ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~救出作戦~

閑話:早朝のヒュマノ聖王国

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空が薄らと白んできた頃、ヒュマノ聖王国では突如発生した大嵐の被害調査に追われていた。


「家屋半壊240戸、全壊280戸…王城も所々破損が見られます。
特にツェドの居る部屋の損壊が著しく…」

「奴の居室等どうでも良い、奴にはあばら家がお似合いだ。
して、突発的に発生した大嵐の原因は何か掴めたか?」

「いえ…依然として不明です。」

「そうか…まぁ良い。
奴隷共を起こし、瓦礫の撤去作業をさせろ。
…全く、酒を嗜んでおったのに厄介事になりおって…」

ガボッ…

部下の者に指示を出したミクズと言う名の男は、グラスに残っていた酒を一気に煽る。
この男は、先日フリアダビアに【勇者】のミユキと共に派遣され、戦死(と言うか勝手に死んだ)バッガスとダグの後任である。

主に奴隷貿易の一端を担っている。

前任が行っていた奴隷管理に関する決め事もこのミクズに決定権があった。
主に食事の管理から寝床の確保、監視の配置等だ。

と言っても、前任が行っていた事を慣例的に行っているに過ぎず、ミクズが決めた事と言えば"奴隷の価格"位だろう。

10年程前に国名を改めてからと言うものの、年々落ち続ける奴隷の品質に、最盛期は引く手数多だった買い手も減少の一途を辿っていた。

ヒュマノ聖王国の一番の収入源は知っての通り"奴隷"だ。

だが、教育が施されておらず、衛生・健康状態も悪く、常時病気を患っている奴隷を誰が買うだろうか。

その為、ヒュマノ聖王国で販売されている奴隷の価格は、世間一般で販売されている奴隷の適正価格の5~10分の1以下である。

ミクズとしては"大安売り・大特価"を謳い新たな買い手の確保を目論んでいる所だが、世間的には、"もう形振り構っていられないんだな"と思われ、むしろ見向きもされなくなって来ているのが現状である。

それでも近々まで奴隷を大量に、且つ定期的に購入していた所があった。

それが"スロア領"であった。

スロア領の前領主だったコモン・スロアが"造魔核"製造の材料として、約3年間に渡って奴隷を大量購入しており、謂わばスロア領はヒュマノ聖王国にとって最大手の顧客とも言えた。

ヒュマノ聖王国としては"良い金ヅル"程度にしか思っていなかったのだが、最近その状況が一変した。


コモン・スロアが王都で"造魔核"を使用した。


と言う一報が入ったのであった。
この報に、ミクズは大いに焦る事になる。
コモンからは"造魔核"がどう言った代物かは聞いていた為、それが王都で使用されたとなれば遅かれ早かれ協力国として罰せられるのは確実。

ミクズは無関係を装う為、急ぎ遣いを出し、スロア領との長期奴隷購入契約を一方的に打ち切ったのであった。

関係書類を破棄し、安堵するミクズであったが、それが後にとんでもない事態に発展するとは思いも寄らなかった。






ダダダダ…バンッ!

「大変ですミクズ殿!」

「ぶふっ!?何だ突然駆け込んで来よって!」


先程指示を出した部下の者が血相を変えて飛び込んで来た。
ミクズはその音に驚き、口に含んでいた酒を吹き出した。


「悠長な事を言ってられませんぞミクズ殿!
奴隷が…尖塔に閉じ込めていた奴隷のガキ共が居りませぬ、もぬけの殻でございます!」

「はぁ?」






「おい、居たか!?」

「いえ!北の尖塔ももぬけの殻です!」

「西も、南もだ!何処にも居やしない!
4000は居たハズだ!何処行きやがった!?」

「兵士共は何をしておったのだ!?」

「尖塔は巡回ルートじゃねぇだろ!?
俺らのせいにすんじゃねぇ!」

「何だと!?」

「黙れ!取り敢えず落ち着け!
大人の奴隷を起こし、防壁の外を探って来い!」

「無茶言うな!周辺はウルフや角ウサギ(新人冒険者でも倒せるモンスター)が彷徨いてんだ、そんな危険な所歩けるかよ!」

「軟弱者めが!その程度のモンスターに臆するとは情けない!」

「じゃあアンタらが行きゃ良いだろ!中は俺らが探しといてやるからよ!」

「わ、私は現場で指示を出さねばならんからここを動けんのだ!」
「わ、私は城内の被害確認を…」
「俺もだ…」


ヒュマノ聖王国の者達は基本的に奴隷頼りの戦闘をしてきた為、各々の戦闘力は新人冒険者とどっこいどっこいと言った所である。

結局周辺の捜索は、ヒュマノの者(兵士等)3人に対して奴隷10人を1組として、計10組で行う事となった。

捜索対象範囲は海岸沿い、獣人国方面(『滅びの森』手前)、スロア領近辺となった。





1時間後。

~スロア領南端の門にて~

「おや?ヒュマノ聖王国の団体さんがここに来るとは珍しいですな。」

「どうしました?先日一方的に友好関係を破棄しにやって来た直後だと言うのに、何故この領に?」


スロア領と外界とを隔絶するかの様に立つ門の前には2人の門兵が佇んでいた。

そこにガッチガチの白銀鎧を着込んだヒュマノの者と兵士、10人程の奴隷を引き連れた団体が来ていた。


「ふ、ふん!何でも無いわ!
奴隷を引き連れて巡回しているだけだわい!」

「下賎の者が気安く話し掛けるでないわ!」


ヒュマノ聖王国の者達は何故かプライドが高い為、他国、他領の者に対して上から目線になる傾向がある。

その為"自国から奴隷4000人が逃げた"とは死んでも口に出したく無いのである。


「ふーん、そうですか。
では忠告だけ、夜中に大嵐があっただろ?
そのせいで森から驚いたモンスターや動物何かがあちこちに散らばっちまってるんだ。
だから遭遇率が格段に上がっているから精々気を付けるこったな。」

「「「な!何だと!?」」」

「ほれ、あそこ見てみ?
ウチん所もさっきまでウルフやら熊が出て来てて対処に追われてたんだ。」


門兵の1人が指差した方向を見ると、そこには16頭のウルフ、4頭の熊が地面に並べられていた。

すると


「ん?…こ、これは…!?」

「「あん?」」


1人のヒュマノの者が、並べられていた熊の死体を見て何かに気付いた様だ。

ビ、ビリリ…

「これは…奴隷の服ではないか!?」


熊の牙に引っ掛かっていた汚れたぼろ布を取ると、それを凝視していた。


「あぁ、その熊な、『滅びの森』方面から来た個体だな。
何だ、アンタら『滅びの森』に行ったのか?」

「い、いや!何でも無い!私共は用を思い出した故、これにて失礼するぞ!
先程の有益な情報、褒めてやるぞ。」

「アンタらに褒められても嬉しかねぇな…」


門兵の呟きに聞く耳を持たず、何故かヒュマノの集団は喜び勇んでその場を後にした。

残った門兵はと言うと


「…まさかこんな簡単な手に引っ掛かってくれるとは思わなかったぜ…」
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