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フェリアル・エーデルス
343.ひーろーふぇりある
しおりを挟むすっぽんぽんで浴場を飛び出し脱衣所を飛び出し。
廊下に立って待機していたシモンがすっぽんぽんの僕をぎょっとしたような目で見下ろしてくるのも構わず「たすけてシモン!」と叫ぶと、その顔色が一瞬でサーッと変化した。
僕をひょひょいっと抱き上げたシモンが「おのれ公子……!折角空気を読んでやったというのに理性に負けて無体を働きやがったのか……!」とキャラブレブレの発言。
鬼の形相のシモンを何とかどーどー落ち着かせ、違うのよそうじゃないのよと必死に説明した。かくかくしかじか、こういうことがあってじゃのう……。
ライネスのライネスがおっき!しちゃったことまでオブラートに包んで説明すると、シモンは何やら全てを悟ったような様子で「あぁ……」と溜め息を吐いた。
「なるほど……フェリアル様、公子に何かしました?」
「む?してないよ。僕がね、ぎゅーしたらおっきしたの。白いの出せば元通りだよって教えてあげたら、もっとおっきしちゃったの」
「あ、オッケーです!大体理解しました!」
清々しい笑顔をキラーンと浮かべてグーサインするシモン。うむ、理解してくれたようで何より何より。うむうむ頷く僕を抱き上げたまま脱衣所に入ったシモンは、浴場への扉越しにライネスに声を掛けた。
「公子。そっとしておいた方が良いですか?処理しますよね?」
「あぁシモン……そうだね、ちょっとその……体を洗ってから出ようかな。フェリをお願い出来る?」
何だか通じ合っているような二人の会話に首を傾げる。むむ?ライネスを助けにいかなくていいのかな。発作が起きて苦しそうだって、シモンにはきちんと説明したのに……。
お任せください!と力強く頷いてその場を離れようとするシモン。それを慌てて引き留めて、助けなくても良いのかと聞いてみる。するとシモンは目を瞬いて、すぐにニコッと微笑んだ。
「公子の症状は発作ではありませんから。ちょっぴりのぼせちゃっただけみたいなので、もう大丈夫です」
「ほんと……?」
シモンの言葉にほっと息を吐く。よかった、あれは発作じゃなかったのか……安心よきよき。
顔面蒼白でカタカタ震えていたから、てっきり何かの病気なのかと早とちりしてしまった。あの時のライネスの『大丈夫』は本当に大丈夫の意味だったのか。先走る癖をいい加減何とかしないと。
安堵でへにゃへにゃになる僕をシモンがサラッと椅子に下ろし、いつの間に用意したのか着替えの下着と洋服を取り出しててきぱき着せていく。そういえばずっとすっぽんぽんだった。
全て着終えた後はもこもこのおっきなタオルに包まれ、今度は髪を乾かす作業へ。さらさらーふわっと乾かし終えた髪はとぅるとぅる。うーむよきよき。
「そういえば、随分髪が伸びてきましたね。これなら結わえても可愛らし……カッコいいかもです」
「ほんと?それじゃあライネスとお揃いがいい!ライネスかっこいいから、真似したら僕もかっこいい!」
シモンの何気ない言葉にわくわくと返す。すると浴場から何やら「ウッ」と低く呻く声が聞こえてびっくり肩を揺らした。気の所為かなぱちくりと首を傾げると、シモンがにこにこ微笑んで言った。
「フェリアル様。公子にこれ以上おかずを与えてはいけません。枯れちゃいます」
なんと……!ライネスに美味しいご飯を与えたらお花が枯れてしまうらしい。そんなに悲しい能力を持っているなんて、ライネスかわいそう……しくしく、めそめそ。
あわれ……と眉を下げて沈黙する僕の髪をササッと結わえて完成させたシモンが、さっきまでのおかず何とかという話を華麗に逸らして鏡を向けてきた。
「ほーら出来ましたよ!神も欲情しそうなくらいのきゃわわヘアですね!」
サラッと不敬を発揮するシモンの言葉を聞いて鏡をじーっと見つめてみる。ふんふん、ふふん、確かにこの髪型はとっても可愛いかも。カッコよさがあまり感じられないのだけちょっぴり残念だけれど。
肩にすとんとつくくらい伸びた髪を低い位置で一括りにした髪型。横の髪を軽く三つ編みにしているアレンジ以外はライネスにそっくりだ。
うむうむ。おしゃんてぃで中々よいではないか。上機嫌でふすふすにまにましながらシモンに「ありがと」と伝えて立ち上がる。
「みてみてシモン。僕、かっこいい」
その場でくるっと回ってカーディガンを軽く摘まんでお辞儀。ばっちりポーズが決まったことにどどやぁとドヤ顔すると、シモンはグハッと呻いて膝をついた。
さっきのライネスと全く同じような感じでぷるぷる震えるシモン。今度こそ発作なのか……!?と不安を抱く僕を見上げ、シモンは死にそうな表情でふにゃあっと笑った。
「そこでカーテシーを選ぶ辺りガチ天使……クハッ……」
「しもーん!」
大変、今度こそほんとの発作みたいだ。シモンがグッジョブのポーズでぱたりと倒れてそのまま動かなくなってしまった。
安らかな表情でご臨終するシモンを見下ろしてあわあわ。どうしようどうしよう、ライネスに頼ろうにも、そのライネスもいまピンチで手が離せないし……。
ぐるぐる考えた末、決意を固めてくるっと振り返る。のぼせたライネスと安らかなシモンを背に、僕がみんなを守るんだと気持ちはさながらヒーローだ。
「たすけてパパー!」
まってて、いま僕が助けを呼ぶから……!
後ろ手でグッと親指を立てて走り出す。何やらライネスの制止の声が聞こえたような気がしたけれど、構わず必死に走り続けた。
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