ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~ダンジョン『宝物庫』~

あら、どちら様ですか?

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「あら、どちら様ですか?」


扉の中へと入り、暫し道なりに進むと、再び広間へと出る。

だが、先程三機兵と戦った様なきらびやかな装飾や調度品が置かれた部屋ではなく、所狭しと金属骨格や部品、何かの設計図が乱雑に置かれた、工房の様な部屋であった。

機兵製作の為か、天井までは10メル程もあり、天井にはこれまた吊り具等の器具が設置されている。

その部屋の中央では椅子に車輪が付いた様な装置に腰掛けた、20代位で寝巻き姿の女性が静かに書物を読んでいた。

白髪混じりの黒髪は後ろで結ばれ、肌はやや青白い。
先程の機兵達が言っていた女王であろう。


「…あの、もし…貴方はどちら様ですか?」

「…え?
あぁ、すいません、僕はノアと言って冒険者をやっております。
あなたは女王、で間違いありませんか?」

「女王?
あぁ、あの子達がそう言ってたのね?
ふふ、安心して、私は女王なんてお高い身分じゃ無いわ。
趣味で機兵を作ってたらいつの間にか大国になっちゃってただけよ。」

「それを世間一般的には女王と呼ぶかと…」

「あら、そうなのね。」


目の前でそう話す女性は、どこかポワポワとした感じのある空気を纏っている。

とても先程の木人や機兵を製作した者とは思えなかった。


「そう言えば大丈夫ですか?
機兵達から毒に侵されてると聞きましたが…」

「あら、そんな事まで話していたのね?
今日はいつもより調子が良かったので、読書でもしようかと思って出てきましたの。
いつも奥にあるベッドで寝てばかりだと体が固まってしまいますので。」


目の前の女性が手で指し示す方向を見ると、棺の様な装置の側面に巨大な腕が付いた上半身のみの機兵が置かれていた。


(『アレが例の防震・防音・防弾の装置の様だな…ってか、もしかしなくてもアレ、後で動きそうだよな…』)

(止めてよ、変なフラグを立てないでくれない?)


そんなノアの心中を察したのか


「あ、あのベッド兼作業用の機兵が気になりますか?」

「え?"ベッド兼"?"作業用の機兵"?
確かに気になると言えば気になりますね…」

キィ…

「あ、押しますよ。」

「あら、ありがとう。」


車輪が付いた椅子のハンドルを持ったノアはベッドまで押していく事に。






「…ぃしょっと…
コレはですね、この様に近付くと…」

シュルル…ストッ。

「おー凄い。
機兵自身が手伝って乗せてくれるのですね。」


ベッドだと言う巨大な機兵から、金属製の触手が伸び、椅子に座った女性を抱き抱えて棺の様な入れ物の中へ。

カションッ…ガチッ!

「この様に乗り込んで、機兵製作等を行う為の作業用の機兵なんです。」


入れ物の中に女性が入ると、自動的に棺が閉まりロックされる。


「へー、凄い…ん?」


棺の正面を見ると鍵穴の様な穴が出現したのを見付けるノア。


「そしてですね、コレだけだと何も作業が出来ないので、取り換え式の腕を…ゴホッ!」


と、突然棺の中の女性が咳き込んだ。


「!?大丈夫ですかっ!?」

「え、えぇ大丈夫…
…ここに人が来る何て滅多に無いから嬉しくてつい…ゲホッ!ゴホッ!」


とても大丈夫そうに見えなかったので心配そうに棺を覗き込むノア。

すると


〝女王ラインハード様以外の反応を検知、排除行動に移ります!〟

「ま、待って…この人は冒険者さ〝問答無用。〟


ガッションッ!

「ぬっ『ドゴォッ!』

ドガァッ!


突如ベッドの奥に居た巨大な機兵が、女性の制止の声を聞かず、長さ2メルもある巨大な取り換え式の腕を装着。
そのまま前に居たノア目掛け拳を打ち込み、10メル程後方にある棚へ叩き付けられた。


「ゴホッ…て、停止!停止して!
…な、何故言う事を聞かないの…?」

〝ラインハード様、御安心を。
侵入者は直ちに排除いたします故、安静に為さってて下さい。〟

「た、確かにあの子は侵入者かも知れませんが、今は私の話を聞いてくれた大切なお客さんです!直ちに『カシャッ!』」


〝五月蝿いなぁ。
安静にしてないとあなた早々にあの世行きよ?
その体、何れは私の物になるのだからそれまで腐って欲しくないのよ。〟

「え…?」


丁寧な口調だった機兵が突如人間の女性らしい口調で話し出した。
その際、中の声は一切外に聞こえなくなった。

女王ラインハードも初めて聞いた様で、驚きに顔を強張らせている。


〝全く…毒を介してあなたとあなたが作った機兵共を使って、国を中から侵食していこうと思っていたのに、とんだ邪魔が入ったわ。〟

「な、何を言って…」

〝あなたの国は大きくなり過ぎたのよ。
何処の馬の骨とも知れない村娘が機兵製作で頭角を現しただけでなく、建国までしよって…
戦争を吹っ掛けてもアンタの作った機兵が強過ぎて一般兵じゃとても太刀打ち出来ないし、造りが精密過ぎて他国じゃ量産出来ない。〟


「だから毒を盛ったって訳か…」ガラガラ…

(くそ…さっきの三機兵が言っていた"暴走状態"と言うのはこういう事だったか…)


瓦礫の山から姿を現すノア。


「ぼ、冒険者さん…」

〝あら?
強目に殴ったハズだけど…まだまだ加減が分からないわね…〟

「お前は何だ?
今までの機兵と、中身からして違う様だが。」

〝ふふ、どうせこの場で殺してやるから冥土の土産に教えてあげるわ。
私は元々とある国からあなたを殺す様依頼された【呪術師】。
【錬金術】の仲間に遅効性の毒薬を作製させ、そこに私が強力な呪いを付与させたのよ。〟

「それで何がどうなって機兵の中に入り込んでるのさ。」

〝せっかちなガキだわね、今話すから少し黙ってなさい。
この女をただ殺すだけじゃ勿体無いでしょ?
だから殺した後も有効活用しようと思って"私自身の意識を毒薬に煮溶かした"のよ。〟

「……っ…」

「…何て事を…」


【呪術師】だと言う女の狂気の行動に閉じ込められたラインハードと、ノアが言葉に詰まっている。


〝この女の造る機兵の動力源は、従来の魔石と言う点は変わらなかったから、中に入ってしまえば後は簡単よ。
この女を介して周囲に居た各機兵を次々と乗っ取り、そろそろ兵舎に居る機兵約3000体の掌握に着手しようと思った矢先、侵入者としてここにガキがやって来るとはね…〟

コッコッコッ…

(なる程ね、通りで道中の機兵や木人は殺す気満々で攻撃してきた訳か…)


〝…ったく、外に居た機兵共は何をやってたのかしら?
ガキ1人殺せず中に通してきた訳?〟

バチンッ!

〝まぁ良いわ、私自らこの機兵を操り、邪魔者を排除してやるわ。〟

ブォンッ!

〝さぁそこの糞ガキ、ここに来た事を後『ゴシャッ!』なぁっ!?〟


余裕の表れか、巨大な腕をもたげ、ノアに指を差して挑発してきた機兵に向け、腰に提げていた荒鬼神をその巨大な腕目掛け、ぶん投げた。

先程の女王直属近衛三機兵よりも更に頑強な造りをしているハズの機兵の腕が粉砕し、床に落下した。


「ふざけた事を抜かしてんじゃねぇ、卑怯な手使って入り込んだだけじゃなく、私利私欲の為だけに全てを我が物にしようとするその魂胆が腹立たしい!
"ここに来た事を後悔させる"?
馬鹿言ってんじゃねぇ、"俺達"に会った事を後悔させてやる。」

〝くっ、おのれ…〟


ノアが放った攻撃と自然と発せられる殺気に、機兵の身ながら、ただならぬ悪寒を感じていた。


「…冒険者さん…」


防震・防音・防弾の装置内に閉じ込められているラインハードは、不安げにノアを見やる。

そのノアはと言うと、真っ直ぐラインハードを見据え、指を差して何やら呟いている。

言葉は聞こえずとも何を言っているかは分かる。


「今から助けに行くから待ってろ。」

(『囚われのお姫さんを助けるのは、冒険者としては定番だ。
助力は惜しまん、派手にやれ!』)


こうして女王ラインハード救出戦が開始された。
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