ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

ザル

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カチャカチャ…(…忍び込む身としては助かる限りだが、見張りの1人も居ないのは流石にザル過ぎるだろ…)


東西南北に位置する4ヶ所の尖塔へ同時侵入を図る為、尖塔入り口の錠前を解錠しに掛かった【盗賊】の1人は、ザル過ぎる警備態勢に、逆に警戒を強めていた。

通常、重要施設の錠には警報を鳴らす魔法や、関係者以外が触ると発動する罠が仕掛けてあったりするが、ヒュマノに関してはそういった類いの仕掛けが一切無かったのである。

とは言え、尖塔の中に罠が仕掛けてあり、まんまと忍び込んだ賊を一網打尽にする所(主にダンジョン)があったりするのだが、そういった魔法が仕掛けてある形跡も無く、ただの錠が仕掛けてあるだけであった。




カキ…ン…


(…本当にただの錠だった…
まぁいい、<罠感知>を発動させて…
…嘘だろ?何も仕掛けていない…)

スッ!ササッ、スッ、スッ!

("解錠完了!先行頼む!")



【盗賊】が手で合図を送ると、先に【忍】が3人程侵入。
壁や床、地下へと続く階段などを素早く確かめ、【盗賊】が見落とした罠が無いかを確認する。


ササッ、パッ、パパッ!

("罠の類無し!侵入開始!目標、最下層に多数の反応あり!")


【忍】からの合図を受け、【義賊】が音も無く
、だが素早い動きで最下層へと繋がる螺旋階段を駆け降りる。

すると


バババッ!パパッ!ササッ、スッ、スッ!

("最下層に1人室内を徘徊する者有り!事前情報にあった『強制隷属の首輪』を装着された見張りと思われる。【万能】のお2人さん、出番だぜ!")


『『サッ!』』

(("了解!"))

 
『『スッ。』』

最下層に到達した『新鋭の翼』のパーティメンバーであるミミとララの2人は、即座に行動を開始する。

ミミは懐から<遮音>を付与された4枚の符を取り出し、事前情報で割り出していた位置目掛け符を放つ。

すると部屋全体を覆う半透明の結界が張られる。


グォオォオオオオオッ!!


部屋の奥では、首に『強制隷属の首輪』を装着された獣人の見張りが侵入に気付き、咆哮を上げる。

その咆哮で部屋にぎゅうぎゅう詰めになって寝ていた子供の獣人達が跳ね起き、お互いに抱き付いて身を震わせている。


だが<遮音>の結界が張られている為、外に音は一切漏れていない。


ゴォオォオア"ア"ッ!! 


首輪を付けた獣人は、先頭に立つミミ目掛け襲い掛かる。



カカカカカカカッ!「<絡め蜘蛛>!」

ビシィッ!!グ、ゴガッ…!?

ララが部屋の至る所に投げたクナイから細い光の糸が延び、首輪を付けた獣人に絡み付いて動きを封じる。


「今よ!」

「了解した!」ダッ!


ララの合図を受け、【義賊】のレミアは身動きが取れない獣人に急速接近し、首輪の接続部にある魔石に触れる。


「<解呪>!」バキンッ!カランカランッ!


首輪に嵌め込まれていた魔石から魔力が抜けると、音と共に獣人の首から首輪が外れ、獣人は意識を失った。


「ふぅ、上手くいったわね。」
「拘束ありがとう。」
「解呪ありがとう。」


ミミは一息入れ、レミアとララは手短にお互いに感謝を述べる。


『『『『タタタ…』』』』

「ここが子供達が幽閉されている地下牢か…」
「酷い有り様だな…」
「感染症が蔓延しちまうぜ…」
「し尿が野晒しで酷い悪臭だ…破傷風になるぞ…」
「取り敢えずクリーンを掛けまくった上で急いで救出しよう。」


続々と集まる【義賊】や【忍】などの冒険者。
室内は肥溜めの方がまだマシと言える程衛生環境が悪く、救出云々の前に直ちにクリーンが掛けられた。

大抵の汚れや臭いはクリーンを一度掛ければ解消されるものだが、汚れは3回、臭いは2回掛けなければならない程酷いものであった。


スッ…

「ちょっと失礼。」

「ひっ!?ひぃいっ!?」


【義賊】の1人が怯えて震える子供の獣人に触れ、顔色、体毛、肌、爪の状態を確認する。


(…全員が全員顔色が悪過ぎる…
栄養失調で腹水が溜まり、それ以外はガリガリに痩せ細っている…
爪を齧って飢えを凌いでいたのか爪が殆ど無い…
体毛は細く葉の繊維みたいだ。
全身に炎症が広がっている。直ちに治療しなければマズイ事になるぞ…)


「…私達は君達全員を助ける為にここへ来た、悠長にしていられないから手短に話すぞ。
君達に睡眠魔法を掛けてここから運び出す。
だから皆私達の元へ集まってきてくれ。」


【義賊】の女性は子供達を怯えさせない様落ち着いた声音で話す。

だが子供達の人間不信は根深いもので


「そうやってまた酷い目に合わせるんだ!」
「やだよぉ…もう殴られたくないよぉ…」
「やだ!死にたくない!」
「ここから出たら殺す、って言われたの!
出たら殺されちゃう!」
「イヤダァッ!助けてぇ!」


子供達は嫌がり、身を寄せ合って震え、泣き始めた。
ある子供に至っては錯乱状態になり掛かっている。



「<スリープ>!」


誰とも無く睡眠魔法を放ち、無理矢理子供達を寝かし付ける。
それを皮切りに次々と睡眠魔法があちこちで放たれ始める。

少しして辺りはスヤスヤと眠る子供達の寝息に包まれた。


「……。」


【義賊】の女性は辛そうな表情で顔をしかめていた。


「仕方無い。
この状況じゃこれが一番手っ取り早い。
今は状況を飲み込めなくて混乱しているだけだ、君のやり方は間違ってない。」

「あぁ…分かってはいるが、この人数の子供に拒絶の意を示されるとなかなか堪えるな…」

「この手の案件は大体そんな物だ。
作戦が終わったらゆっくり休め。」

「ふぅ…そうするよ。」


息を整えて気持ちを入れ換えた【義賊】の女性は、救出作業に取り掛かる事にした。







救出作戦の方法はかなり単純なもので、作戦に参加した者達(後方支援等は除く)は全員『影移動』が出来る事が前提で選ばれている。

その上で音も無く救出を行う為【義賊】【忍】【盗賊】等の闇夜に紛れる事を生業とする者達が集められたのだ。

そしてその方法だが、各々が持つ『影移動』1つ1つを繋げ、ヒュマノ聖王国から見て北西に位置するスロア領の端まで繋げると言う至極簡単な方法である。


簡単ではあるが、実現するには重要な要素が3つ必要である。


1つ目は、道筋を作る為の人員である。
『影移動』を持っていても効果範囲が狭ければ意味が無い。
だが効果範囲が狭い者達を数珠繋ぎにすれば問題は解決する。



2つ目に、周囲に人が居ない状況を作り出す事である。
『影移動』と言う名の通り影を利用しなければならないが、時間は夜である為影を作るのは難しい。
ランタン等を焚いて外に居ようものなら灯りで気付かれてしまう上に、侵入し易い様に海霧を利用している為、その灯りが拡散して更に見付かり易くなってしまう。
だが夜だからこそ利用出来る灯りがある。
それが『家々の灯り』である。

その灯りを利用してスキル発動者が家内に姿を現し、『影移動』の道筋を作っているのである。
その為商隊で住人を釣って、市街の家々から人々を1ヶ所に集め、家々には極力誰も居ない状態を作り出す必要があった。



3つ目は、広い効果範囲の『影移動』を持つ者が最低2人必要である事。

幾ら家々から住人を追い出したとは言え、通常の『影移動』持ちだけだと、どうしても商隊の近くに姿を現す必要がある。
その為広い効果範囲の『影移動』持ちが市街に1人必要であった。

1人目の広い効果範囲の『影移動』持ちである人物の1人はヴァンディットである。
ただ、ヴァンディットは感知系スキルすら持っていないので護衛として眷属のブラッツと諜報部のにゃんこさんが傍に付いてくれている。

そして2人目の広い効果範囲の『影移動』持ちである人物が、元『救世』リーダーであり、アルバラスト領主のアルバである。

現在彼はヒュマノ聖王国内に4ヶ所存在する尖塔の中央部に位置する王城の一角に、潜んでいると言う。

何でも以前忍び込んだ時に半日程居てもバレずに隠れられた場所があるとの事で、そこを利用するらしい。
勿論警戒を怠る事は無く、救出完了までやり過ごすとの事だ。




ここから長くなるので一旦切ります。
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