余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

文字の大きさ
236 / 423
【聖者の薔薇園-開幕】

271.ぜうす

しおりを挟む
 
 雅様の話によると、ここは神界でその中でも中心部に位置する宮殿。天帝と呼ばれる神様の王様がいる場所なんだって。ひょえー…。
 神界は文字通り神様の世界。神様しか介入を許されない世界だけれど、今回は異例の許可が下りて僕を神界に入れることが出来たらしい。
 それらは全てリベラ様の図り事みたいだけれど…そこは本人に聞いてみるしかない。

 僕はどうやらマーテルの封印に巻き込まれたみたいで、予想通りマーテルと一緒に球体の中に封じられてしまったのだとか。それを迎えに来てくれたのがねむくんという訳。
 本当はリベラ様が直々に来るはずだったけれど、マーテルを封印したことによって力尽きてしまい、今は眠りについているらしい。
 邪神に堕ちた時みたいに力を奪われたわけじゃないから、ちゃんと徐々に回復するみたいだ。よかったよかった。

 それにしても…ここまで聞いてもまだまだ疑問がたくさん残る。
 流石に全てを一気に聞くことは出来ないので、一番理解しやすいリベラ様について聞いてみることにした。神界の仕組みとかを聞いても難しくて分からないだろうし…。


「リベラ様は神界から追放されたって言ってた。ここにいてもいいの?」


 僕の問いに雅様は困ったように微笑んだ。
 名の通りとっても優美な仕草をする人だ。表情も基本無表情だけれど、それ以外は穏やかで気品がある。


「お前とリベラの勇姿、マーテルの大罪を目にした神達が神界の対応に不信を抱き始めてな…上の連中も重い腰を上げざるを得なかったのだ」


 僕とリベラ様の決死の勇姿、マーテルの罪…神達は全て見ていたのに、それでも救ってはくれなかったのか。
 話を聞いて安堵するどころか更に神界への印象が下がっていってしまう。やっぱり僕は神界に見捨てられていたんじゃないか。
 リベラ様だって、神界に追放されて発揮出来る力が限られている中必死に頑張ってくれたのに。それすら神々の心には大して響かなかったというのだろうか。だと言うのにリベラ様がマーテルの封印に成功した途端、何も無かったみたいに動き出して…。


「お前の気持ちは理解出来る。問題視されていたマーテルが封印され、最強と謳われていたリベラが力を取り戻し復活した。それによって神々は責務を果たさなかった事実から目を逸らし、掌返しをしているのだからな」

「……」

「……かく言う我も、神々を説得し切れなかった罪がある。申し訳なかった」


 雅様はリベラ様の追放を支持したことは一度もなく、寧ろ反対派に回っていたらしい。けれどリベラ様の力を手にしたマーテルの影響力は凄まじく、結局は追放を止めることが出来なかった。
 そもそも邪神に堕ちた神の追放は神界での原則。それを持ちだされてしまえば、反対派は反論することが出来なかったのだ。

 だから雅様は悪くない。雅様が謝る必要なんてない。というか、リベラ様の代弁者でも何でもない僕に謝る必要なんて一切ないのに。
 それでも素直に頷けないのは一体どうしてなのだろう。


「……リベラさまに…僕じゃなくて、リベラ様に謝って」


 か細い声でそう紡ぐと、雅さまは一瞬驚いたように目を見開いて、やがて穏やかに微笑んで「そうであったな」と頷いた。




 * * *




 それからは人通りも多くなってきたので、雅さまの腕の中にぽすっと隠れるようにしてじっとしていた。

 強い視線を向けてくる全ての人が神様だと思うとがくがく震えてくる。改めて考えると、今の状況ってとっても珍しいどころじゃないのでは…。
 視線から逃れるように肩に顔を埋める僕を見下ろし何を思ったのか、雅様は不意に声を上げて何でもないように話を始めた。緊張を解そうとしてくれているのだろうか。


「そういえば、今向かっている場所について伝えておらんかったな」


 そういえば、と僕も首を傾げる。
 普通に雅様に抱っこされてここまで連れてこられたけれど、何処に行くのかを聞いていなかった。

 きょとんとしつつ行き先を伺うと、雅さまは「ふむ」と頷いてさらーっと答えた。


「天帝の元に向かっておるのだ。そこにリベラもおる」


 ほうほう、天帝のもとに…そこにリベラ様も……って、むむむ…?
 ふむ、とこくこく頷いていた頭が徐々にはてと傾く。やがてさーっと蒼白し、ばっと顔を上げて雅さまに縋るような視線を向けた。
 いまなんと…天帝…?神様の王様?その人に会いに行くって…?


「あ、あわ、あわわ…」

「む。如何した。そう緊張せずとも良い。ゼウス様は噂と異なりただの気の良いおじさんだ」

「ぜぜぜ、ぜうす!!」


 なんだか強そうな名前がでてきた。
 ぴゃーっとふわふわ髪が逆立ち、ネコみたいにみゃーっと伸びて丸まってしまう。なんたるこっちゃ、生きている間にぜうす様にお会いすることになるとは…。


「此度の事、ゼウス様も自らの過ちを深く反省なさっておるらしい。人の子のお前を神界で処理すべき事情に巻き込んだ罪の詫びがしたいと」

「はわっ、はわわっ」

「元は我々の不手際で失われた魂の寿命。ゼウス様が責任を持って、フェリアルの魂を修繕して下さることだろう」

「はわわ…はわ?」


 魂の修繕……?

 なんだかいま、とっても重要な事を聞いたような気が…。
 もう一度聞かせてくれーと頼もうとしたけれど、その前に雅様が発した「そろそろ着くぞ」という言葉にお口チャックしてしまった。もうすぐゼウス様に会うことになるなんて、こわい。

しおりを挟む
感想 1,721

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。