ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
416 / 1,124
獣人国編~救出作戦~

この人に仕事を与えないで下さい。

しおりを挟む
『この人に仕事を与えないで下さい。』 


と言う立て看板の上に顎を乗せて休むノアは、何とも手持ち無沙汰な様子であった。

だが、ノアが休憩に入ってくれたお陰か、他の冒険者や騎士達も休憩を取る者がチラホラと出始めていた。

ノアから妙な圧を受けたハナに至っては、舌をでろりと垂らしつつ、水をガバガバと煽っていた。


「うーむ…我が家では"別の事をやってる時、それ即ち休憩"と教わってきたんだけどなぁ。」

「どんな家訓だよ、それ…」


 と、ノア家の家訓にツッコミを入れつつ横に座り込んだのはジョーであった。


「お疲れ様です、ジョーさん。」

「君程では無いがね。
いやはや…あの国との商売は毎度の事ながら疲れるよ…」

「そうなんですか?」

「あぁ。
基本的にウチら商人は信用が第一だから扱う商品に紛い物や、品質の悪い物なんかは入れない様にしているんだよ。」

「まぁそうですね。」

「だがあの国の者達は、何かしら難癖を付けて商品を何とか安く買い叩こうとしてくるんだ…
野菜果物なら傷を付ける、凹ませる、汚れてるとか。
あの国の者達全体的に酒が好きみたいなんだが、"瓶に傷がある"、"酒の質が悪い"、"色味がおかしい"等々言いたい放題だよ。 」

「うへぇ…」


普段ニコニコ顔のジョーが話の最中、終始うんざり顔なのがヒュマノ聖王国での商いの面倒臭さを物語っていた。


「まぁ良いさ。
そっちに気を散らしてくれたお陰で私の仲間の仕事がやり易かったからね。」

にっこり…


先程までうんざり顔だったジョーが妖しく嗤う。


「…一体何やってたんですか?」

「今は詳しく話せないけど、取り敢えず"調査"をね。」


何故だろう、ジョーは笑ってはいるのだが、深入りしない方が良い気がする"嗤い方"なので、ノアは適当に「ふーん」「ほーん」と相槌を打ちつつ、この話をしれっと終わらせる事にした。






「よ、ノア君休んでるか?」

「見ての通りべふよ。」


立て看板に顎を乗せたノアが、デミにそう返事を返す。
漸く一息付ける状況になったデミは、執事のローザを連れ立ってやって来た。


スッ、ペコッ。

「お初にお目に掛かります。
私はこの度領主と成られましたデミ・スロア様の執事であり、前領主のコモン・スロア様の代わりに領地経営を営んでおりましたローザです。」

「この間は覗き見る様な真似をしてすいません、僕は新人冒険者の『ガシッ!』「ノア様ですよね!?」

「あ、はい。」


ローザが名乗ってきたので名乗り返そうとするも、ノアの手をガシリと掴んで食い気味に被せてきた。

デミもローザの豹変ぶりに、面食らっていた。


「あなたには感謝してもしきれません!
人間の良くない部分を煮詰めた様な性格の若様「おい。」を。
人に対して優しさや慈しみ等の感情を一切持たない糞みたいな「おい!」性格の若様を。
自身が常に注目の的、話の中心に居ないと気が済まない、自己中心的思考の若「おいローザ無視するなって!」


明らかにデミの制止の声が聞こえているハズなのだが、無視してノアに感謝(?)の述べるローザ。


「あら、若様いらっしゃったのですね。」

「居たじゃん!ローザを連れ立って来たんだから居るハズじゃん!
ってか本人目の前にして過去の汚点を羅列しないでくれ!」

「若様、まだ物語で言えば序章を話したに過ぎません。
ノア様に感謝を述べたいので暫し静観して頂きたいのですが…」

「あ、あぁ、分かったよ…」



「…とまぁ性格に難がありました若様を改心して頂き感謝の念に堪えません。
屋敷の者達を代表してお礼申し上げます。」

「別に狙って改心させようと思った訳じゃありませんよ。
僕に対して癪に触る言動をかなりされたので、僕としては八つ当たりをしただけです。
ねぇ、デミさん?」

「あ、あぁ…今でもたまにノア君に殺されまくった時の光景を思い出し、手が震えるよ…
それに夢でも見るんだ…
当時のイキった俺の目の前に現れ、抵抗虚しく一方的に蹂躙されてく光景が…」


デミはその時の事を思い出したのか、体を震わせていた。




「やだなー。
その言い方、まるで僕が化物みたいな言い方じゃないですか~。」


ノアはケラケラと笑い、「冗談上手いんだから、もー。」とでも言いたげな様子である。

このやり取りを見ていたデミと、話を途中から聞いていた『新鋭の翼』の面々は「いやいや…」とでも言いたげな表情をしていた。

それに対してノアは少し心外な気持ちであった。
何せ当時のノアは八つ当たり的な戦い方を取ってはいたが、何も精神的に壊してやろう、なんて気持ちは特に無かったからだ。

デミに対して"ほぼ一撃死"系の攻撃しか繰り出していなかったのもその気持ちの現れである。
ノアが本気で精神的に壊してやろうと思ったのなら"徹底して殺さない"で半死半生の責め苦を味わわせるつもりである。


「ですが内容はどうであれ、結果的には「デミさんにも言いましたが、納得はしているのですか?内容はどうであれ、僕は前領主のコモンさんを殺してるんですよ?」

「っ!?」


以前王都でもデミに言った事と同じ事を言う。

ローザの言う通り、内容はどうであれ結果的に良い作用を生んでいるなら素直に感謝に応じる事だろう。
今も時勢的にはスロア領にとって良い流れに向かいつつあるが、人の心と言うのはそう簡単に割り切れる物では無い。

ノアが発したこの言葉に、以前同じ事を言われたデミは未だ答えが見出だせていない様な表情である。


「…コモン様が王都で行った凶行が領内に伝わった時、私含め領内の者達皆寝耳に水で御座いました…
"何かの間違いだ"、"そんな大それた事に気付けない訳無い"と誰も信じていませんでした。
王都から調査の者達がやって来て、コモン様の凶行が明るみになって来ると、私達は漠然と"終わった"と感じました。
特段名産等無いこの領地で細々と、だが数千にも及ぶ領民の為に何とか経営してきた苦労が徒労に終わると…
事の大きさを考えれば、領の者と言うだけで今後後ろ指を差される事は必至。
領地剥奪所か忌み地として消滅も辞さなかった事でしょう。
ですがエルニストラ王曰く被害は御前試合の会場位で最小限に抑えられた事と、人的被害がデミ様と討伐した少年だけだった為、仕出かした事の大きさの割には軽い罰で済みました。
領地の残留と領民の行く末に多大な影響を及ぼして下さったノア様に、何を不満が御座いますでしょうか。」


ノアの目をジッと見詰めて言い放つローザ。
これを受けたノアは真意である、と受け取る事にした。


「そうですか…
『パンッ!』さて、小難しい話はここまでにしましょう。
デミさん、何か手伝う事ありませんか?」

「え?いや、待て、手伝うってまだ10分も休んで無いだろ!?」

「いーや、休みました。
2日分位は休ませて貰いましたのでもう大丈夫です。」

「止めろ!次休憩する者が10分しか休めなくなるから止めろぉっ!」


その後、何だかんだ理由を付けて子供達の一時的な住まいであるテント約1000基の設営をこなすノアなのであった。
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...