余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

文字の大きさ
252 / 423
【聖者の薔薇園-終幕】

287.もふもふと再会

しおりを挟む
 
 公爵邸の自室、ベッドの上でぐでーんとうつ伏せに寝転がる。
 拘束は免れたものの、扉や窓には厳重に鍵を掛けられ僕が外すことは不可能な施錠にされてしまった。つまりほとんど軟禁状態というわけだ。しょぼん。
 空から落っこちてきたのはつい数時間前のこと。ローズ達も仕事があるし、いつまでも詰所に溜まったままというのもアレということで公爵邸に帰ってきたのがつい数十分ほど前のことだ。

 お父様とお母様との再会を果たし、感極まって泣いてしまった二人を慰めるのは中々胸が締め付けられた。
 二年もの間息子が行方不明になっていたのだから仕方ないと言えばそれまでだけれど、兄様達のちょっぴりやばめな監禁作業に苦言を一つも呈さなかったことについてはかなりしょんぼりした。

 そして何処から情報を得たのか、既に僕が生きて帰ってきたことについては帝国中に知られているらしい。既に号外まで発行されたという話まで聞いて、改めてこの二年で自分の影響力が大きくなったんだなぁと何だか他人事みたいに考えてしまった。
 この分なら、僕についての情報が帝国の隅々にまで広がるまでそう時間は掛からないだろう。


「むぅ、ひま……」


 うつ伏せでしょぼぼん。部屋の中じゃ状況把握には限界があるし、何より暇すぎる。どうせなら散歩とかがしたいなぁなんて考えて、その時ふと思い出した。

 そういえば、シモンやグリード、ウサくんはどこに行ったのだろう。シモンなんかは僕が帰ってきたと知ったら真っ先に会いにきそうだけれど、一向に姿を現さない。
 グリードはシモンにくっ付いているから来ないのだとして、肝心のシモンの動きに納得がいかない。どうしてシモンは帰ってきてくれないのかな。

 ウサくんに関しては、正直姿を見せてくれない理由は十分思い浮かぶ。
 ウサくんはクマくんのことが大好きだったから、そんなクマくんを犠牲にしてしまった僕を恨んでいるのかもしれない。だから来てくれないのだろうと、何となく予想はつく。


「どうしよう……」


 どよんと起き上がって膝を抱える。
 たとえ嫌われていたとしても、ウサくんにしっかりごめんなさいをしたい。このまま終わらせたくない。ウサくんに重荷を背負わせない為にも、しっかり謝罪はしないと。
 でも怖い。何を言えばいいのだろう。こういう時、グリードがいればきっと場が和んで緊張が解れて、ウサくんを探す勇気が湧くのに。シモンがいてくれれば、きっと的確な助言をくれるのに……。


「ウサくん……」

「どうしたぴょん?」


 膝に頭を埋めてめそめそ呟いた直後。
 突然下の方から聞こえた声に、ぴたっと硬直してギギギッと顔を上げた。ベッドの縁にちょこんと手を置いて覗き込んでくるもふもふの長い耳、くりっとした同じ色の瞳。視界に映るそれを見て、硬直をゆっくり解きながらあわわっ……!と震え始めた。


「う、う、うっ、うさくん!?」


 目ん玉ぐるぐる。あたふたあわあわ。
 突如現れたもふもふウサくんに「ぴゃっ!」と飛び跳ねてしまった。

 久々の再会にも関わらず、ウサくんはいつもと特に変わらない様子でよっこらせとベッドにのし上がる。ぽてぽてと歩いて目の前まで来たかと思うと、膝の上にぽすっと倒れ込んだ。
 むぎゅーっと抱き着いてくる小さなもふもふ。少し震える長い耳を見て、そういえばウサくんは感情が表に出にくいのだったと思い出した。


「うさくん……」


 震える体をぎゅっと抱き締める。よしよしと背中を撫でると、たらんと垂れていた耳がぴんと嬉しそうに立った。


「うさくん、ごめんね……クマくんのこと、ごめんなさい……」

「む?クマがどうかしたぴょん?」

「……む?」


 ぐすぐすと瞳を潤ませて紡いだ言葉。久しぶりに再会した今、ウサくんへの贖罪を果たさなければと。そう思い語ったクマくんへの懺悔。それを聞いたウサくんの反応は、何だか思っていたのとかなり違った。
 きょとんとハテナを浮かべ、なんのこっちゃと首を傾げる姿。あれ、あれれ?と瞬きフリーズして数秒、ウサくんが不意にぴこーんと何やら閃いた様子を見せた。


「もしかしてフェリくん、知らなかったぴょん?クマのやつ普通に生きてるぴょん」

「……むぅ?」


 ぴしゃっと何度目かのフリーズ。
 思い出すのはぼわわっと燃やされ灰になったクマくんの姿。僕は確かに、クマくんがちりぢりに燃やされ灰になる瞬間をこの目で見た。流石にあそこから体を治すことなんて不可能のはず。
 まさかウサくん、僕を悲しませないために優しい嘘を……?そう思いうるうると瞳を揺らすと、ウサくんはまたもやハテナを浮かべてサラッと語った。


「あのクマ、今日も庭のお花踏んで使用人に怒られてたぴょん。ただでさえ体もデカくなったんだから今まで以上に注意しろって言ってるのに、ほんと学ばないやつだぴょん」


 うーむ、どうしよう……ただ僕を元気づけるためだけの嘘にしてはあまりにリアリティがありすぎる……。
 るんるん気分で歩いて花を無意識に踏んでしまい、庭師にコラッと怒られしょんぼりするクマくんの姿が容易に浮かぶ。でも、体が大きくなったというのはどういうことだろう?ぬいぐるみって成長するんだっけ。


「クマくん、ここにいるの?」

「普通にいるぴょん。さっき庭の隅っこでデブ猫と昼寝してたぴょん。相変わらず呑気なやつぴょん」


 ミアとお昼寝を……?
 ますますクマくん生存説が確かなものになる感覚。優しい嘘でないことを願って、ウサくんに恐る恐る尋ねてみる。


「ウサくん。クマくんをここに呼んでくれる?僕は出られないから……」

「了解ぴょん。ウサに任せるぴょん」


 ぽん、と胸を叩くウサくんがとっても心強い。
 お願いねと頷くとウサくんがぴょんとベッドから飛び降り、ぽてぽてと扉に歩き始める。ドアノブに手が届かないことを察して慌てて僕も扉へ向かい手を伸ばした瞬間、突然外側から勢いよく扉が開け放たれた。


「あばっ!」


 扉が顔面にクリーンヒット。ちーんと床に転がると、扉の向こう側から誰かが困惑気味に顔を覗かせた。



「あれ、今何かに当たって……って、は、え!?ふぇりっ、フェリアルさまぁ!?」


しおりを挟む
感想 1,721

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。