ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

敢えて逃がす

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~<気配感知>中の脳内~ 


ピコンッ!『『ピコッ!』』ピココンッ!ピコンッ!

(おっと、思ったよりも数が多いぞ。
っていうか村の中からもこっちに来てるな。)

(『もしかしたら村のどっかに巣穴か地下通路でも掘ってンだろうな。』)


地面に転がしたカッパラット達に手早くトドメを刺したノアは周囲を睨め回す。

何故ならノアを中心として周囲にカッパラットの反応が多数接近。
そして数こそ分からないが、村のあちこちからも同様の反応があったのだった。


「周りの方!『ギュルッ!』『ヂュァッ!』
村の中からもカッパラットの反応があります!
『ヒュンッ!』近くの建物に避難するか、クリストフ…キノコの周りに集まって下さい!『ギィイイッ!』
クリストフ、少しの間頼んだぞ?」 

「合点です。(クリストフ)」


ノアによるカッパラット駆除を見学していた者達は、報告を受けるとその場に緊張が走る。
農業従事者や宿場のおばちゃん、新人冒険者らは直ぐにクリストフの周りに集まっていった。


「『迷わせ胞子』!(クリストフ)」フワァッ!

(『お、姿が見えなくなったぞ。』)


クリストフが両手を上げて何やら唱えると、傘の裏からキラキラと胞子が舞う。

すると途端にその場に居た皆の姿が見えなくなった。
と言うか、見ようとすると目が滑る様な感覚を覚えた。



『迷わせ胞子』…クリストフによる認識阻害効果のある胞子。
効果範囲は半径3メルと狭いが、範囲内に居れば余程の事が無い限り認識されない。



相変わらず何でもありなクリストフにより村の人達が襲われる心配は無くなった、かに見えたが


「ああ、ちょ…わわ…(ミダレ)」

「うん?」


『迷わせ胞子』の効果範囲が3メルと狭かった為か、時折ミダレの肩や腰が見え隠れしていた。

これではやって来たカッパラットに目を付けられ、隠れている村の人にまで危害に遭ってしまうと感じたノアは


「ミダレさん、こっち来て。」

「え?(ミダレ)」

「そのままだと危ないからこっち来て。」

「え、でもノア君の邪魔にな『グイッ!』「来いって。」…はひ…(ミダレ)」


迫るカッパラットが間近に迫っていたので、少し強引に手を引っ張って自分の真後ろに来させる。

何故かミダレは頬を少し赤らめて素直にノアの背中にピッタリとくっついた。


ヒュオンッ!ヒュンッ!

「身を屈めて俺の後ろにピッタリと付いてろ。
絶対に守ってやるからよ。」

「はひ…(ミダレ)」


ノアはアイテムボックスからガントンファーを取り出して両手に装備。
その直後に全方位からやって迫って来たカッパラットが到達したのだった。


ヂィイイイッ!『ドッ!』ガンッ!
(飛び掛かってきたカッパラットの口内にガントンファーを突っ込んで発射。)

ズムンッ!ガガンッ!ガンッ!
(足に噛み付こうとしてきたカッパラットを踏み付けて3発発射。)

ゴッ!ヂィッ!ドゴッ!ガンッ!
(飛び掛かってきたカッパラットの腹を殴り付けつつ地面に叩き付け、発射。)

ガチン!ガギン!ガヂッ!『『『ドゴンッ!』』』
(ガントンファーに3匹噛み付いてきたので、そのまま持ち上げて地面に叩き付け。)

「我慢して。『ギュッ。』」
「…ふぁい…(ミダレ)」

ガカカッ!ガガッ!ガンッ!ガンッ!
(2匹が引っ掻き攻撃を仕掛けてきたので、ミダレを抱き寄せつつ片手で攻撃をいなし、2匹の顔面に発射。)

『『クルッ。』』ガガンッ!ゴッ!ガッ!
(ガントンファーの長い柄の部分に持ち替え、ハンマーの様にして次々に叩き付ける。)


等々、全方位からやって来るカッパラットを次々に迎撃、返り討ちにしていく。
そうして30体程が屠られていった頃だった。


ヂ!ヂヂィッ!『『『『ザザザザッ!』』』』

「ん?」


一際大きな鳴き声が上がったかと思うと、カッパラットが一斉に反転して村の外に向かって走り出したのであった。


「撤退だな。
ならば…『スチャ…『ぬとっ…』』」キリリ…


逃げていくカッパラットを視認したノアは、ガントンファーを仕舞いつつ再び弓を取り出す。

そして先程作成した竹筒に差し込んでいた矢を取り出して番え始めた。
その矢には鏃が付いておらず、代わりに″誘惑香が染み込んだ獣脂″が塗られていた。


パシュンッ!

ドチュッ!フギィイッ!?ンヂィイイイッ!


体にたっぷりと″誘惑香が染み込んだ獣脂″が付着したカッパラットは、何やら奇声を上げつつも元気になってそのまま走り去ってしまったのだった。


「…流石ミダレさんの分泌物だ…」
「や、やぁん、あっちの分泌物って言わんといて…サキュバス特有のやんて…」


一応ノアとしては意図があっての行動だが、この時はこの行動の意味を誰も分かっていなかった。


「よし、次は…『ザフッ!』『パシュンッ!』」 

 
次にノアは、磨り潰すととんでもなく臭くなる″ハナマガリ″を入れた竹筒に差し込んでいた矢を番えて同じく逃げていくカッパラットへと射る。

そして最後に


シュリンッ!ヒュオンッ!……パキィンッ!ヂィッ!   

「よし、これで完了だ。」


雑貨店で購入した″ガラス石手裏剣″を取り出して逃げていくカッパラットにも同様に投擲した。
中々に距離が離れていたので、<集中>と<投擲術>を発動したお陰で外さずに済んだ。

見事命中した″ガラス石手裏剣″は即座に砕け、カッパラットの体表を切り刻んで出血を起こしたのだった。



ガラス石手裏剣…衝撃で砕けるガラス石で作られ、殺傷力よりも出血を起こさせる事を重視した手裏剣。



「怪我は無いですかミダレさん?」
「あ…ぅん、大丈夫やよ、ノア君がしっかり守ってくれてたから…(ミダレ)」


戦闘の間近に居たミダレだが、怪我が無くて良かった。
だが気が抜けたからか少し放心している様子だったので、後で休んだ方が良いだろう。

周りからカッパラットの気配が無くなったからか、クリストフも『迷わせ胞子』の放出を止めて隠れていた者達が姿を現した。

だが全員地面の方を呆然と見詰めて固まっていた。

無理も無い事だろう。
何せ、ノアの周囲には50匹近くのカッパラットの死骸が転がっていたのだ。

しかも当の本人は息も切らさずに余裕の表情であった。





ズ…ズリリ…

「よいさ、ほらさ…」
「おーい、こっちにもあったぞ!ロープくれ、ロープ!」
「肉屋は一杯だそうです!」
「じゃあ手空いてる男衆を呼んできな、半分は川に持っていって肉を冷やそう。」
「あいよ!」

「あの…運ぶのは僕が…」
「カッパラットをあれだけ狩ってくれた人をこれ以上働かせられないさ。良いから休んでなって。」


倒したカッパラットは、村の皆や新人冒険者等が肉屋や保管倉庫に運び、食肉と皮素材にするらしい。

ネズミを食用肉に?と思うかもしれないが、カッパラットは以外にもキレイ好きで中々にグルメらしく、臭みも少なく、変な菌を持っていないらしい。

言われてみれば収穫間近のスイカを選んで掻っ払っていく辺り、確かに舌は肥えている様だ。


「しっかしあれだけの数潜んでたんだね…
今回も″ザラット″の手を借りなきゃならないかと思ってたから助かったよ。」

「ん?″ザラット″?この村の人ですか?」

「いや、この辺りを転々としてて、依頼を片付けてくれる良い人なんだけど、ちょっと″変わり者″でね…
…って、噂をすれば何とやらだ、どっかから情報を仕入れて来たみたいだ。
畑の奥に立ってる″ボサボサ頭の男″が居るだろう?
あれが今しがた話に出ていた″ザラット″だよ。」


宿場のおばちゃんが指差した方を見てみると、腰にロングソードを差した男性がキョロキョロと辺りを見回していたのだった。
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