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解明されなかった(でも、まあいっか)
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※王太子シルヴェスター視点
「殿下、解析結果です。リュシア=フィオレッタ嬢の魔力は、属性:草木。分類:非攻撃性。特性:生命共鳴型。反応値……ゼロ」
「ゼロ、ですか」
「はい。正確には、無干渉。殿下の魔力に共鳴も反発もしない?あえて言えば、ふわっとすり抜けるような…」
「まるで、風が葉を撫でるような?」
「はい。まさに、です」
わずかに驚いた様子で報告を続ける魔道士の横で、私は机に置かれた一冊の記録簿をめくっていた。
ページの端には、これまで私が触れた者たちの名前と、発動した魔力の現象がずらりと並んでいる。
水、氷、火、風、雷、土、毒、音、幻……
名家の令嬢たちは皆、何かを暴走させていた。
それを見て、私はいつも思っていた。
——人に触れるって、こんなに怖いことだっただろうか?
だからこそ、リュシアとの接触は、衝撃だった。
何も起きなかった。
でも何もないわけじゃなかった。
彼女の手は、温かくて、柔らかくて、ちゃんとそこにあって。
その事実が、たまらなく嬉しかった。
「殿下?」
「いえ、続けてください」
「は、はい。魔力の強さそのものは中下位。ですが、あの無反応ぶりは統計的にも、例がありません」
「結論としては?」
「なぜ、殿下と接触しても暴走しなかったのか……」
魔道士は、言い淀んだ末に、ぺこりと頭を下げた。
「不明です」
部屋の中に、静かな沈黙が落ちた。
でも私は、それを意外に思わなかった。
むしろ——
(ああ、やっぱり)
という、妙な納得があった。
世界には、理屈では割り切れないものがある。
魔力も、心も、人の縁も。
数字にできないからこそ、そこに確かな何かがある気がした。
私は、そっと目を閉じた。
思い浮かぶのは、あの午後の陽だまりのなかで、カップを両手で包みながら、ふわりと笑っていた彼女の顔。
……あったかいですね。
たったそれだけの一言が、なぜあんなにも、嬉しかったのだろう。
「殿下、ご命令を。さらなる解析を継続いたしますか?」
魔道士が、慎重に問うてきた。
だが私は、そっと首を横に振った。
「いいえ。これ以上は、必要ありません」
「はっ……?」
「分からなくてもいいのです。分からないままでも、彼女がそばにいてくれるのなら、それでいい」
言って、自分でも驚くほど自然に笑えていた。
この体質を呪いだと呼んだ日もあった。
誰にも触れられず、愛する人も持てない——そう思っていたこともあった。
でも、今は違う。
たったひとりでも、触れて、笑って、手を握ってくれる人がいる。
それは、もう十分すぎるほどの奇跡だった。
「リュシア様には、何もしないことをしてください」
「何もしない?」
「余計な測定も、封印も、理論付けもいらない。どうか、今のままの彼女を守ってください」
「はっ、畏まりました」
魔道士が涙ぐみながら頭を下げたのを見て、私はまた、少しだけ笑ってしまった。
どうしてだろう。
理屈じゃないものを信じるのって、
こんなに気持ちが軽くなるんだな。
「殿下、解析結果です。リュシア=フィオレッタ嬢の魔力は、属性:草木。分類:非攻撃性。特性:生命共鳴型。反応値……ゼロ」
「ゼロ、ですか」
「はい。正確には、無干渉。殿下の魔力に共鳴も反発もしない?あえて言えば、ふわっとすり抜けるような…」
「まるで、風が葉を撫でるような?」
「はい。まさに、です」
わずかに驚いた様子で報告を続ける魔道士の横で、私は机に置かれた一冊の記録簿をめくっていた。
ページの端には、これまで私が触れた者たちの名前と、発動した魔力の現象がずらりと並んでいる。
水、氷、火、風、雷、土、毒、音、幻……
名家の令嬢たちは皆、何かを暴走させていた。
それを見て、私はいつも思っていた。
——人に触れるって、こんなに怖いことだっただろうか?
だからこそ、リュシアとの接触は、衝撃だった。
何も起きなかった。
でも何もないわけじゃなかった。
彼女の手は、温かくて、柔らかくて、ちゃんとそこにあって。
その事実が、たまらなく嬉しかった。
「殿下?」
「いえ、続けてください」
「は、はい。魔力の強さそのものは中下位。ですが、あの無反応ぶりは統計的にも、例がありません」
「結論としては?」
「なぜ、殿下と接触しても暴走しなかったのか……」
魔道士は、言い淀んだ末に、ぺこりと頭を下げた。
「不明です」
部屋の中に、静かな沈黙が落ちた。
でも私は、それを意外に思わなかった。
むしろ——
(ああ、やっぱり)
という、妙な納得があった。
世界には、理屈では割り切れないものがある。
魔力も、心も、人の縁も。
数字にできないからこそ、そこに確かな何かがある気がした。
私は、そっと目を閉じた。
思い浮かぶのは、あの午後の陽だまりのなかで、カップを両手で包みながら、ふわりと笑っていた彼女の顔。
……あったかいですね。
たったそれだけの一言が、なぜあんなにも、嬉しかったのだろう。
「殿下、ご命令を。さらなる解析を継続いたしますか?」
魔道士が、慎重に問うてきた。
だが私は、そっと首を横に振った。
「いいえ。これ以上は、必要ありません」
「はっ……?」
「分からなくてもいいのです。分からないままでも、彼女がそばにいてくれるのなら、それでいい」
言って、自分でも驚くほど自然に笑えていた。
この体質を呪いだと呼んだ日もあった。
誰にも触れられず、愛する人も持てない——そう思っていたこともあった。
でも、今は違う。
たったひとりでも、触れて、笑って、手を握ってくれる人がいる。
それは、もう十分すぎるほどの奇跡だった。
「リュシア様には、何もしないことをしてください」
「何もしない?」
「余計な測定も、封印も、理論付けもいらない。どうか、今のままの彼女を守ってください」
「はっ、畏まりました」
魔道士が涙ぐみながら頭を下げたのを見て、私はまた、少しだけ笑ってしまった。
どうしてだろう。
理屈じゃないものを信じるのって、
こんなに気持ちが軽くなるんだな。
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