ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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獣人国編~中級冒険者試験~

試合開始

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「に、兄さん!
あ、あの子、あの子が″【鬼神】のノア″らしいよ!」

「我ら種族の最上位存在の名を冠する新人冒険者が居るとは聞いてたが彼だったか…
確かに先程受付で彼を見た時何とも言えない気配を感じたが…
セルト、さっき彼と話をしていただろう?
何か感じなかったか?」

「まぁ、感じたよ…
君達の最上位存在かどうかは分からないが、″加護″とかの類いとは全く違う感覚…
何と言うか…彼の中に何か″居る″よ…」


試合場の側にある控え席に座る鬼人の兄妹と【神官】セルトの3人組パーティ。
彼らは大陸の南にある村の出身で、最近になって獣人国方面に足を伸ばしてきた為、北方のフリアダビアは愚か、ノアの事は全く知らないでいた。

獣人国方面に足を伸ばした理由の1つが、″【鬼神】の二つ名を持つ新人冒険者が居る″、と言う情報を聞き付けてやって来たのだ。

と言うのも、鬼人族にとって【鬼神】と言うのは神様の様な存在なので、例え二つ名であっても大した事無い者がその名を得ている事が非常に腹立たしいのであるとか。

そんな2人に引っ張られる形で付いてきた【神官】セルトの元に″神託″が降りた。

内容は″真なる者との邂逅″であったと言う。

それに心踊った鬼人兄妹だったが″何処で″と言うのが分からないので、一先ず足を伸ばした2つ目の理由である中級冒険者試験を受けに来たらしい。


「それじゃあ彼が【鬼神】の名を冠するに値する者かどうか見定めてやろう。」

「ちょ、変な気起こさないでよ?
兄さんただでさえ喧嘩っ早いんだから…」

「ガーウの言う通り、妙な気を起こさないでねオウガ。」

「わーってる、っての。
要はアイツが【鬼神】の名を冠するに値する奴だったら『ズズズ…』何の文…句も…っ!?」

「ひっ!?(ガーウ)」

「う、うわわわ…(セルト)」


見定める、と腕を組んで前を向いていた鬼人のオウガだったが、試合場の方から放たれた殺気混じりの威圧感に、同じパーティメンバーのガーウ、セルトと共に一気に縮こまってしまった。


「「「「………っ!?」」」」


セルトがチラリと隣を見ると、オウガと似た心持ちだった『四星の守人』の4人も、試合場を凝視したまま固まっていた。









「君と試合をするにあたり、試合場には結界が張られ、使用される武器や防具には″破壊不可″が付与される。
対戦者である我らと君含めて、でごわすがな。」

「それ故、存分に力を振るって良いでござる。
君からは何かあるでござるかな?」

「いえ、特に何も。」

「そうでごわすか。」『『ガチンッ!』』

「では直ぐにでも始めるでござる。」『ブゥンッ!』


ノアの言葉を聞くなりゴワスは拳同士を打ち付け、ゴザルは何も無かった手に刀を出現させた。


『ブンッ!ブゥンッ!』


するとゴワスには変化は見られなかったが、ゴザルの体に次々と武者鎧の各部位が装着されていった。


「その姿になるのはフリアダビア防衛の時以来でゴワスな!」

「あぁ。やはり身が『ズズズ…』引き締まる想い…だ…」


ゴワスは武者鎧を完装し終わったのとほぼ同時に、対面から殺気混じりの威圧感を受けて前へ向き直る。

そこには眼を赤黒く染め、赤黒いオーラを立ち昇らせたノアが仁王立ちしていた。


『準備が出来た様ですね。
さ、″死合″を始めましょうか。』

「「お、おぅ…」」


ノアは″試合″と言ったのだが、威圧を受けたゴワスとゴザルには″死合″と聞こえ、思わずたじろいでしまった。


「ミ、ミゼラ(職員の名前)、始めるでござる。」

「は、はい…」


ノアの姿を見た審判役のミゼラも思わず身構えてしまったが、漸く試合が開始される事に。


ギシリ…

チキ…

『……。』

「「「「「「「「「……。」」」」」」」」」


ゴワスは体勢を低くして身構え、ゴザルは刀を前方に構えて動きを止める。
赤黒いオーラを纏ったノアは何も言わず、2人の事を睨み付けていた。

観客席の者達は誰1人言葉を発さず、静かに見守っていた。






「は、始めっ!」

「ごわぁああああすっ!」ベリィッ!


開始早々、地面に指を突っ込んだゴワスは、試合場の石畳をひっぺ返した。


「でぁああああああっ!」ボッ!


その後垂直になった石畳に手を付き、ノアに向けて押し放った。


パガァッ!

「参るっ!」ドンッ!


飛来した石畳を、その場から動く事無く、左拳で叩き割った瞬間、刀を手にしたゴザルが駆け出した。


『『『ズルッ…』』』

『『『ヒュバッ!』』』


ノアの後方に飛散した瓦礫の影から音も無く真っ黒い3体の武者鎧が姿を現し、背後から猛然と斬り掛かる。


ガガッ!ガチンッ!

『ふぁんふぇんはっはら!(残念だったな!)』

(初見でこれを!?しかも一太刀は歯で受け止めやがった!?
…だがそれでこそ、でござる!)


斬り掛かってきた武者鎧の三太刀を、ノアは両手と歯で受け止め、そのままゴザルにぶん投げる。


『ぺっ!』ブンッ!ボッ!

「くっ…!?(しまった、視界を塞がれた…)」

「<影装>でごわす!」ボシュゥウッ!


ゴザルに追随する様にゴワスが並び、<影装>とゴワスが叫ぶと、ぶん投げられた武者鎧3体が霧散し、ゴワスの体に影を纏い、鎧と化す。


「でかしたゴワス!(<縮地>発動!)」ドゥッ!

「<影装>完装!加勢するでごわす!(<縮地>発動)」ゴンッ!


ゴザルは地を這うかの様に体勢を低くしたまま<縮地>を発動し、ノアの右足から左鎖骨を斬り抜くつもりで斬撃を放つ。

ゴワスも<影装>の装着を終えつつ<縮地>を発動。急速接近を図りつつ右拳を固め、ノアの左顔面目掛けて殴り掛かる。




ぐんっ!ヒョイッ。

「え?」
「ぬ?」


殴り掛かったハズのゴワスの視界からはノアが消え、それだけでなく全身に妙な浮遊感を得た。

ゴザルは、ノアの右足を斬り落とすつもりで斬り掛かったハズなのに、刀は空を斬り、そのまま宙を舞う。


『小手調べは済みましたか?』

「「!?」」


2人は宙を舞いつつ声のした方を向くと、既に拳を振り被った体勢のノアがそこに立っていた。


『ゴワスさん、先ずはあなたからだ。』

ガヂョッ!「ウブォアッ!?」

ドガガガガッ!

ズザザッ!「…っ、ゴワス!」


肘から先が見えなくなる程の速度で振り抜いたノアの拳は、ゴワスの腹部を直撃。
彼の纏う<影装>が粉砕し、防ぎきれなかったダメージがモロにゴワスを貫いた。

試合場に″破壊不可″が付与されていなければ、ゴワスの腹に風穴が空いていた事だろう。


「うぶっ!?ごぶっ!ぐぁあ…」

「おい!大丈夫でござるか!?」

『意気込みの割に手始めに遠距離攻撃を仕掛けてくるからおかしいと思ったんですよ。』

「「…!」」

『遠距離、近距離、奇襲…
どれが有効なのか調べてたみたいですが、如何でしたか?
恐らくさっきの連携攻撃も、特攻に見せ掛けて罠かカウンターを仕掛けてたのではありませんか?』

(くっ…ゴワスが仕掛けていた<影鬼>を見切ったでござるか…?)



<影鬼>…発動から3秒以内に対象に触れる事が出来れば、対象の影を介してその場に縫い付けるスキル。
類似スキルに<影縫い>があるが、対象に触れる分、効果はこちらの方が上。


「ぶふっ…み、見抜いていたでごわすか…?」

『いや。
妙に特攻気味だったのと、防御を取らせたそうな攻め方だったので、受けるでも攻めるでも無く″流す″事にしました。
都合良く2人とも″流し易かった″のでね。』


ノアが発動したのは通常の<受け流し>では無く、<受け流し・体術>である。

ゴワスとゴザルの両名は突進力を乗せた攻撃に打って出て来たので、その力の方向を操作して流したのであった。
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