ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

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取り敢えず南へ編

聖霊銀(ミスリル)完成

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~工房内~


ガィンッ!ガィンッ!ゴィンッ!

「と、融けた銀を叩いてる…?鉛や炭火は使わないので…?」

「それは普通の銀の精錬法じゃろ?
霊銀はまるっきり違うど!(ロイ)」

「まだ全然集まっとらんが、″火の精霊″と共に霊銀を叩き、不純物を取り除いて聖霊銀(ミスリル)のインゴットを造るんじゃ!(ルド)」

「見た目と名称に″銀″が付いとるが、全くの別物と思った方がええど!
これに関しては常識が通じんからな!(バド)」


通常銀を精錬する際は鉛と一緒に融かして合金を作り、灰を敷いて加熱して銀だけ取り出す方法なんかが取られるが、ドワーフ達が行っているのはまるっ切り違う方法であった。

その光景を見守っている職人達は、自身の常識が通じない為、ただただ呆然と見守っている事しか出来なかった。(ちなみにラインハードは爛々と目を輝かせて見続けていた。)


『ねぇ!だんだん冷えて固まってきたけど、もう加熱しなくて良いの?』

「加熱はせんで良いが、剣に魔力は流し続けといてくれ!
まぁだ″火の精霊″が来とらん!
来とらん内に火を絶やしたら来なくなっちまうからな!(ロイ)」


大体500℃位にまで下がった霊銀を叩き続けるドワーフ達は、まだかまだかと外を見やっていた。




キラキラキラ…

「おわっ!?外から火の粉が入ってきた!?」
「何だ?火事か!?」
「その割に外は騒がしくねぇぞ!?」
「あ、あれ?この火の粉風も無ぇのに動いてるぜ?」

「おぅおぅおぅ!そこな者共窓から離れぃ!それが″火の精霊″じゃ!(バド)」

「「「「「「えっ!?これが!?」」」」」」


窓際に立っていた職人の所にキラキラと光の粒が舞っていた。

火の無い所に何とやらとある様に、火の気の無い所に火の粉が舞っていた為、流石に驚いた様だ。

するとそれを見たドワーフ達が口を揃えて″それが火の精霊だ″と言うので、余計に驚く事となった。

何せ見た目は火の粉そのものなのだから。


『『『キラキラキラキラ…』』』

『…″火の精霊″…だっけ…?剣の周りに物凄く集まってきたけど…?』

「浄化によって自身が過ごし易い環境になり、純粋な魔力で生み出された熱に誘われて来よったんじゃ!
これだけ集まったら聖霊銀(ミスリル)作りには十分じゃ。もう止めて良いぞ!(ロイ)」


工房内に入ってきた火の粉=″火の精霊″は、その後ノアが白熱状態にしている荒鬼神ノ化身の周りに浮遊。

ロイの指示で魔力を停止させて熱を引かせると、″火の精霊″はドワーフ達が叩いている霊銀の方へと向かう。

それに合わせて各々がハンマーを振るって″火の精霊″と共に霊銀を叩くと、明らかに変化があった。


『『『キュォオンッ!』』』『『『シュパァアッ!』』』

『うぉっ!?』

「「「「「おおおおっ!?」」」」」


先程まで鈍い金属音だったものが甲高く、澄み切った音に変わり、一打毎に霊銀から光の輪が出現し、周囲に伝播していく。


『『『キュォオンッ!』』』

「どうじゃ?明らかに変化があろう?
″火の精霊″と共に打ち込むと音色と光が発生し、周囲に<浄化>と同様の効果を与えるんじゃ。(バド)」

『『『キュォオンッ!』』』

「ここに『インビジブルクリスタルパウダー』っつー素材を適量加え、聖霊銀(ミスリル)に仕上げていくんじゃ。(ルド)」

『『『キュォオンッ!』』』

「適量っつーが、霊銀の量に対しその都度変わるから儂らの目分量じゃがな!(ロイ)」

『『『キュォオンッ!』』』

「じゃがそんなに難しい事でもあらん!
誤差0.05ガラム以内の許容差に抑えれば自然と形が整ってくるしの。
まぁそれよりズレりゃ黒ずんでしもうて<浄化>を十数発当てなアカン様になるがの。(バド)」

『うへぇ…』


ドワーフ達は各々アイテムボックス内に手を突っ込み、『インビジブルクリスタルパウダー』と言う素材を軽く掴み、指を僅かに動かして量を調整。
霊銀に振り掛けた後再び叩いていた。

すると徐々に霊銀はインゴットの形状に変化。
確かにドワーフ達が言う様に形を目安にすれば街の職人でも再現可能かと思われたが、量の調整は一発勝負らしく、失敗すると手痛い代償を支払わなくてはならないらしい。


『『『キュィイインッ!』』』『『『シュパァアアアアッ!』』』


「っし、出来たぞ!
『聖霊銀(ミスリル)インゴット』の完成じゃ。
ここまで漕ぎ着ければ後は難しい事はあらん、装飾にするなり調度品にするなり好きに出来っぞ。(バド)」


一際甲高く澄んだ音が響き渡り、更に範囲のある光の輪が発生した後ドワーフ達は手を止めた。

特段成形した訳では無いのによく見るインゴットの形状へと変化した。


「なぁ坊。
この聖霊銀(ミスリル)はこの街の教会の連中に使ってええんじゃよな?(ロイ)」

『あぁ良いよ、元々そのつもりだし。
それよりもまだ″火の精霊″舞ってるんだけどどうするの?』

「その精霊は他所から来たモンじゃけぇ、時間が経てばまた他所へと飛んで行くぞ。(ルド)」

『あ、じゃあこのままで良いんだね。』


聖霊銀(ミスリル)インゴット完成後、工房内の天井にはまだ″火の精霊″が止まっていたが、少し時間が経った後再び窓から外へと出ていった。

だがこの時″火の精霊″とは″別の精霊″が紛れ込んでいたのだが、誰一人気付いていなかったのだった。





「そう言えば″精霊″って何なの?
幽霊みたく視える訳でも無く妖精みたいに実体がある訳でも無いし…」←戻った。

「掻い摘まんで言うと″自然界のエネルギーが具現化した存在″って所だな。(ロイ)」

「″火・水・土・風・光・闇…″色々居るが、それぞれの属性を模した姿で現れる。
金属精錬する際は″火の精霊″を必要とし、そこから魔剣を造り出す際は″各属性の精霊″が必要となる。(バド)」

「あれ?僕の荒鬼神ノ化身を造った時はそんなの無かったけど…?」

「坊の場合鬼神と龍の力使っとるんやぞ?
それぞれが相当のパワー持っとるから″精霊″に頼らずとも作製出来たんじゃ。(ルド)」



精霊…自然界に存在するエネルギーが具現化した姿。【精霊◯◯】と名の付く適正にはもう少し具体的な姿で視える。

多少の自我があり、稀に精霊の好みで行動を共にする事がある。
その場合呼称は″使い魔″、″妖魔″等に変化する。



「それよりも坊、どうじゃ気分の方は?(バド)」

「え?何の事?」

「お主、何処と無く気が滅入ってる様に見えたからな。
何か作業させてたら気が紛れると思ったんじゃが。(ルド)」

「分かる?」

「「分かる。」」

「こちとら何年生きてる思っとんじゃい。
珍しく心身磨り減らしとる様じゃったからな。(バド)」

「まぁ…色々あったからねぇ…」


見た目では平静を装っているノアだが、ドワーフ達は精神的な面での変化に気付いていたらしい。


「お前さん、獣人国を出てから一切休んどらんのちゃうか?
どうせいつも通り予定は無いんじゃろ?
ならば今日1日休んだらええぞ。(ロイ)」

「丁度そこに坊の連れが居る様じゃしの。(バド)」


そう言ってバドが指差した方を見ると、そこには工房内を覗き込むヴァンディット、ミダレ、ミリアの姿があった。
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