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再びアルバラスト編
面倒臭い奴
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翌朝、面倒臭い奴が来た。
「おい起きろ!貴様が"野盗2「起きてるよ。朝早くから騒がしい。
大勢引き連れて来たから野盗かと…って、あれ?アンタら…」
「き、昨日はすいません…」
皆が野営している場所から少し離れた所にある岩場で腰掛け、目を瞑って休んでいた所、本道から騎乗したのも含め、20人位の集団が近付いて来るのを感知。
忍び足で来るでも無く、ズカズカと足音を立ててやって来ると、突然声を荒げて怒鳴り付けて来たのだ。
面倒臭いが対応しようと思って目を開くと、昨日蹴散らした『何とかの何とか』って名前の騎士達と、腰にレイピアを差した20代位の美丈夫が立っていた。
「貴様だな!俺の妹のプロポーズを断ったと言う、"野盗200人殺し"の通り名を持つ冒険者は!」
「妹?
あー確か…ヴァレンシア子爵の娘のドミニカって女の子と…その子に仕えてる…『お米と豆』の騎士さんでしたっけ?」
「ヴァリエンテ伯爵の娘、ミミカだっ!!
あとコイツらは『乙女の盾』だ!
何一つ覚えて無いじゃないかぁっ!」
「申し訳ありません。
まっっっったく興味が無かった物で、頭の片隅にすら残ってませんでした。」
これだけ騒がしくしていれば、寝入っていた者達は目を覚まし、本道を歩いていた通行人は何だ何だと事の成り行きを見守っていた。
「それだけに止まらず、貴様は妹に仕える騎士達を痛め付けたそうじゃないか!」
「妹さんが僕に腹を立てて、懲らしめる為に騎士達を向かわせて来たんですよ?
僕はそれを撃退しただけです。」
「妹はその所業に心を痛め、普段は夜更かしする程遊び呆けるのに、昨日は侍女の言い付け通り10時頃には寝たんだぞ!」
「健康的じゃないか。」
「食事も喉を通らず、いつも胸焼け起こす程お菓子を食い漁るのに、昨日は腹八分目で抑えたんだぞ!」
「健康的じゃないか。」
「よってお前に制裁を加える為にやって来たのだ!」
「今の所恨みを買われる部分無くない?
…まぁ良いです、準備しますから少しお待ちを…」
そう言って符を取り出そうとすると
「五月蝿い!貴様には死を以て償って貰うぞ!」
ガッ!
男は腰に提げていたレイピアの柄を握りしめた。
『ザッ!ザシュッ!シュピッ!』
「ひぃっ!?」
「うわっ!?」
「ひっ!?」
「ぎぃっ!?」
「うおっ!?」
「きゃっ!」
「うわぁっ!?」
男がレイピアの柄を握った直後、右手首、腕の内側、首筋に素早く刃物で斬られた感触が伝わり、身を竦める。
嫌な汗が噴き出し、慌てて自身の腕や首に触れてみるも、そんな痕跡は無い。
後ろに控えている騎士達の中に同様の体験をした者が居た様で、各々自身の体に起こった異変に首を傾げていた。
「あなたには右手首、腕の内側、首筋を斬られた感覚が。
後ろに居る騎士の内、手前に居る6人の方々は腕や太腿等の、鎧の隙間から狙える部分を斬られる感覚が走ったハズです、違いますか?」
岩場の上で微弱な殺気を放ちつつ、座ったままの体勢でノアが言い放つ。
「そ、そうだ!貴様、何だ今のは!?
幻覚か何かの類いか!?」
「幻覚…と言えば幻覚ですかね。
実際に斬られた訳じゃ無いですから…
ただ、あなたがこの場で剣を抜いた場合には"こうなるぞ"、という光景を見せただけの事。
スキル<無刀幻視>、"ある程度"の戦闘力があれば、手に剣を持っていないのに剣があるかの様に見え、斬られていないのに斬られたかの様に相手を錯覚させる代物ですよ。」
「な、何だそのスキルは…」
「あなたの戦闘力は高く見積もっても中級冒険者程度。
元上級冒険者の両親との訓練で、死線を20回位彷徨ってたらいつの間にか覚えてましたから知らないのも無理は無いでしょう。」
「…ふ、下らん。そんな幻覚如きで…」
「ならその剣を今直ぐ抜いてみろ、さっき幻視した光景が現実になるぞ?
先程体験していない騎士達は準備しておけよ?
殺しはしないが戦闘不能若しくは致命傷レベルの怪我を負う事になる。
回復薬や魔法を準備しておかないと手遅れになるかもだぜ?」
未だ剣の柄を握りしめている男は兎も角、騎士達は前日に戦って…戦いとすら言えない程一方的にあしらわれている為、ノアが言ってる事がホラでないのは承知している。
男の方はと言うと、仕えている騎士達の練度や忠誠心は長年の付き合いで把握している為、その辺りは信頼している。
その騎士達がノアからの言葉を受けて皆一様に回復等の準備を始めた事で、自身の行い一つで自分や彼らの運命が大きく左右される場面に居る事を漸く理解した様だ。
「あなたの妹さんのプロポーズ?(と呼べるのか怪しいけど)を断られた事で矜持を傷付けたかも知れないけども、一瞬の激情に身を任せた結果ここで騒ぎを起こしたら間違い無く問題になりますよ。
ホラ、周りを見て下さい。」
ノアに促されて周りを見てみると、この光景を見守っているのはジェイルやクロラ達に、商人のベイゼル。
『筋肉達磨』の3人に太刀の男性、往来を歩く通行人多数である。
「今のこの状況は、一貴族の集団が冒険者1人を痛ぶりに来ている、と言った感じに捉えられます。
僕はあなた達がどうなろうと知った事ではありませんが、あなた達はどうでしょうねぇ…」
「う…ぐっ…」
「昨日のミミカさん…でしたっけ?
彼女が"何れ西にある広大な3つの土地を収め、侯爵に上り詰める予定よ!"と言ってましたが、"何れ"という事は、"まだ"手中に収めている訳では無いのですよね?
良いのですか?たかが1人の冒険者如きに腹を立て、剣を振った事が知れ渡って変なうわさが立った挙げ句、その話が流れる可能性だって、あ~るんじゃな~いで~すかね~ぇ?」
「う…ぐぐぐっ… 」
この男、ヴァリエンテ・カルルは、父であるヴァリエンテ・ルルイエの長男である。
ルルイエは貴族の中では大分まともな人間で、過去に数々の武勲を挙げている事でも知られている。
娘のヴァリエンテ・ミミカが言っていた『西にある広大な3つの土地』と言うのも、ルルイエの数々の武勲と手腕によって与えられる予定の物である。
そんな時に息子とは言え、稚拙な私情で激情に駆られて人を斬ったとあらば、それは見過ごせない問題となる。
そこらの貴族であれば揉み消しを行うだろうが、ルルイエはその様な事はせず、全てを公にするだろう。
更にこの時のカルルは、ノアの人脈の深さを知らなかった(本人も特に意識して無い)が、これを公にすればヴァリエンテ一族等余裕で吹き飛ばす事が可能であった。
ノアの性格を考えれば、その様な事をするハズが無いので、今回はそれが幸いした。
「…い、良いだろう、剣を収めてやる!
衆目もあるので別の形で報いを受けさせてやる!」
「また来るんですか?」
「五月蝿い!貴族である我らを怒らせた事を後悔させてやる!
お前達!行くぞ!」
「「あ、お、お待ちを、カルル様!」」
「も、申し訳ありませんでした、ノア殿…」
「いえ、兄妹揃ってお疲れ様です…」
カルルや騎士達は騎乗した後、本道に戻って駆けて行った。
「…朝から大変だったね、ノア君…」
「うん…まぁ、大事にならずに済んだ、という事で良しとしよう…
さて、ちゃっちゃと朝飯食べちゃおうか。」
そう言って岩場から下りて皆の元へと向かうのであった。
だが、ノアはこの時忘れていた。
以前コモン・キエフが私兵を使ってノアを監視させた際、流石に嫌気がさしたノアが注意したが、奴はすんなり聞き入れたか?
コモンは更に私兵を動員して国盗りに及んだのだ。
貴族は何故か矜持を傷付けられるのを嫌う。
カルルは一時身を引いたが、ノアへの制裁を諦めた訳では無かった。
という訳で、もうお分かりだと思うが、ノアにとって本当に面倒臭いのはここからの話である。
「おい起きろ!貴様が"野盗2「起きてるよ。朝早くから騒がしい。
大勢引き連れて来たから野盗かと…って、あれ?アンタら…」
「き、昨日はすいません…」
皆が野営している場所から少し離れた所にある岩場で腰掛け、目を瞑って休んでいた所、本道から騎乗したのも含め、20人位の集団が近付いて来るのを感知。
忍び足で来るでも無く、ズカズカと足音を立ててやって来ると、突然声を荒げて怒鳴り付けて来たのだ。
面倒臭いが対応しようと思って目を開くと、昨日蹴散らした『何とかの何とか』って名前の騎士達と、腰にレイピアを差した20代位の美丈夫が立っていた。
「貴様だな!俺の妹のプロポーズを断ったと言う、"野盗200人殺し"の通り名を持つ冒険者は!」
「妹?
あー確か…ヴァレンシア子爵の娘のドミニカって女の子と…その子に仕えてる…『お米と豆』の騎士さんでしたっけ?」
「ヴァリエンテ伯爵の娘、ミミカだっ!!
あとコイツらは『乙女の盾』だ!
何一つ覚えて無いじゃないかぁっ!」
「申し訳ありません。
まっっっったく興味が無かった物で、頭の片隅にすら残ってませんでした。」
これだけ騒がしくしていれば、寝入っていた者達は目を覚まし、本道を歩いていた通行人は何だ何だと事の成り行きを見守っていた。
「それだけに止まらず、貴様は妹に仕える騎士達を痛め付けたそうじゃないか!」
「妹さんが僕に腹を立てて、懲らしめる為に騎士達を向かわせて来たんですよ?
僕はそれを撃退しただけです。」
「妹はその所業に心を痛め、普段は夜更かしする程遊び呆けるのに、昨日は侍女の言い付け通り10時頃には寝たんだぞ!」
「健康的じゃないか。」
「食事も喉を通らず、いつも胸焼け起こす程お菓子を食い漁るのに、昨日は腹八分目で抑えたんだぞ!」
「健康的じゃないか。」
「よってお前に制裁を加える為にやって来たのだ!」
「今の所恨みを買われる部分無くない?
…まぁ良いです、準備しますから少しお待ちを…」
そう言って符を取り出そうとすると
「五月蝿い!貴様には死を以て償って貰うぞ!」
ガッ!
男は腰に提げていたレイピアの柄を握りしめた。
『ザッ!ザシュッ!シュピッ!』
「ひぃっ!?」
「うわっ!?」
「ひっ!?」
「ぎぃっ!?」
「うおっ!?」
「きゃっ!」
「うわぁっ!?」
男がレイピアの柄を握った直後、右手首、腕の内側、首筋に素早く刃物で斬られた感触が伝わり、身を竦める。
嫌な汗が噴き出し、慌てて自身の腕や首に触れてみるも、そんな痕跡は無い。
後ろに控えている騎士達の中に同様の体験をした者が居た様で、各々自身の体に起こった異変に首を傾げていた。
「あなたには右手首、腕の内側、首筋を斬られた感覚が。
後ろに居る騎士の内、手前に居る6人の方々は腕や太腿等の、鎧の隙間から狙える部分を斬られる感覚が走ったハズです、違いますか?」
岩場の上で微弱な殺気を放ちつつ、座ったままの体勢でノアが言い放つ。
「そ、そうだ!貴様、何だ今のは!?
幻覚か何かの類いか!?」
「幻覚…と言えば幻覚ですかね。
実際に斬られた訳じゃ無いですから…
ただ、あなたがこの場で剣を抜いた場合には"こうなるぞ"、という光景を見せただけの事。
スキル<無刀幻視>、"ある程度"の戦闘力があれば、手に剣を持っていないのに剣があるかの様に見え、斬られていないのに斬られたかの様に相手を錯覚させる代物ですよ。」
「な、何だそのスキルは…」
「あなたの戦闘力は高く見積もっても中級冒険者程度。
元上級冒険者の両親との訓練で、死線を20回位彷徨ってたらいつの間にか覚えてましたから知らないのも無理は無いでしょう。」
「…ふ、下らん。そんな幻覚如きで…」
「ならその剣を今直ぐ抜いてみろ、さっき幻視した光景が現実になるぞ?
先程体験していない騎士達は準備しておけよ?
殺しはしないが戦闘不能若しくは致命傷レベルの怪我を負う事になる。
回復薬や魔法を準備しておかないと手遅れになるかもだぜ?」
未だ剣の柄を握りしめている男は兎も角、騎士達は前日に戦って…戦いとすら言えない程一方的にあしらわれている為、ノアが言ってる事がホラでないのは承知している。
男の方はと言うと、仕えている騎士達の練度や忠誠心は長年の付き合いで把握している為、その辺りは信頼している。
その騎士達がノアからの言葉を受けて皆一様に回復等の準備を始めた事で、自身の行い一つで自分や彼らの運命が大きく左右される場面に居る事を漸く理解した様だ。
「あなたの妹さんのプロポーズ?(と呼べるのか怪しいけど)を断られた事で矜持を傷付けたかも知れないけども、一瞬の激情に身を任せた結果ここで騒ぎを起こしたら間違い無く問題になりますよ。
ホラ、周りを見て下さい。」
ノアに促されて周りを見てみると、この光景を見守っているのはジェイルやクロラ達に、商人のベイゼル。
『筋肉達磨』の3人に太刀の男性、往来を歩く通行人多数である。
「今のこの状況は、一貴族の集団が冒険者1人を痛ぶりに来ている、と言った感じに捉えられます。
僕はあなた達がどうなろうと知った事ではありませんが、あなた達はどうでしょうねぇ…」
「う…ぐっ…」
「昨日のミミカさん…でしたっけ?
彼女が"何れ西にある広大な3つの土地を収め、侯爵に上り詰める予定よ!"と言ってましたが、"何れ"という事は、"まだ"手中に収めている訳では無いのですよね?
良いのですか?たかが1人の冒険者如きに腹を立て、剣を振った事が知れ渡って変なうわさが立った挙げ句、その話が流れる可能性だって、あ~るんじゃな~いで~すかね~ぇ?」
「う…ぐぐぐっ… 」
この男、ヴァリエンテ・カルルは、父であるヴァリエンテ・ルルイエの長男である。
ルルイエは貴族の中では大分まともな人間で、過去に数々の武勲を挙げている事でも知られている。
娘のヴァリエンテ・ミミカが言っていた『西にある広大な3つの土地』と言うのも、ルルイエの数々の武勲と手腕によって与えられる予定の物である。
そんな時に息子とは言え、稚拙な私情で激情に駆られて人を斬ったとあらば、それは見過ごせない問題となる。
そこらの貴族であれば揉み消しを行うだろうが、ルルイエはその様な事はせず、全てを公にするだろう。
更にこの時のカルルは、ノアの人脈の深さを知らなかった(本人も特に意識して無い)が、これを公にすればヴァリエンテ一族等余裕で吹き飛ばす事が可能であった。
ノアの性格を考えれば、その様な事をするハズが無いので、今回はそれが幸いした。
「…い、良いだろう、剣を収めてやる!
衆目もあるので別の形で報いを受けさせてやる!」
「また来るんですか?」
「五月蝿い!貴族である我らを怒らせた事を後悔させてやる!
お前達!行くぞ!」
「「あ、お、お待ちを、カルル様!」」
「も、申し訳ありませんでした、ノア殿…」
「いえ、兄妹揃ってお疲れ様です…」
カルルや騎士達は騎乗した後、本道に戻って駆けて行った。
「…朝から大変だったね、ノア君…」
「うん…まぁ、大事にならずに済んだ、という事で良しとしよう…
さて、ちゃっちゃと朝飯食べちゃおうか。」
そう言って岩場から下りて皆の元へと向かうのであった。
だが、ノアはこの時忘れていた。
以前コモン・キエフが私兵を使ってノアを監視させた際、流石に嫌気がさしたノアが注意したが、奴はすんなり聞き入れたか?
コモンは更に私兵を動員して国盗りに及んだのだ。
貴族は何故か矜持を傷付けられるのを嫌う。
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