ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

スバルテーノ(下っ端)

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『『『『『ズズズズ…』』』』』


ノアが赤黒いオーラを立ち昇らせると、眼は瞬時に赤黒く染まり、オーラを集束させて形成した4本腕が肩甲骨の辺りから生えてきた。

更に赤黒いオーラによって各所に空いた傷口が塞がり、出血を留める事に。


『これで少しは動き易くなったし、折れた腕もカバー出来るだろう。
…が、そんなに長くは持たねぇな。』

(『…それで?
"破壊された場合、所有者含め今まで生み出した創造体全てを別時空へと飛ばす"とあったが、勿論壊す方向でいくんだよな?』)

『勿論。
だが、触れた瞬間に所有者認定を食らっちまうから荒鬼神でもぶん投げて壊すとするよ。』

(『ならさっさとやっちまおうぜ。
これ以上あの人型"(スバルテーノ)"に増えられちゃ敵わねぇからな。』)



スバルテーノ…"魔界転送装置『地獄門(ポルタオ・ド・インフェルノ)』"より出現した人型生物。

4本腕で眼は無く、臭いと気配のみで対象を探し出す。
牙と爪の強度が尋常では無く、人間界の武具では殆ど太刀打ち出来ない。

非常に好戦的で残忍。繁殖力も強く、生命力も強い。首を撥ね無い限り安心は出来ないだろう。

ちなみに"スバルテーノ"とは魔界の言葉で"下っ端"と言う意味で、人間界で言う"ゴブリン"的ポジションの存在である。



『…あれが"下っ端"と知ったら皆驚くだろうなぁ。』

(『違ぇねぇ。』)


などと、鬼神とスバルテーノについて話をしていたノアだが、頭では別の事を考えていた。


~神々の恩恵の説明から~

第5段階…恩恵・追加恩恵全てに対して無制限使用可能。
更に追加の恩恵として『時空流離』が使用可能。"任意の時空に"移動する事が出来る為、実質的に不老不死となり、【神】と同様の能力を得る事になる。』


(…"任意の時空に"…か…)

(『……。』)


ノアがポツリと呟いた言葉に、鬼神は敢えて反応しなかった。

代わりに


(『ほら主。ボサッとしてる暇無ぇだろ?』)

(…うん、ゴメン。)


ずっと共に生きてきた鬼神は、主であるノアが何を考えているか聞かずとも既に分かっている。

だが状況が状況なだけに、そこには触れずに優先すべき事を促した。

何せ



『『『『『『『ガァアアアッ!』』』』』』』


前方から手当たり次第の人型改め"スバルテーノ(下っ端)"が迫って来ていたからである。


『『『『『『『ギャギギャッ!』』』』』』』

ドガガガガガッ!


直後、スバルテーノ(下っ端)の塊が突っ込んできて土煙が立ち、辺りは騒然となった。
だが土煙が少し晴れると、その場にノアの姿は無かったのであった。



~ヴァンディットの影の中~


ストッ!

『ヴァンディットさん、ちょっと通らせて貰いますね。』

「は、はい。」

「「「……っ。」」」


スバルテーノ(下っ端)が飛び掛かってきた時に出来た影を介し、ヴァンディットの影の中に入ったノアはスタスタと歩き、別の影を目指す。

赤黒いオーラを纏い、6本腕状態となってる時は無意識に殺気が漏れてる為か、この姿を見慣れているはずのヴァンディットすら声が吃り、この姿を初めて見るハナ、ハウンド、アークは絶句していた。


ダンッ!


そんな4人を尻目に、ノアは少し歩いた所で立ち止まり、跳躍した。





ズッ…

ガゴッ!!『オギャッ!?』


とあるスバルテーノ(下っ端)の足下の影から飛び出したノアは、その勢いのまま顎を殴り付けて吹き飛ばす。

その目の前には『地獄門』が滞空し、直下に神々の恩恵(ベネフィシアル)が落ちていた。


(…さっきもこうやってれば、骨折らなくて済んだよね…)

(『…最短で獲得するつもりだったから仕方無かったと言う事で…まぁ今後に活かそうや。』)


いつもながらの猪突猛進っぷりを反省しつつも足下に落ちている神々の恩恵(ベネフィシアル)に手を伸ばす。


『『『『『『『ゴォオオオッ!』』』』』』』


ノアの背後からは幾体ものスバルテーノ(下っ端)が迫る。




チャリ…

『"加速(アセレラッサオ)"。』

ボッ!


落ちていた神々の恩恵(ベネフィシアル)を手に取り、早速恩恵を使用。

ノアは赤黒い閃光と化し、スバルテーノ(下っ端)の集団に迫る。


『『『『ジャキンッ!』』』』

ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッ!!


4本の腕に荒鬼神、カランビットナイフを装備したノアが文字通り荒れ狂う鬼神の如き暴風と化して暴れまわる。

元々高速で移動可能なノアが"加速(アセレラッサオ)"を使用した事で、神速の攻撃が可能になり、秒間10を越えるスバルテーノ(下っ端)の首が宙を舞い、胴体が十字に両断されていく。


「「「「「「「「「……」」」」」」」」」

「ははは…ノア君凄いや…」


ラインハードのお陰で数を減らしていたとは言え、まだ300体以上残っていたが、凄まじい速度で殲滅されていくスバルテーノ(下っ端)に、後方で防御陣形を取っていた時雨や足軽兵達は絶句し、ラインハードは苦笑いを起こしていた。

外でこれなのだ、影の中ではもっと騒がしくなってる事だろうが、この場では割愛させて貰う。

そしてものの40秒程で




『『ザクッ!』』

『…ふぅ…取り敢えずこんなモノかな。』ピッピッ。


地面に荒鬼神を突き刺し、手に付いた返り血を払うノア。
その足下には、300を越える物言わぬスバルテーノ(下っ端)の亡骸が転がっていた。


(『凄まじい性能だな、この神々の恩恵(ベネフィシアル)とやらは。
【ソロ】の影響が出ないか心配だったが阻害する事無く恩恵を受けちまったしな。』)

『うん…』


鬼神に返答するノアだが、神々の恩恵(ベネフィシアル)を見詰めるノアの反応は薄い。


『…ねぇ、もしこの神々の恩恵(ベネフィシアル)で本当に時空を越えられるのなら、僕が病気になる前に、もしくは人生をやり直せたり出来るのかな…?』

(『説明通りなら可能なんじゃないか?
どしたい、過去に戻りたいのか?』)

『…本音を言えばね。
正直、あの時が今までで1番キツかったし、今も影響は残ってる。
それに僕『『『『『ビキンッ!』』』』』


ノアが話してる最中であろうと関係無く、『地獄門』の周囲に時空の割れ目が発生。

5回目の出現の合図である。


『…ったく、うかうか話も出来やしない。』

ヒュッ。


そう言ってノアは持っていた神々の恩恵(ベネフィシアル)を宙へと放る。


〝あなたの手から神々の恩恵(ベネフィシアル)が離れた事で権限を失いました。〟


権限を失った事を報せるアナウンスがノアの脳内に響く。


キンッ!


ノアは放った神々の恩恵(ベネフィシアル)目掛けて神速の一振りを放ち、両断した。


『戻って人生をやり直したい気持ちはあるけど、今までの出会い全てを天秤に掛けたら、例え短い命と言えどもやっぱ今のままが良いかな。』

(『ふ…そう言うと思ったよ。』)
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