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第22話
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道中、手を繋いだ主から問われる。
「白露はやりたいこととかないの?」
《特には》
「そうなんだ…」
俺の意思など長らく尋ねられたことがない。
やりたいことと言われてもよく分からなかった。
…特にこういった初めての場所では。
「サバトって本当に色々な人が出入りしてるんだね」
周囲は妖だらけで、何を話しているか分からない相手も多い。
夜紅は何か事情があるのか、主を俺に託してどこかへ行ってしまった。
「疲れてない?」
《…おまえはどうなんだ》
「私は大丈夫。ただ、お店が沢山あるなって思っただけ」
周囲を見渡し、主はある店へと駆け出す。
「射的しよう。白露も一緒に」
《一体何を、》
「すみません。これでふたり分足りますか?」
主が見せたのは紐のような何か。
店主は若干驚いていたが、銃を2丁渡してくれた。
「もしかして、ちょっと足りなかったのかな…」
《逆だと思うぞ》
「え、そうなの?」
《おそらくだか、あれは電気鯰のひげだ。妙薬を作る材料になると云われているが、そう簡単に手に入るものではない》
「え……」
夜紅は主に金銭代わりになるからとしか説明していなかったため、どういったものなのか分かっていないのだろう。
《やるのではなかったのか?》
「あ、うん…そうだね」
狙いを定める主の目は真剣で、油断すればこちらまで惹きこまれそうだった。
「あ、当たった!」
《…そうか》
早々に全て外した俺はただ見ているだけの存在だった。
「白露、銃は苦手なんだね」
《狙いが定まらない。刀を使っていいならどうにかできるが》
「そ、それは流石に駄目だよ」
《本気でやるつもりはない》
「もう…」
そう言いつつちゃっかり全ての弾を命中させている主は、銃との相性がいいのだろう。
「あとは何か食べるものを買って、向こうで休憩しようか」
《了解した》
見たことがないものも多いが、なんとなく見覚えがあるものもある。
真っ赤に光る宝石のようなあれは、なんとなく懐かしい。
「…りんご飴買おう」
《りんご飴…》
【そういえば、今日は縁日でしたね。あそこで売っているものはりんご飴というそうです。
今は叶わなくても、いつか食べてみたい…なんて、願ってもいいでしょうか】
…そうか。昔そんな話をしたことがある。
「食べてみて」
《俺が?》
「うん。白露に食べてみてほしいんだ」
《…ではいただこう》
一口囓ると、甘い飴と林檎の食感がいい。
主の後をついていきながらあっという間に食べ終えてしまった。
「美味しかった?」
《悪くない味だった》
「そっか。喜んでもらえたならよかった。…あれ?あの人どうしたんだろう」
主が駆け寄った相手は、間違いなく危険人物。
「あの、もしかして具合が悪いとか──」
主を抱え、急いでその場を離れる。
背後からけたたましい嗤い声が響いた。
「白露はやりたいこととかないの?」
《特には》
「そうなんだ…」
俺の意思など長らく尋ねられたことがない。
やりたいことと言われてもよく分からなかった。
…特にこういった初めての場所では。
「サバトって本当に色々な人が出入りしてるんだね」
周囲は妖だらけで、何を話しているか分からない相手も多い。
夜紅は何か事情があるのか、主を俺に託してどこかへ行ってしまった。
「疲れてない?」
《…おまえはどうなんだ》
「私は大丈夫。ただ、お店が沢山あるなって思っただけ」
周囲を見渡し、主はある店へと駆け出す。
「射的しよう。白露も一緒に」
《一体何を、》
「すみません。これでふたり分足りますか?」
主が見せたのは紐のような何か。
店主は若干驚いていたが、銃を2丁渡してくれた。
「もしかして、ちょっと足りなかったのかな…」
《逆だと思うぞ》
「え、そうなの?」
《おそらくだか、あれは電気鯰のひげだ。妙薬を作る材料になると云われているが、そう簡単に手に入るものではない》
「え……」
夜紅は主に金銭代わりになるからとしか説明していなかったため、どういったものなのか分かっていないのだろう。
《やるのではなかったのか?》
「あ、うん…そうだね」
狙いを定める主の目は真剣で、油断すればこちらまで惹きこまれそうだった。
「あ、当たった!」
《…そうか》
早々に全て外した俺はただ見ているだけの存在だった。
「白露、銃は苦手なんだね」
《狙いが定まらない。刀を使っていいならどうにかできるが》
「そ、それは流石に駄目だよ」
《本気でやるつもりはない》
「もう…」
そう言いつつちゃっかり全ての弾を命中させている主は、銃との相性がいいのだろう。
「あとは何か食べるものを買って、向こうで休憩しようか」
《了解した》
見たことがないものも多いが、なんとなく見覚えがあるものもある。
真っ赤に光る宝石のようなあれは、なんとなく懐かしい。
「…りんご飴買おう」
《りんご飴…》
【そういえば、今日は縁日でしたね。あそこで売っているものはりんご飴というそうです。
今は叶わなくても、いつか食べてみたい…なんて、願ってもいいでしょうか】
…そうか。昔そんな話をしたことがある。
「食べてみて」
《俺が?》
「うん。白露に食べてみてほしいんだ」
《…ではいただこう》
一口囓ると、甘い飴と林檎の食感がいい。
主の後をついていきながらあっという間に食べ終えてしまった。
「美味しかった?」
《悪くない味だった》
「そっか。喜んでもらえたならよかった。…あれ?あの人どうしたんだろう」
主が駆け寄った相手は、間違いなく危険人物。
「あの、もしかして具合が悪いとか──」
主を抱え、急いでその場を離れる。
背後からけたたましい嗤い声が響いた。
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