ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.

文字の大きさ
558 / 1,124
獣人国編~【勇者】アーク・ダンジョン『時の迷宮』~

【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】

しおりを挟む
ミシッ…

「ほいじゃあ坊、覚悟はええか?(バド)」

「うっ…えぇ、お願いします…」

「んじゃあ、ちんまい嬢ちゃん、ちゃんと坊を抑えとけよぅ?
んで、吸血鬼の嬢ちゃんは骨がピッタリ嵌まったら教えちょくれな。(バド)」

「はい。(ラインハード)」
「はい。(ヴァンディット)」

「むん!(バド)」

ミシミシミシッ!

「っぐぁあああうっ…『ミシッ…ミシミシ…』ふっ…ぐぅ…」


グリードによって村に連れて来られたノアは、早速治療に入ろうとしていたのだが、ヴァンディットの見立てでは、右腕の骨が折れ、しかもズレていたのだとか。

骨がズレた状態で治療した場合、後に支障が出たり、再び折れ易くなってしまうらしい。

なので元の位置に戻した上で治療を行うのだが、通常は麻酔か睡眠系の魔法を掛けるかのどちらかを選ぶ。

だが、現在森の奥では、ノアの力の根源でもある鬼神が戦闘を繰り広げている為、眠る訳にはいかない、とのノアの意見を受け、覚醒状態での荒療治となった訳である。

そこでノアの健康状態を常日頃見ているヴァンディットと、機兵製作の為人体の構造等に造詣の深いラインハード、【技士】でありながら医療関係も齧っているドワーフのバドが名乗りを上げた。

と言ってもやる事は至極単純で、一行の中でノアの次に力があるラインハードがノアを羽交い締めにし、バドが折れた腕を引っ張り、ヴァンディットが骨を元の位置に誘うのであった。

だがこのやり方はご想像通り、滅茶苦茶痛いのである。


ミシッ…グチッ…

「は、填まりました!もう大丈夫です!(ヴァンディット)」

「よぅ耐えたのぅ、坊。
普通じゃったら意識飛んどったぞ。(バド)」

「…っ、はぁっ、意識飛んだ方が…マシだったかも…<激痛耐性>持ってても痛いもんは痛い…」

「あ、あ、ノア君動かないで、まだ肩に木が刺さったままだよ…!(クロラ)」

「あ、ごめんなさい…」


痛みを我慢する為、身を捩ったり前屈みになったりしていると、優しくその行動を制してくる手が伸びる。

骨を元の位置に戻しただけで、それ以外は全く手を付けていない為、木が肩に刺さった傷口から痛々しく血が噴き出していた。

クロラは当初、数分でボロボロになって村に戻ってきたノアに対してボロボロ涙を流して説教していたが、直ぐに気持ちを切り替えて治療の為に動き始めた。

そんなクロラに対し、ノアはまだ少しおっかなびっくりであった。





ドォン…ズズン…ア″ア″ア″…


と、ノア達から少し離れた場所に居るハクアとユカリは、遠くから聞こえる轟音と呻き声を聞きつつ、疑問をポーラ達に投げ掛けていた。


「あ、あのさ…ノア君はここに居るけど、それだと奥で戦ってるのは誰なのかな…?(ハクア)」

「うーん…説明が難しいですけど、少年の″中の人″、だったり″力の根源″だったり…うーん…(ポーラ)」

「「″中の人″?(ハクア、ユカリ)」」


と、2人の頭が更に混乱した所で森の奥で異変が発生した。


〔ゴォオオオオオオオッ!〕


「「え!?」」
「な、何じゃこの声は!?」
「「新手か!?」」
「それと何この光…まるで太陽の様…」


轟音の様な鳴き声と共に、森の奥から目映い光が立ち昇っていた。


「団長!奥から高濃度の魔力の反応を感知!
何かが出現したと言うよりか、召喚された模様!(騎士1)」

「先遣隊を向かわせ、状況を確認しましょう!(騎士2)」

「う、うん、そうで「待った。」

「「「「え?(騎士団一行)」」」」


森の奥で発生した異変に、直ぐ様行動を開始しようとした騎士達は、ノアの制止する声を受け、足を止めた。


「安心して下さい。これは恐らく…」







~森の奥~

『…こりゃまた凄ぇモンが出て来たなぁ…』


刻印から光が消えた荒鬼神ノ化身を手にした鬼神が上空を見詰めている。
そこには太陽の様に輝く直径20メルはあろう火球が宙に浮いていた。


ズズズ…ボワァッ!

ボッ!ボフッ!


その火球から溶けた鉄の様に光輝く鱗を持った龍の顔が姿を現し、肩口から炎を噴き上げ、まるで翼の様な形を取っていた。


ズズズ…


続いて龍鱗を纏った腕や足が姿を現すが、造りは完全に龍その物である。
鋭利な爪、どっしりとした足、強固な外殻、そのどれもが光輝き、思わず目が眩みそうであった。


ズロン…シュルルッ!


体高5メルを越す体躯の龍神だが、尾はその倍位長い。
火球から垂れてきた溶鉱の様な尻尾が地面を擦っただけで地面が赤熱していた。


『『ズシュゥウウウッ!』』ズンッ!ズンッ!


高温による光を放ちながら【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】が地面に降り立つと、瞬間的に蒸気が立ち上ったが直ぐに赤熱化してグズグズに溶け始めた。


〔ゴォオ…汝が召喚主か…?〕ボッ!ボフッ!

『いや、召喚主はこの先の村で治療中で、俺は代理だ。不服か?』

ボフッ!〔いや、初めての顔合わせ故会ってみたいと思ったまで…また何れ相見えた時の楽しみに取っておこう。〕ボフフッ!


【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】が言葉を発するだけで口の端々から炎が噴き上がる。
まるで鍛冶場の様だ。


ボワッ!〔おっと済まぬ、私を召喚したと言う事は倒すべき相手が居るのだったな…
して、その相手は何処に居られるのかな…?〕ボファッ!

『あー…悪い、アンタの足下で既に燃えているヤツだ。』

〔え?あぁ…〕ボッ!


鬼神と【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】が話していた直ぐ横では、既にボルボレートは火達磨と化しており、声にならない声を上げて苦しんでいた。


…ア″…ゥア″ア″…ア″…  ボァアアアアッ!

〔…あの、コレですか…?
申し訳ありませんが、貴方でも倒すのは容易では…?〕ボフフッ!

『まぁな、だがこの剣が出来てからお前さんを召喚するのが初だったからな。
言ってしまえば、性能チェックだ。』

ブワッフォッ!〔なる程。
であれば、私の焼却能力を遺憾無く発揮してこの者を周辺地域諸とも消し飛ばして『ゴスッ。』『待て待て、遺憾無く発揮すんな、コイツだけ屠ってくれりゃ良い。』


妙にやる気になった様子の【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】の足を荒鬼神ノ化身で小突いて制止する鬼神。

小突かれた【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】は、足を擦りながら理由を尋ねる事にした。


『良いか?主は自分の両腕の骨をぶち壊してまでこの先にある村を守ったんだ。
お前さんの焼却能力がどの程度あるか知らんが、これ以上ここら辺を燃やすのは止めて貰おうか。』


こうやって2人(?)で話してる間にも【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】の発する熱で周囲が灼熱地獄と化していた。

幸い更地となっていた為、延焼していく心配は無いだろうが、時間の問題である。


〔なる程、私の主様は随分お優しい方なのですな。〕

『昔病気だった時のトラウマで、人が傷付いてる姿を見るのを異様に恐れてるんだ。
自分が傷付く事は何も思わないのが悩みの種だがな。』

〔分かりました。
私は本来広域殲滅型ですが、今回は小規模に止めておきましょう。〕ボワッ!

『宜しく頼むわ。
それと気になってたんだが、今の今まで眼を瞑っているのは何か訳があるのか?』


実は【龍神邪火(リュウジンジャッカ)】が火球から出て来てから今の今までずーっと眼を瞑ったままなのである。


〔私は対象を直視してしまうと消し飛ばしてしまいますので、こうやって話す際は眼を瞑らせて頂いています。
あ、でも御心配無く、ちゃーんと貴方様の姿は見えておりますぞ。〕ボッ!

『そ、そうか…』
しおりを挟む
感想 1,255

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...