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其の弐
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「すまない。ついてくると言って聞かなくてな…」
「なんで謝るんだ?」
「若干騒がしくなるから」
瞬が先生についてきたのは何か理由があってのことだろう。
心配だからなのか、一緒にいたかったからなのか。
どのみち、謝られるようなことはされていない。
「ならいいが…」
「詩乃ちゃん、今日は体調いいの?」
「悪くはないよ。先生のおかげだ」
「そうなんだ…よかった」
心配させてしまって申し訳ないと思いつつ、気になったことを話してみる。
「そういえば、最近内職に気合が入ってるって聞いたけど何かあるのか?」
「ひな君が言ってたの?」
「ああ」
流山瞬という人物は他界しているため、私や陽向名義でネットバンクを作り、そこに収入が入る仕組みを作っている。
「特に意味はないよ。時間があるだけ」
先生を気にしているのはなんとなく察したが、これ以上深入りしない方がいい気がした。
「そういえば、穂乃ちゃんの卵焼きってすごく美味しいね」
「かなり練習していたから、元から美味しかったものに磨きがかかっている。いつか抜かれないか心配になるくらい美味しいんだ」
「穂乃ちゃんのこと、本当に大好きだね」
「大事な妹だからな」
だからこそ言えないこともあるが、穂乃はそれでもいいと言ってついてきてくれる。
白露がいてくれるおかげで安全確保もしやすくなったし、寂しげな表情をすることも減った。
お弁当を食べながら、さり気なくふたりの会話に耳を傾ける。
「…あ、これ美味しい」
「白身魚のムニエルだ。弁当向きじゃなさそうだから夕飯しか出さないけどな」
「そっか。…このバジルソース、どこかで買ってきたの?」
「一応自家製」
「え、こんなものも作れるの!?」
ふたりで食事を摂るときはこんな話をしているのか…なんて呑気に聞いていると、瞬がはっとした表情でこちらを見る。
「どうした?」
「詩乃ちゃんに見られてると思ったら、ちょっと恥ずかしくなっちゃって…」
「気にせず続けてくれ」
「1回意識しちゃうと恥ずかしいよ…」
先生がくっと喉を鳴らし立ちあがる。
「悪いが少し仕事が残ってる。そのまま夕飯食べててくれ」
「分かった」
忙しそうな先生の背中に寂しそうな視線を向ける瞬にそっと耳打ちした。
「寂しいときは寂しいってちゃんと伝えないと、きっと先生は気づかないぞ」
「…態度に出てた?」
「少なくとも、今この瞬間はそう見えた」
瞬は箸を止め、目を閉じて両手を合わせる。
「ごちそうさまでした。…先生、ずっと忙しそうだから今は言えない。
でも、もうちょっと余裕ができたら言ってみようかな」
「それがいいかもしれないな」
「ありがとう。久しぶりに詩乃ちゃんとゆっくり話せて楽しかったよ」
若干寂しさが見え隠れしているものの、先程よりは少し元気そうだ。
そのことに安堵しつつ、穂乃お手製弁当を完食した。
「なんで謝るんだ?」
「若干騒がしくなるから」
瞬が先生についてきたのは何か理由があってのことだろう。
心配だからなのか、一緒にいたかったからなのか。
どのみち、謝られるようなことはされていない。
「ならいいが…」
「詩乃ちゃん、今日は体調いいの?」
「悪くはないよ。先生のおかげだ」
「そうなんだ…よかった」
心配させてしまって申し訳ないと思いつつ、気になったことを話してみる。
「そういえば、最近内職に気合が入ってるって聞いたけど何かあるのか?」
「ひな君が言ってたの?」
「ああ」
流山瞬という人物は他界しているため、私や陽向名義でネットバンクを作り、そこに収入が入る仕組みを作っている。
「特に意味はないよ。時間があるだけ」
先生を気にしているのはなんとなく察したが、これ以上深入りしない方がいい気がした。
「そういえば、穂乃ちゃんの卵焼きってすごく美味しいね」
「かなり練習していたから、元から美味しかったものに磨きがかかっている。いつか抜かれないか心配になるくらい美味しいんだ」
「穂乃ちゃんのこと、本当に大好きだね」
「大事な妹だからな」
だからこそ言えないこともあるが、穂乃はそれでもいいと言ってついてきてくれる。
白露がいてくれるおかげで安全確保もしやすくなったし、寂しげな表情をすることも減った。
お弁当を食べながら、さり気なくふたりの会話に耳を傾ける。
「…あ、これ美味しい」
「白身魚のムニエルだ。弁当向きじゃなさそうだから夕飯しか出さないけどな」
「そっか。…このバジルソース、どこかで買ってきたの?」
「一応自家製」
「え、こんなものも作れるの!?」
ふたりで食事を摂るときはこんな話をしているのか…なんて呑気に聞いていると、瞬がはっとした表情でこちらを見る。
「どうした?」
「詩乃ちゃんに見られてると思ったら、ちょっと恥ずかしくなっちゃって…」
「気にせず続けてくれ」
「1回意識しちゃうと恥ずかしいよ…」
先生がくっと喉を鳴らし立ちあがる。
「悪いが少し仕事が残ってる。そのまま夕飯食べててくれ」
「分かった」
忙しそうな先生の背中に寂しそうな視線を向ける瞬にそっと耳打ちした。
「寂しいときは寂しいってちゃんと伝えないと、きっと先生は気づかないぞ」
「…態度に出てた?」
「少なくとも、今この瞬間はそう見えた」
瞬は箸を止め、目を閉じて両手を合わせる。
「ごちそうさまでした。…先生、ずっと忙しそうだから今は言えない。
でも、もうちょっと余裕ができたら言ってみようかな」
「それがいいかもしれないな」
「ありがとう。久しぶりに詩乃ちゃんとゆっくり話せて楽しかったよ」
若干寂しさが見え隠れしているものの、先程よりは少し元気そうだ。
そのことに安堵しつつ、穂乃お手製弁当を完食した。
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