余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

文字の大きさ
268 / 423
【聖者の薔薇園-終幕】

303.皇帝からの手紙

しおりを挟む
 

「ひどい目にあったクマ……」

「研究材料として捕獲されなかっただけ良かったじゃないですか」

「先輩とはもう口きかないクマ。話しかけるなクマ」


 研究所の魔術師たちに追われ、レアと再会してウサくんを交えて楽しく遊び、研究個体のスカウトをするジェイさんの魔の手から逃れ……と濃すぎる一日を過ごしたクマくん。
 流石に疲労も限界に達したのか、部屋の隅でズーンと沈んでいた。そんなクマくんを励ますシモンだけれど、揶揄い過ぎたのが災いしたのか塩対応されてしまっていた。

 ごめんなさいと素直に土下座するシモンを見てようやく激おこが収まったのか、クマくんはやがてフンッと鼻を鳴らして「仕方ねーなクマ。許してやるクマ」と男前な発言をした。
 シモンをしっしと追い払い、同じく疲労困憊でぐーすか眠っているウサくんを抱えて寝転がるクマくん。どうやらお昼寝するらしい、もう夕方だけれど。
 それにしても、なんだか以前と眠る時の立場が逆転したみたいでちょっぴり驚いた。


「姫!シモン様!おかえりなさい!!」

「グリード、しーっ……!」


 バンッと勢いよく扉が開け放たれビクッと肩を揺らす。ウキウキで入ってきたのは、今日一日お留守番してシモンから指示された修行をしていたらしいグリードだ。
 慌ててしーっと言いながらちらりと振り返る。よかった、クマくんもウサくんもぐっすりで起きる気配はない。それだけ疲れたのねとほわほわ思いながら、二人にふわりと薄い毛布をかけてあげた。


「あれ、ぬい達寝てるんすか……?」


 すぐに状況を察したらしく、グリードが静かな声を発しながら入ってくる。
 頷く僕にそろりそろりと近寄ってきたグリードから、持っていたやけに豪奢な封をサッと手渡された。見覚えのない手紙の封筒だけれど、今まで見たものと比べると一番高級そうな雰囲気がある。


「ついさっき届いた手紙です。皇帝陛下からの……」

「こっ……!」


 皇帝陛下!?と飛び出そうな大声を何とか寸前で飲み込んだ。クマくんとウサくんが眠っているのだから大きな声を出してはいけない。
 とりあえずここではアレだからと三人でこそこそ廊下へ。皇帝陛下からの手紙ともなると封を切ることすら躊躇われて、あわわっとなっている間にシモンにぴゅんっと抜き取られてしまった。


「本当に陛下からの手紙みたいですね。封蝋、皇族の紋章ですよ」

「なぬっ!ほ、ほんとだ……あわわ……」


 ポケットからナイフを取り出したシモンが封を躊躇なく切って手紙を取り出す。
 そのナイフ、乾いた血がこびり付いているけれどいいのだろうか……血の付いたナイフで皇族の手紙を開けても良いものなのだろうか、そわそわ。

 どうぞ、と手渡された手紙をありがとねと受け取る。緊張でかちこちになりながらも手紙を開き、震える手を抑えながら何とか内容を確認した。


「茶会に招待したいって書いてますね。それと、帝国の英雄へ褒美を与えたいですって。陛下が直々に褒美を与えるなんて、第一の騎士団長が戦勝した時以来じゃないですか?」

「姫すげー!ガチ英雄じゃないですか!」


 がくがくぷるぷる。
 皇帝陛下からの褒美だなんて。そもそも会うことすら想像するだけでかちこち緊張なのに。お茶会って、絶対に何か粗相をしてしまう気がする。
 礼儀作法もまだまだマスターしたと言えないレベルだし、何なら気を抜くとぽわぽわっとした態度に戻ってしまう。気を引き締めて挑まないと、褒美をもらうどころじゃなさそうだ。


「い、いつ来てって……」

「明日の昼ですって」

「あした……!?」


 青褪めるのを通り越して顔色が真っ白になってしまいそうだ。
 あわあわと体を揺らすとシモンにむぎゅっと抱き締められ、ぴたりと動きを止めたところをよしよし撫でられる。そのおかげだろうか、ちょっぴりだけれど混乱が収まって落ち着いた。


「あ、皇太子殿下も同席するらしいですよ。二人きりじゃなくて、陛下と殿下とフェリアル様の三人みたいです」

「ほんと?レオも一緒?」


 ぐぬぬと項垂れていた空気がパッと晴れる。きらきら瞳を輝かせて問うと、シモンの頷きが返ってきて安堵の息が零れた。
 陛下と二人きりだと声も出ないくらい緊張してしまいそうだけれど、レオがいるなら安心してしっかりお話出来るかも。
 なんて考えて、不意に例の会話を思い出しぴたりと固まった。

 そうだ、最後に会ったのは告白された日。また会うときは緊張しちゃうだろうなふむふむなんて呑気に思っていたけれど、これは予想よりも緊張の大きさが段違いなんじゃ……。
 レオと会うだけでも心臓がばっくばっくするだろうに、そこにレオのお父様までいるとなると更にあわあわしてしまうに違いない。


「ぐぅ……」

「おや……さっきまでほっとしてたのにまたそわそわしてきちゃいましたね」


 どのみち緊張でばくばくするのは変わらないのか。がっくし……。
 しょぼぼんと落ち込むとシモンにひょいっと抱えられ、むぎゅーなでなでと甘やかしモードに突入してしまった。こうなるともう頭は回らない。むぎゅー。

 シモンとグリードが何やら話していた気もするけれど、ぬくぬくの抱っこに夢中でさらーっと聞き流してしまった。


「ていうか、そもそも何で殿下も一緒なんですかね?陛下が褒美与えるだけなら殿下いる意味無くないっすか?」

「……まぁ、一文目に謝罪じゃなく褒美を与えるだなんて書くポンコツ皇帝ですからね。何か下らないことを企んでいる可能性はゼロではないでしょう」

しおりを挟む
感想 1,721

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。