一筋の光が発射されたかと思うと、その一撃で400にも及ぶ兵が"蒸発"。
二撃目の光が発せられると、築城中の城が両断され倒壊、200の兵が下敷きになる。

次に、万にも及ぶ赤黒い槍が降り注ぐと、それだけで300の兵が貫かれて命を落とす。
それだけに止まらず、池の様に形作られた夥しい量の血が1ヶ所に集まると、長大な大蛇となって辺りに居た兵を蹂躙した。

その後7人が降り立つと、1人の人物が残った死体に触れていき、何やら呟くと、息を吹き返したかの様に起き上がり、生き残った兵達に襲い掛かってきた。

6000も居た兵が、僅か10分程で4000にまで減った事で、残った四天王2人は【魔王】と兵を率いて逃げ出した。



逃げた先は『滅びの森』。
昼間でも真っ暗な程木々が生い茂り、モンスター所か上級冒険者ですら手を焼く強さの魔獣がうじゃうじゃと生息している。

更にここに生息している魔獣は【魔王】が手懐けているモノばかりの為、戦力が大幅に上がったのだ。

『奴ら』に背を向け、闇雲に逃げたと思わせて誘い込み、一転して攻勢に出る。
狩られる側が狩る側に回る番である。


『奴ら』が普通であれば、の話であるが


「ま、【魔王】様!『奴ら』に向かって行った魔獣の反応がどんどん消失していきます!
それに比例して2つの反応が徐々に増大しています!?」

「ふざけるな!上級冒険者が最低3パーティは居ないと倒せん魔獣がうじゃうじゃ居るんだぞ!?
何故たかだか7人に殺られるのだ!」


そう言い放つ間も2つの反応がどんどん増大していき、森の奥から途轍も無い殺気が放たれている。


「きゃははっ!見付けたわよぉ【魔王】ちゃん!」

ギュルルッ!ブヂィッ!

「うがぁあああああああっ!?」


真っ暗闇の森の中から女性の声と共に湾曲した刃が取り付けられた鞭が伸び、【魔王】の左腕に絡み付くと容赦無く引き千切られた。


「ぐっ…くそっ何処から…!?」

「【魔王】様!兎に角ここから退きましょう!
トラディグマ!鳥獣形態になって【魔王】を遠くに逃がして下さい!」

「あいよっ!
手前ぇら!その間援護頼むぜぇっ!」


トラディグマと言われた男性獣人は四天王最強格の1人で、獣人形態、鳥獣形態、水生獣形態と環境に合わせて形態を変化させる事で四天王全員からも敵無しと言わしめた男である。

そのトラディグマが声を上げると、彼らの周りに控えていた兵や『滅びの森』に棲むモンスターや魔獣が一斉に【魔王】の前に立ち、肉壁という陣形を形作る。

メキメキメキッ!

トラディグマの背中から翼竜の様な翼が生え、飛行形態に入る。が


ドズッ、ドドドッ、ズドッ!

「おごぁっ!?」

トラディグマの背に赤黒い槍が5本突き刺さる。
それらは全て貫通し、体に5ヶ所の穴が空いている状態である。

先程の肉壁となった兵やモンスターの方を見てみると、既に数百を越える赤黒い槍が突き立ち、全員が骸と化していた。


「な!?何故だ!?何故傷が塞がらない!?」

「な、そんなハズ無いでしょ!?その程度の傷なら自己再生能力で治癒出来るハズでしょ!?」


トラディグマが自身の体に起こった違和感に慌てふためいている。
どうやら自己再生能力が備わっているハズなのだが、全く機能していない様だ。

それどころか刺し貫かれた箇所から体色が徐々にどす黒く変色していき、体の自由も効かなくなってきている様である。

周囲の反応を見ると、先程まで4000程居た兵がいつの間にか1000にまで数を減らしていた。


「ま、【魔王】…ここは我が、殿、を務めます故…
ガルディアは空間転移、に秀でております。
共に、『廃都』へお逃げ下され…」


既に言葉を放つ事すらままならないトラディグマは、『奴ら』が居るであろう方向へ向け、歩き始める。

が、そこに立ち塞がる様に、先程骸と化した元兵達より流れ出た血で出来た溜まりから、数百に及ぶ赤黒い人型が現れ、次々とトラディグマへ向け襲い掛かる。





目まぐるしく変わる状況の変化に、【魔王】の頭が付いていかず、ただただ呆然としていると四天王最後の生き残りであるガルディアが残存兵力と共に【魔王】の手を引いて、森の中をただひたすらに駆けていく。

直後、冒頭に起こった大爆発が発生し、生き残りは【魔王】とガルディアの2人だけとなった。

と、そこに

ザッ、ザザザッ、ザザッ、ザッ!

爆炎と爆煙の中から6人の『奴ら』が姿を現す。
が、背後に爆炎が上がっている為表情は伺い知れない。

すると【魔王】は、ガルディアの前に立ち声を荒げる。


「おい貴様らは一体何者だ!名を名乗れ!」


と、良い放った直後に背後に居るガルディアに小声で話す。


「ガルディア、私が時間を稼ぐ。
直ぐに空間転移魔法を練り、逃げる手筈『ドズッ』整え…ゴブッ…え?」


ガルディアに小声で話していた所、背中に鋭い痛みが走る。
今自身の胸からは血みどろの腕が生え、ビクビクと動く何かを掴んでいる。

【魔王】は訳も分からず立ち尽くしていると、その腕が勢い良く引き抜かれ、【魔王】は地面に倒れ伏す。

空っぽになった胸部からは止めどなく血液が流れ出し、急速に力と体温が抜けていく感覚を覚える。


「え…へ…あ…が。」


【魔王】は薄れ行く意識の中振り返ると、自身の心臓を鷲掴みしているガルディアが立っていた。


「ガ、ガルディア…貴様何「おいおい、お前まだ僕の事ガルディアとか言う女だと思ってるのか?」


ガルディアの姿の"誰か"は、自身の面の皮をグニグニと引っ張りながら醜悪な笑顔を【魔王】に見せる。

外面はガルディアの様だが、その下に見える体色と声が全くの別物である。

【魔王】は驚きに目を見開き、倒れ伏した状態で固まっていると


ガヂョッ!


自身の頭蓋が砕かれる音と共に視界が真っ暗になった。


「【魔王】軍殲滅完了、っと。」
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...