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第17話
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「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。走らなかったら動いて大丈夫だって先生にも言われたし…」
そうは言われても無理をしていそうで心配だ。
…心配?そうか、これが心配というものなのか。
もやもやするような、心を闇にひきこまれてしまいそうになる、この感覚が。
《歩く度に足を引きずるのを大丈夫とはいわない》
「う……」
主は苦い顔をしつつも、体育とかいう授業も大人しく休んでいた。
《退屈か?》
「うん。だけど、ダンスのふりつけで飛んだりはねたりするから休まないといけなくて…。ずっと弓道の授業ならいいのに」
《弓もできるのか》
「やってみたくてやってるんだ。お姉ちゃんみたいに上手にはできないけど、なんとか的には当たるようになったよ」
《…そうか》
授業を受けている間、基本的には遠くから見ていることにしているので内容までは知らなかった。
「白露は怪我してない?」
《昨夜も言ったがなんともない》
「そっか。よかった…」
他の人間たちがなにやらばたばたと動いている間、主は隅で拭き掃除をしていた。
「手伝ってもらって大丈夫だったのか?」
「はい。体を動かしておきたくて…」
「折原は真面目だな。けど、おかげで助かったよ。この前大会があって掃除できてなくて困ってたんだ」
この男からは特に嫌な気配を感じない。
主もそれが分かっているのか、にこやかに会話していた。
怪我した足をかばいながら懸命にもっぷという道具を動かす彼女は、少しだけ元気がないように見える。
《…誰だ》
「え?」
「穂乃ちゃん、ここの振り付けをちょっと変えてみたんだけど、手の動きを確認してもらってもいい?」
「あ、うん!」
一瞬近くで感じた殺気を追おうとしたが、気配を辿る前に逃げられてしまった。
「ねえ、白露。さっき何かあった?」
《特に何も》
「そっか…」
《…友人と食べなくていいのか?》
「うん。ふたりとも部活で忙しいから、今日は一緒に食べられないんだ」
《そうか》
屋上でおにぎりを食しながらふと中庭に視線を向けると、なにやら言い争っている人間の姿が目に入る。
「…白露」
《どうかしたか》
「あれを止めてって言ったら行ってくれる?」
主は大声がする方を指さし、そんなことを尋ねてきた。
《少し様子を見てくる》
「お願い。私は誰か人を呼んでくる」
あの人間たちは近づいたところで俺の気配さえ感じないだろう。
図体がでかい男数人が男女ふたりを囲んでいる。
「こんな奴より俺の方がいいって!な?」
「や、やめてください…」
「彼女に触るな」
「ああん?てめてやんのか?」
拳がふりあげられたのを視認した瞬間、咄嗟にその腕を押さえてしまった。
「な、なんだ?腕が…」
「監査部です!な、何があったかこれから調べますから全員動かないでください」
糸使いと主がやってきて、あっという間に男たちが別室へと連行されていく。
…本当にらしくないことをした。
そうは言われても無理をしていそうで心配だ。
…心配?そうか、これが心配というものなのか。
もやもやするような、心を闇にひきこまれてしまいそうになる、この感覚が。
《歩く度に足を引きずるのを大丈夫とはいわない》
「う……」
主は苦い顔をしつつも、体育とかいう授業も大人しく休んでいた。
《退屈か?》
「うん。だけど、ダンスのふりつけで飛んだりはねたりするから休まないといけなくて…。ずっと弓道の授業ならいいのに」
《弓もできるのか》
「やってみたくてやってるんだ。お姉ちゃんみたいに上手にはできないけど、なんとか的には当たるようになったよ」
《…そうか》
授業を受けている間、基本的には遠くから見ていることにしているので内容までは知らなかった。
「白露は怪我してない?」
《昨夜も言ったがなんともない》
「そっか。よかった…」
他の人間たちがなにやらばたばたと動いている間、主は隅で拭き掃除をしていた。
「手伝ってもらって大丈夫だったのか?」
「はい。体を動かしておきたくて…」
「折原は真面目だな。けど、おかげで助かったよ。この前大会があって掃除できてなくて困ってたんだ」
この男からは特に嫌な気配を感じない。
主もそれが分かっているのか、にこやかに会話していた。
怪我した足をかばいながら懸命にもっぷという道具を動かす彼女は、少しだけ元気がないように見える。
《…誰だ》
「え?」
「穂乃ちゃん、ここの振り付けをちょっと変えてみたんだけど、手の動きを確認してもらってもいい?」
「あ、うん!」
一瞬近くで感じた殺気を追おうとしたが、気配を辿る前に逃げられてしまった。
「ねえ、白露。さっき何かあった?」
《特に何も》
「そっか…」
《…友人と食べなくていいのか?》
「うん。ふたりとも部活で忙しいから、今日は一緒に食べられないんだ」
《そうか》
屋上でおにぎりを食しながらふと中庭に視線を向けると、なにやら言い争っている人間の姿が目に入る。
「…白露」
《どうかしたか》
「あれを止めてって言ったら行ってくれる?」
主は大声がする方を指さし、そんなことを尋ねてきた。
《少し様子を見てくる》
「お願い。私は誰か人を呼んでくる」
あの人間たちは近づいたところで俺の気配さえ感じないだろう。
図体がでかい男数人が男女ふたりを囲んでいる。
「こんな奴より俺の方がいいって!な?」
「や、やめてください…」
「彼女に触るな」
「ああん?てめてやんのか?」
拳がふりあげられたのを視認した瞬間、咄嗟にその腕を押さえてしまった。
「な、なんだ?腕が…」
「監査部です!な、何があったかこれから調べますから全員動かないでください」
糸使いと主がやってきて、あっという間に男たちが別室へと連行されていく。
…本当にらしくないことをした。
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