1 / 2
ヒロインだけど出番なし☆
しおりを挟む
「やってらんねぇ」
ヒロインことアリエルは、シャンパングラスを傾けながら独りごちる。
私が乙女ゲームの世界に転生したのは、
ちょうど一年前のこと。
本来なら婚約破棄の場であるはずだが、目の前ではメインヒーローである第一王子と悪役令嬢のセシフィリーネの婚約式が行われている
周囲にはその他のヒーロー達。
皆、が笑顔で祝福している
それを末席から見る私はヒロインだ
ヒロインのはず。
前世の記憶がよみがえり、自分がこの世界のヒロインだと気づいた時、私は思わずガッツポーズをした。
やったー。人生大逆転!
だって、だって。
前世では地味OLで、残業三昧・飲み会不参加・社内恋愛ゼロの生活だった私が!
気づいたらチート美少女設定で異世界転生。
ヒロインで、しかも攻略対象が全員イケメン?
夢あるよねこれ!
シナリオ通り、男爵家の庶子だった私は実家から引き取られ、ウキウキしながら貴族院へ入学。
心のなかではもう、薔薇色の学園生活をフル想像してた。
王子様との運命の出会い、図書館での手が触れ合うイベント、雨の日の屋根下避難とか、王道イベント全部くるでしょ。
——だったのに。
現実は、甘くなかった。
というか、バグってた。
悪役令嬢のセシフィリーネも転生者だったのだ。
しかも彼女、ちっちゃい頃から前世知識をフル活用して、石鹸、化粧水、保存食、水道整備、薬草の量産、教育改革……などなど。
チートもいいところな活躍っぷり。
ゲームでいう「敵役」のはずが、
「国の恩人」ポジションを完全に確立していた。
しかも、公爵令嬢っていう最高クラスの家柄付き。
攻略対象たち?
もちろん全員デロデロです。
誰が見ても「あ、もう惚れてるわこれ」ってレベルでメロメロ。
で、私?
……即・撤退しました。
空気読む女子ですから。
ということで、貴族院では男爵令嬢らしく地味に生活。
マナー?きちんと学びました。
学業?真面目に取り組みました。
髪?控えめに結いましたし、装飾も質素に整えました。
つまり、平穏無事をモットーに一年間を過ごしました。
そりゃ攻略対象たちはイケメンでしたよ?
前世では王子推しだったし?
でも、彼らがセシフィリーネにしか目を向けてないの見て、私は悟った。
「無理ゲーだな」って。
近づいてもイベント起きないどころか、むしろ世界のバグ扱いされてゲームオーバーになりかねない。
前世が地味OLの私にとって、イケメンと話すとか、目を見るとか、もう無理無理無理。
ヒロインなだけあって顔は可愛いんだけどね。
卒業を控えたある日、私は一通の手紙を受け取った。
それは、ほとんど接点のなかった実の親からだった。
内容は、政略結婚の通達。
「卒業後は、42歳の子爵の後妻として嫁げ」
それだけ。あとは日取りと荷物の指示が数行書かれているだけで、そこに私への思いや感情は一切なかった。
いやいやいや
嫌ですよ。
推しのイケメンや、攻略対象イケメン達は諦めたけれど
私さ、ヒロインですよ!
顔面偏差値かなり高いですけど!?
何でオッサンの後妻やねん
しかも、そいつめっちゃ評判悪い奴ですやん。
-ってことで、私はこの国を出ることにした。
幸いなことに、隣国とはいま平和そのもの。
セシフィリーネ様のおかげで、インフラはバッチリ。
水道・道路・治安・貿易、全部整ってる。
しかも、隣国の王子も攻略対象のひとりだったから、あちら側の受け入れ態勢も完璧。
ほんと、セシ様には感謝しかない。
旅の途中で盗賊に襲われたり、聖獣と契約したり、S級冒険者に助けられたりなんて、そんな乙女ゲー的展開はもちろんゼロ。
むしろ、快適。安全。平穏そのもの。
ありがとう水道整備。ありがとう国交正常化。
私は、無事に隣国へと到着し、第二の人生をはじめることになった。
学生時代、真面目に淑女マナーを学んでいたから侍女でもいけるし、
前世の事務職スキルを活かして商家に勤めるのもアリ。
家もないし、過去の立場なんてどうでもいい。
ようやく、自分の人生を自分で選べる。
そう思ってた——のに。
……どうして隣国で7歳年下の第三王子の正妃になってんのかな、私。
ショタタタタッ
【完】
ヒロインことアリエルは、シャンパングラスを傾けながら独りごちる。
私が乙女ゲームの世界に転生したのは、
ちょうど一年前のこと。
本来なら婚約破棄の場であるはずだが、目の前ではメインヒーローである第一王子と悪役令嬢のセシフィリーネの婚約式が行われている
周囲にはその他のヒーロー達。
皆、が笑顔で祝福している
それを末席から見る私はヒロインだ
ヒロインのはず。
前世の記憶がよみがえり、自分がこの世界のヒロインだと気づいた時、私は思わずガッツポーズをした。
やったー。人生大逆転!
だって、だって。
前世では地味OLで、残業三昧・飲み会不参加・社内恋愛ゼロの生活だった私が!
気づいたらチート美少女設定で異世界転生。
ヒロインで、しかも攻略対象が全員イケメン?
夢あるよねこれ!
シナリオ通り、男爵家の庶子だった私は実家から引き取られ、ウキウキしながら貴族院へ入学。
心のなかではもう、薔薇色の学園生活をフル想像してた。
王子様との運命の出会い、図書館での手が触れ合うイベント、雨の日の屋根下避難とか、王道イベント全部くるでしょ。
——だったのに。
現実は、甘くなかった。
というか、バグってた。
悪役令嬢のセシフィリーネも転生者だったのだ。
しかも彼女、ちっちゃい頃から前世知識をフル活用して、石鹸、化粧水、保存食、水道整備、薬草の量産、教育改革……などなど。
チートもいいところな活躍っぷり。
ゲームでいう「敵役」のはずが、
「国の恩人」ポジションを完全に確立していた。
しかも、公爵令嬢っていう最高クラスの家柄付き。
攻略対象たち?
もちろん全員デロデロです。
誰が見ても「あ、もう惚れてるわこれ」ってレベルでメロメロ。
で、私?
……即・撤退しました。
空気読む女子ですから。
ということで、貴族院では男爵令嬢らしく地味に生活。
マナー?きちんと学びました。
学業?真面目に取り組みました。
髪?控えめに結いましたし、装飾も質素に整えました。
つまり、平穏無事をモットーに一年間を過ごしました。
そりゃ攻略対象たちはイケメンでしたよ?
前世では王子推しだったし?
でも、彼らがセシフィリーネにしか目を向けてないの見て、私は悟った。
「無理ゲーだな」って。
近づいてもイベント起きないどころか、むしろ世界のバグ扱いされてゲームオーバーになりかねない。
前世が地味OLの私にとって、イケメンと話すとか、目を見るとか、もう無理無理無理。
ヒロインなだけあって顔は可愛いんだけどね。
卒業を控えたある日、私は一通の手紙を受け取った。
それは、ほとんど接点のなかった実の親からだった。
内容は、政略結婚の通達。
「卒業後は、42歳の子爵の後妻として嫁げ」
それだけ。あとは日取りと荷物の指示が数行書かれているだけで、そこに私への思いや感情は一切なかった。
いやいやいや
嫌ですよ。
推しのイケメンや、攻略対象イケメン達は諦めたけれど
私さ、ヒロインですよ!
顔面偏差値かなり高いですけど!?
何でオッサンの後妻やねん
しかも、そいつめっちゃ評判悪い奴ですやん。
-ってことで、私はこの国を出ることにした。
幸いなことに、隣国とはいま平和そのもの。
セシフィリーネ様のおかげで、インフラはバッチリ。
水道・道路・治安・貿易、全部整ってる。
しかも、隣国の王子も攻略対象のひとりだったから、あちら側の受け入れ態勢も完璧。
ほんと、セシ様には感謝しかない。
旅の途中で盗賊に襲われたり、聖獣と契約したり、S級冒険者に助けられたりなんて、そんな乙女ゲー的展開はもちろんゼロ。
むしろ、快適。安全。平穏そのもの。
ありがとう水道整備。ありがとう国交正常化。
私は、無事に隣国へと到着し、第二の人生をはじめることになった。
学生時代、真面目に淑女マナーを学んでいたから侍女でもいけるし、
前世の事務職スキルを活かして商家に勤めるのもアリ。
家もないし、過去の立場なんてどうでもいい。
ようやく、自分の人生を自分で選べる。
そう思ってた——のに。
……どうして隣国で7歳年下の第三王子の正妃になってんのかな、私。
ショタタタタッ
【完】
492
あなたにおすすめの小説
モブの声がうるさい
ぴぴみ
恋愛
公爵令嬢ソフィアには、幼い頃より決まった婚約者がいる。
第一王子のリアムだ。
いつの頃からか、ソフィアは自身の感情を隠しがちになり、リアム王子は常に愛想笑い。
そんなとき、馬から落ちて、変な声が聞こえるようになってしまって…。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
本当に現実を生きていないのは?
朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。
だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。
だって、ここは現実だ。
※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。
婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ
松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。
エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。
「…………やらかしましたわね?」
◆
婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。
目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言――
「婚約破棄されに来ましたわ!」
この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。
これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる