余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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【聖者の薔薇園-終幕】

312.もっと※

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※一応背後注意です
───





 体が熱い。内側から灰になって溶けてしまいそうなくらい、行き場のない熱を必死に逃がそうと激しく悶えてもうどれほど経っただろうか。
 最早思考はまともに回っていない。意識も朦朧として、視界も鮮明に見えない。とにかく本能のまま熱の解消に全力を注いでいると、不意に直で肌に触れる誰かの手の感触を察してビクッと震えた。

 ほんの少しだけ冷静になった頭で考えてみれば、これまでも服越しだけれどぎゅっと人肌を分けてくれていた人がいた。けれど、相手から直で触れてくるのは今のが初めてだ。
 微かに開いた視界。更に鮮明に焦点を合わせる為にぱちぱちと瞬き、ぼやけた視界の中に二つの人影が見えて首を傾げた。


「っ、んー……」


 擽ったい。顕になった腹部を優しく撫でられる感覚に身を捩る。
 背後から羽交い締めされるようにぎゅっとされているから、少し身を捩る程度では抵抗出来ない。そもそも抵抗するだけの力がもう残っていないけれど。

 軽く頭を振って額に張り付く前髪を払う。汗のせいで中々離れない前髪を、背後から伸びた手がさっと払ってくれた。
 開けた視界の中ゆらりと振り返る。視線だけちらりと上げると、そこには見慣れた緑の瞳があった。柔らかい雰囲気の茶髪がさらりと零れる、その様子に半ば無意識に口を開いた。


「しもん……?」


 散々狂ったように高い声を上げていたせいか、小さく零した声は掠れて細々としたものだった。
 ぼやけた視界にシモンの優しい笑みが見えてほっと息を吐く。何も分からずとにかく悶えていた数秒前とは打って変わって、シモンの姿を視認した途端深い安堵に包まれた。


「しもん……あつい……おく、とってもあついの……」


 奥。何処なのかは分からないけれど、とにかく奥の奥がすごく熱い。熱くてどうにかなってしまいそう。

 シモンなら助けてくれる。シモンならって、霞む思考でも確信が湧いた。シモンはいつだって僕の味方で賢い侍従だから、困ったときは絶対に助けてくれるのだ。
 だから、抵抗する体も安心して預けられる。手を伸ばしてシモンの頬に触れると、シモンは穏やかな微笑みを浮かべたまま片手で僕の両目を覆った。


「……しもん……?」

「……大丈夫、怖いことは何もしませんから。ちょっとだけ擽ったいだけで、痛いこともしませんからね」


 真っ暗な視界に恐怖が募る。体を羽交い締めにしているのがシモンだという事実だけが、辛うじて平静と正気を保っていた。
 何が起こるのかとそわそわしている中、不意に刺激を感じたのは熱が一番籠ったその場所だった。冷たい……指、だろうか。長い指が躊躇するようにつんとそこに触れた瞬間、これまでとは比べ物にならないくらい高い嬌声が漏れた。


「んっ、あぅ……ッ!」


 体がビクッと大きく痙攣する。だらんと投げ出されていた四肢に力を籠めて後退ろうとしたけれど、背後から羽交い締めにされているせいでそれは叶わなかった。

 熱が籠り始めてからずっと、尿意にも似た何かが続いていたその場所。僅かに反っているそれにつんとぎこちなく触れていた指は、やがて躊躇を捨てて二本、三本と増えていく。
 柔く握り込まれるような感触。感じたこともない妙な感覚が背筋をぞわっと巡り、理解の追い付かない頭が軽くパニックに陥った。


「ぅ……な、なに……?こわぃ……しもん、しもん……っ!」


 じんわりと涙が滲む。両目を覆う手が涙で濡れるのも厭わず、シモンは震える僕の体を更に強く抱き締めた。
 そう、シモンの両手は今塞がっているのだ。下手をしたら暴れ出してしまいそうな僕の体を押さえつける片手と、視界を遮るもう片方の手。それじゃあ今、熱の籠ったあそこに触れているのは一体誰なのだろう。そこに触れて、一体何をするつもりなのだろう。

 小刻みに震える体を三本目の手が優しく撫でる。ビクッと肩を揺らすと、シモンとは違う、けれど聞き慣れた声が躊躇い混じりに小さく聞こえた。


「フェリ……その、ごめんね……私じゃ安心できないだろうけど、本当に痛いことは何もしないから……──」

「らい、ねす?」


 ライネス……ライネスの声だ。二人いる内もう一人の声の主がライネスだと、そう悟った瞬間体の震えが不思議なくらい一瞬でピタリと止まった。
 ライネスの手が腰の辺りを柔く撫でる。もう片方でそれをやんわり握り込んで、熱を外側に誘うように擦ったり扱いたり。強い刺激は初めに触れられた時だけで、今はむずむずと何だか物足りない感覚に支配される。


「んっ、んー……くすぐったいー……」


 ぐずぐずと悶えて頭を振る。むずむず籠る擽ったい感覚のせいで、どうにもならないむず痒さが寧ろ悪化したような……。


「あれ、何だろう……あんまり効いてるように見えないな……」

「力弱いんじゃないですか?もう少し強くするとか」

「いや、だって……強く擦ってフェリの小さなものに傷でも付いちゃったらどうするの」

「不安が繊細過ぎでは?もしかして童貞ですか?」


 頭上で繰り広げられる二人の会話。ぽーっとしているせいで内容を瞬時に理解することは出来ないけれど、さっきまでの張り詰めた空気が少しずつ緩んできたようで少しほっとした。


「急にそこ触るのがアレなのでは。前戯するなら別のとこも同時に触ってあげないと」

「ぜっ……!じゃなくて治療だから!前戯も本番も、フェリの初めてはフェリの好きな人が奪うものだから……!これはノーカンで……私は全然、そんな……」

「はいはい健気健気。鈍感もそれくらいにしてさっさとシてくださいよ。フェリアル様が苦しそうなので」


 うーっと唸ると、それに気が付いたシモンが汗ばんだ髪を梳くように優しく撫でてくれた。
 嬉しいけれど、熱を冷ましてほしいのはそこじゃない。ライネスが今まさに片手で握り込んでいるそれの奥に、全身の熱がぐっと集まっているのだ。それを何とかしてほしい。

 膝を擦り合わせて熱情に耐えていると、やがて重なった両膝をそっと割り開かれた。


「ぅん、んー……?」

「ごめんねフェリ……ちょっとだけ触るね。少しでも嫌だと思ったら言ってね、直ぐにやめるから……」


 再び柔くそこを擦り始める長い指。変わらない擽ったさに身悶えていると、今度はライネスが上半身をぐっと屈めて覆い被さるような姿勢になった。
 首元にかかる熱い吐息でその動きを悟る。不意にちゅっと軽く首に吸い付かれ、ビクビクッと痙攣した直後。今度は胸の突起を指先できゅっと摘み上げられた。


「んっ、んぁッ!」

「っ……あ……ごめんね、気持ち悪いよね……っ!」


 ぱっと体が離れる予感を察知。さっきまで力が抜けていたはずの腕が俊敏に動いて、離れかけたライネスの首にぐいっと回った。
 途端に硬直した体をぎゅーっと抱き締めて、耳元で掠れた声を呟いた。



「んーん……きもちー……それ、もっとして……」



 ぴくっと緩んだシモンの手。その指の隙間から、至近距離でライネスの真っ赤に染まった顔がちらりと見えた。

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