ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
369 / 1,124
再びアルバラスト編

閑話 【勇者】ミユキの居候生活7日目~襲撃1回目④~

しおりを挟む
~現在夜中の2時頃~

冷たい地面の上で座り込むマドリックは、ミユキの動きを見て素直に驚いていた。

(…人は戦いの中で成長していくモノだ、と何処かの誰かが言ってた気がするが…
ミユキのヤツ、7回目の蘇生を受けた辺りから露骨に成長し過ぎじゃないか…?)

ダダンッ!「はぁぁっ!」ブォンッ!

ガキンッ!「26。」

マドリックの周囲に立つ大木を縦横無尽に駆け、頭上から<渾身>を乗せた兜割りを繰り出すも爪の先で受け流され、弾かれてしまう。




「シッ!」

ビュオッ!『キンッ!』「27。」
ブンッ!『ギンッ!』「28。」
ヒュバッ!『ガキュッ!』「29。」

弾かれた剣を返す形で斬り上げ、振り下ろし、横薙ぎの3連撃を繰り出す。

全て爪の先で弾かれてしまったが、先程よりも明らかに手数が増えていた。


「はぁああっ!
私が元居た世界の漫画の技を食らえっ!」

ヒュバババババババババッ!


と、突如ミユキが気合いの声と共に唐竹割り、袈裟斬り、右薙、右斬上、逆風、左斬上、左薙、逆袈裟、刺突の9連撃を繰り出す。


ガガゴゴゴガゴガガッ!

「30、31、32、33、34、35、36、37、38…
何だ?ただの9連撃じゃないか、変に期待させやがって。」

「くぅぅ…あの技をやるには速さが足りないか…」


何の技をやりたかったかは知らないが、ミユキの反応からして満足のいく出来では無かった様だ。

(うーむ…さっきまでと比べて攻撃力や移動速度、反応速度が上がってるな…
その為か、多少他の事を考えられるだけの余裕が出来てきたな。
俺のアドバイスだけでここまでの成長はありえん、切っ掛けは分からんが、傾向としては良い方向に向かっているな…)


『襲撃』の本来の目的は、実戦での"臨機応変な対応力"を養う目的の為に行っている。

幾ら圧倒的な攻撃力を持っていようが、突発の事象に対応出来なければただの宝の持ち腐れである。


次の目的として"立ち回りの矯正"である。

剣術の指導を受ける時に、よく"脇を閉めろ"と言われる事があるが、これは体の被弾面積を減らす目的と、技の出だしを相手に悟られない様にする為と言われている。

対応力があったとしても、被弾が多かったり、相手に次の動きを読まれてしまったら元も子も無い。

冒頭にも出たが、戦いの中で成長していく中で、立ち回りの方も強制的に矯正させていくのが目的である。


だがミユキの場合、そう言った部分の成長が著し過ぎるのである。


(…コレは…恐らく【勇者】に由来したスキルか何かの影響だろうな…)


などとマドリックが思考を巡らせている間にも


「ふぅぅうっ!」ボッ!

ガギギギッ!「99。」

ミユキが放った突きをマドリックは右手の爪先で挟んで受け止める。


「惜しかったな、剣筋、動き共に最初に比べて大分良くなった。
だが予備動作がでかすぎて次の一手が見え見えだ、次はその辺りを考慮するんだな。」

「うぅ…最初に比べて大分マシになったと思ったのに…」


因みに今現在のミユキの死亡回数は8回。
最初こそ死ぬ事に対して思う所があったミユキだが、5回目を過ぎると、もう流れの一部として捉えている様だ。


「…よいしょっと…」ズシャッ


すると今まで座り込んでいたマドリックが徐に立ち上がる。


「さて、次で蘇生薬が尽きるから当初の『襲撃』のやり方に戻すとしよう。
お前さんの動きも明らかに良くなってる事だしな。」

「…って事は実戦形式で、という事よね…」

「まぁ本来はそっちが目的だし、今までのはただの打ち込みに過ぎないからな?」

「ぜ、善処します…」

「ほれ、さっさと打ち込んで次いくぞ次!」

「えぇ!」ボッ!

カキンッ!「100、っとな。」シュピッ!


会話の直後という不意打ち気味な攻撃にも関わらずあっさりと突きを弾かれたミユキは、手首から先が全く見えないマドリックの手刀で首を斬られる。

ガッ!チャパパッ…

「…っはぁっ!これでラストね!」


首が斬り落とされる寸での所でミユキの頭を押さえたマドリックは、蘇生薬を振り掛けて即蘇生。

ミユキも即座に覚醒して次に備えている。

2人揃って死ぬ→蘇生が流れ作業となっていた。


ザッ、ザッ、ザッ…

徐にマドリックがミユキから距離をとる。


「んじゃあ仕掛けるぞ、最後の1回だ、気合い入れてやれ。」

「はい!」


ズドンッ!「オラッ!」

ガギギンッ!「くっ!!」


マドリックの強烈な踏み込みによる加速で放たれた右巨腕による突きを、ミユキは粗削りな受け流しで無理矢理弾く。

(ほぅ…粗いが弾いたか。
またもや僅かに反応速度が上がった様だな。
ではこれならどうかな?)

ドズゥッ!「っ!?」

ゴバァッ!「っっっ!!」

右巨腕を弾かれたマドリックは、左巨腕を地面に深々と突き刺すと、大量の土砂を巻き上げてミユキの視界を潰す。

ズザザッ!「はぁぁっ!」

(今度は避けたか。)

右側へ避けたミユキは勢いそのままに、振り上げた直後で硬直したマドリックの左半身側へと移動、がら空きとなった左脇腹へと斬り掛かる。

ダンッ!ギュルルッ!ブォンッ!

ギギンッ!ドガッ!「かはっ…!?」

マドリックは右足を踏み込み、遠心力を乗せた右巨腕の薙ぎ払いを繰り出す。
直撃寸前の所で剣で防御したミユキだが、それだけでは威力は殺せず、後方の大木に背中を強かに打ち付ける。


「背後には大木!さぁどうするミユキちゃんよ!」ブォンッ!

ダンッ!「くっ!!」ヒュォッ!「お?」


大木を背にするミユキに右巨腕の薙ぎ払いを繰り出したマドリックだが、飛び上がる事でコレを回避。

そのまま<壁走り>を発動したミユキは、器用な事に後ろ向きのまま大木を垂直に駆け上がる。


「器用な事するねぇ。だが良い判断だ!」ダンッ!


そう言ってミユキを追い掛ける様にマドリックも木を登る。


「そらそらそらそら!」ボボボボボッ!

「ぐぬぬっ…」ギギガギギンッ!


木を登りつつマドリックの繰り出す攻撃を何とか弾いていく。



「そらぁっ!」ベギャッ!

「うわっ!?」


巨腕を振り上げたマドリックは、ミユキとの中間地点に叩き付け破砕する。
当然空中に投げ出される形になるミユキ。

ガシッ!「あっ!」

ブォンッ!

ヒュォッ!ズザザザザッ!「…げ。」

胸ぐらを掴まれたミユキは、猛烈な力で引っ張られ、地面へと一直線に向かう。

が、何とか身を翻して勢いを殺したミユキが地面に滑り込む形で着地すると、大木の中程にへし折った大木に爪を突き刺してミユキを見るマドリックの姿があった。


「マ『ブォンッ!』ズイッ!!」

ズドッ!ボギャッ!!


強く地面を踏み込んで駆け出したミユキの背後で凄まじい早さで投げられた大木が叩き付けられ、破砕された音が響く。

何とか無事に回避出来たミユキが大木の上に居るであろうマドリックに視線を移す。



「…あれは本当にヤバそう…」


ミユキの視線の先では、飛び上がったマドリックの姿と、今まで左右どちらかの腕で戦っていたマドリックが両巨腕を振り上げながら落下してきていた。

見た目が熊なのだが、口元がニヤリと笑っている様に思われる。


「マドリック~…」


マドリックの間延びした声音とは裏腹に、アレを食らえば一堪りも無いだろう。


「あーもー、自棄だ!掛かって来なさい!」


剣を腰に戻して待ちの体勢を取るミユキ。

(自棄っパチになったか…いや、目は死んでないな…)

声では自棄になった風を取っているが目を見る限り何か狙っている様である。

(さて、どうでるかねぇ…)

「スマァッシュッ!!!」ドボァアアアッ!


マドリックは着地と同時に振り上げた両巨腕を地面に叩き付けると、地震と錯覚する程の揺れと衝撃波、土砂や木々が弾丸の様に前方へと飛び散る。

まるで爆裂魔法を放ったかの様な威力である。

だが


ボファッ!「どおぉおりゃぁあああっ!!」

(は!…防ぐでも回避するでも無く突っ込んで来たか!)


土砂の奥から、全身に傷を負いながらも剣を構えたミユキがマドリック目掛け一直線に飛び出してきた。

マドリックと剣との距離はあと1歩分。マドリックは技を放った状態のまま硬直していた。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

処理中です...