ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

情報収集

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アークを『犬姫』のハナに引き渡したノアは、残りのパーティメンバーが居る冒険者ギルドへ向かっていた。

その道中偶然商人のジョーに出会したので、情報収集に励んでいた。


「イグレージャ・オシデンタル?
…それって西方にある大国の事だね。」

「そうなんですか?」

「そうなんですか?って…名前は知ってるのにどう言った国かは知らないのかい?」 

「えぇ、まぁ…何分昨日の夜知ったもので…」

「ふむ…まぁ良いか。
イグレージャ・オシデンタルは5年位前までは大国という程大きな国でも無かったんだが、3年前に【勇者】と【聖女】が国内から現れた事で、悪い意味で大国となってしまったんだ。」

「ん?悪い意味で?」


【勇者】アーク、【聖女】ミミシラの故郷であるイグレージャ・オシデンタルについてジョーに聞いてみた結果、以下の情報を得る事になった。


イグレージャ・オシデンタルは元々王都よりも小規模の街であった。
自然豊かで、街と言うよりも小規模の村が集まって出来た農村の様なモノだった。

農村の中央には小さな教会があり、【聖女】ミミシラはそこの神父の娘で、【勇者】アークは近隣に済む農家の息子だったと言う。

【聖女】判明直後、村外から支援を申し出る宗教団体とその信者等が多数到来。
それに合わせて教会→大聖堂へとレベルアップ。
【勇者】判明直後、村外から是非【勇者】パーティのメンバーにと、貴族達が多数訪れ、御機嫌取りの一環で街が徐々に肥大化。
それに合わせて"宜しくない連中"も集まり出す。

比較的信者の活動自体はまともで、【聖女】として旅立つのには十分な力量を得る事が出来た。

だが問題は【勇者】の方で、元は農家の息子であったアークや、その両親は貴族達と付き合い、持て囃されていく内に性格が変化。

"色々と"奔放になり過ぎてしまい、【勇者】として旅立つ際も一悶着あったとか。

何とか【勇者】パーティとして数名の冒険者(全て女性)を引き入れて旅立つも、奔放に振る舞ったアークは道中悉く手を出していったと言う。

尚、分かっているだけで、パーティは18回入れ替えがあったらしい。 

その際に出た悪評は街中に入れる事は阻止したものの、周辺地域では『色欲魔王アーク』としてかなり知れ渡っている。

更に輪を掛けて問題となったのが、【勇者】として旅立ったのにも関わらず、大した実績も上げず、半ば遊び呆けているのである。

【勇者】故に、大して訓練せずともある程度の実力を持つ為、訓練がてら冒険者ギルドで依頼を請けるのも月に最大3つ程度。

金に困っていれば何がなんでも依頼を請けるものだが、自国から定期的に支援金が届く為、そこまで頑張る必要も無いのである。

パーティに入った冒険者に悉く手を出し、悪評を垂れ流し、大した実績も上げない為、自国での士気高揚も糞も無い。
貴族達が支援として出していた金だが、3年も音沙汰無ければ流石に一考の余地が生まれると言うもの。

最近では【聖女】側の信者も徐々に抜けていく者もチラホラ出てきているとか。


「…と言った感じかな。」

「ふむ…」

(暦さんのメモに書いてあった事と大体内容は合致しているな…)

「そういえば最近、自国の方でとある冒険者の戦績を【勇者】パーティの戦績として流布してるって聞いたんですが…」

「あぁそうさ。
約1ヶ月程前から頭角を現した冒険者の実績を大々的に流していたよ。
しかも吟遊詩人を雇って歌にする徹底振りさ。」

「へ~。」

「…おいおい…流石に今ので察して欲しかったんだけどな~…」

「んえ?」


呆れ顔のジョーはノアを見やる。


「その冒険者と言うのはノア君、君だよ?」

「え?僕?
それじゃあ僕の戦績を国で流してるんですか?」

「あぁ。
君が今まで成し遂げた事は、大衆が食い付きそうな規模が大きい物ばかりだからねぇ。
まぁ少し調べれば分かる事だから、直ぐにバレて逆効果になっちゃったんだけどね。」

「みたいですねぇ。」

「…にしても、何でまたそんな事を…
まぁ、さっき色々と騒がしかったから、もしかしなくても厄介事かな?」

「お察しの通りです…」


期間としてはまだ2ヶ月程であるが、既に何度も大事に巻き込まれているノアを割と間近で見ているジョーは、ノアが既に次の厄介事に巻き込まれているの察知している様であった。

その後、色々と情報を得たノアはジョーと別れて冒険者ギルドへと向かう事にした。






ガチャ…

「失礼しまーす。」

「おぅ来たか【鬼神】の。
お前さんが手加減してくれたお陰か、操られていた冒険者達は全員無事だ。
だが、操られていた反動か全員疲労状態に陥っとるよ。」

「あれま。」


冒険者ギルドに入って早々ギルド長のガラパゴがカウンターから声を掛けてきた。
他の受付嬢等は、操られていた冒険者達の介抱をしていた。


「あの【勇者】の処遇はどうするつもりで?」

「他の地域でも色々と問題を起こしてたみたいだし、多額の罰金を支払わせた上で本国に連絡を取って送還して貰うかね。」

「なる程。
…それでそちらの3人は?」


ノアはカウンター内の一画に座る【勇者】パーティのメンバー、ミミシラとヴォルフスティ、アックスレイを見やる。


「そこの【聖女】は一旦置いとくとして、【紅武士】のアックスレイと【死陣操糸】のヴォルフスティは、2ヶ月程前に【勇者】パーティの一員として加入した様だ。」

「ほ~。」



【紅武士】…炎属性の魔法に長けた侍職。

【死陣操糸】…十指に嵌めた指輪から魔力の糸を出し、攻防一体の戦闘を得意とする。



「彼女らも度々【勇者】の被害を受けていたらしく、内容が内容なだけに周りに助けを言えていなかった様だ。」

「つくづく糞なんだな、アイツ…」


ノアはアークが行っていた事を聞き、嘆息しつつ2人に同情の眼差しを送る。


「それじゃあ何でミミシラさん…でしたっけ?
あなたは操られていなかったんですか?」

「あ、わ、私は【聖女】なので精神力が通常より高いので、不完全ながら掛かる事はあれど、完全に操られる事はありませんでした。」

「ふーむ…そう言う事か…」


ノアは顎に手を当てて思案する。

 そんな中、3人はまじまじとノアを見詰めていた。


「…何か?」

「あ、いえ…」
「その、何と言いますか…」
「私達より年下だったのですね…
その、ずっと仮面を着けていましたので…」

「あ、しまった。
…まぁこの際もう良いか…」


ノアはアークと会ってきた段階から『ブレイカー』の仮面を外しており、今の今までその存在すら忘れていた。


「まぁ見ての通り僕はあなた達より年下で、今年冒険者になったノアと言います。」

「えぇ…それなのにあの強さだったの…」
「殺気も凄かったからてっきり上級冒険者かと…」
「私も…アークの精神干渉が一切通じて無かったので上級冒険者かそれに匹敵する方かと思ってました…うむむ…」


3人それぞれが驚きの反応を見せる中、【聖女】ミミシラが何やら思い詰めた表情をする。


「どうしました?」

「あ、あの…御迷惑をお掛けしてしまった上でこんなお願いをするのはどうかと思うかもしれませんが、お願い事を聞いて頂けませんでしょうか…?」
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