余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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フェリアル・エーデルス

349.串焼きもぐもぐ

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 馬車から下りて初めにやって来たのはヴィアス領の中心部にある広場。帝都の広場と同じくらい広くて、とっても賑やかだ。祭りだからというのもあるのだろうけれど。
 広場を中心に多くの露店が道端に並び、美味しそうな匂いがたくさん絡み合っている。匂いから実物を想像するだけで涎が垂れてしまいそうだ。
 この匂いは串焼きかな……くんくん、すんすん。


「フェリ、絶対に手を離しちゃいけないよ?約束だからね?」

「うむ。絶対離さない!」


 不意にライネスに声を掛けられ慌てて涎を拭う。表情をきりっとさせて頷くと、ライネスは何やら眉を下げて「……うん、絶対ね」と微笑んだ。うーむ、これは信用していないな。かなしい。
 ぎゅっと手を握り締めて離さないことをアピール。この人混みで手を離すわけがないじゃないか。ライネスが迷子になったら怖いもの。
 僕がしっかり守るから安心してね!という意味を籠めて瞳キラキラ。ライネスは僕の思いを察してくれたようで、けれどやっぱり困ったように苦笑した。うーむなにゆえ。


「それじゃあ、まずは何処を見ようか。取り敢えず何か軽いものでも食べる?」

「お肉!串焼き!」


 串焼き好きだね、と柔く頬を緩めるライネス。その言葉にドキッと俯く。
 お祭りでライネスと一緒に食べた串焼きが美味しくて、それから大好物になったのだとは到底言えない。それを言った時のライネスの反応も、想像するだけで何だか怖いし……。

 結局、何を答えるわけでもなくこくこくと頷くだけ。ライネスはきょとんと首を傾げたけれど、何も聞かずに話を逸らしてくれた。やさしい。


「うん、串焼き美味しいもんね。串焼き食べよう、北部の肉は極上だからお勧めだよ」

「北部のおにく、他とは違うの?」

「北部は山岳地帯だからね。その辺の自然とは違って森も深いし、動物の数も種類も多い。上質な肉を持つ獣が多いんだ」


 なるほど、とふむふむ頷く。たしかに見渡す限り、露店に並んだお肉は見たこともないくらい分厚かったり大きかったりでびっくりしてしまう。お肉は北部の特産物のようなものなのかもしれない。
 これならとっても美味しい串焼きがもぐもぐできそうだ。たらーっと涎を垂らす僕を見下ろしライネスが苦笑する。
 いけないいけない、子供っぽいことはなるべくしないようにと決めていたのに。

 慌てて涎ごしごし。きりっとした表情で前を向き、ライネスの手を引いて串焼き売りの露店まで一直線で進んで行った。
 ここはさっきの挽回のためにも、ライネスにかっこよさをアピールしなくては。例えばそう、クールに注文を遂行する!


「おじさん。美味しい串焼き二個ください」

「おっ、美人な兄弟だなぁ!よし!坊主達には一本ずつサービスしてやろう!」

「むっ!?ほんとっ!?」


 サービスとな!わーいわーいと全身で喜びを顕にしながら四本の串焼きを受け取る。
 兄弟に間違われたのは不服の極みだけれど、そのおかげで串焼きを多くゲットするラッキーを経験できたので良しとする。
 それにしても何だか既視感のある流れだなぁ……。


「ライネス!サービスだって。うれしいねぇ」

「そうだね。とっても嬉しいね」


 ふにゃふにゃと笑って言う僕にライネスが優しく微笑む。
 一本目を一口ぱくっとして瞳キラキラ。な、なんて美味しいお肉なんだ……ごくり。あむあむっと一本を食べ尽くし、優雅に串焼きを食すライネスの隣で二本目を豪快にむしゃむしゃ。
 二本の串焼きをライネスと一緒にぺろりと平らげて、まだ全然膨らんでもいないお腹をぽんぽんっと叩いた。美味であった……。


「むふ……」

「美味しいね、フェリ」

「うむ!とっても美味しい!」


 ふにゃあっと満足気な笑顔を浮かべて、不意にそうだと思いつく。もう食べきってしまった串焼きの串をぽいっとゴミ箱に捨てながら辺りきょろきょろ。やっぱり人混みの中だと見つけづらいなぁ。
 遠くから護衛すると言っていたけれど、どれくらい遠くなのだろう。僕からは見えない場所にいるとか?
 きょろきょろしている僕に気が付いたらしいライネス。その理由もすぐに察したみたいで、優しい微笑みを浮かべながら小さく問いを零した。


「……もしかして、シモン探してる?」

「む?うん。美味しい串焼き、シモンにも食べてほしいの」


 よしよし、と頭を撫でられる。ライネスはそっと辺りを見渡し、やがて微かに苦笑して僕の方に視線を戻した。何かあったのだろうか、と瞬く僕にライネスが語る。


「シモン、露店をたくさん楽しんでいるみたいだよ。今はクレープを食べてる。あの分なら串焼きも当然食べるんじゃないかな」

「ほんとっ?」

「うん。だから大丈夫。フェリと同じように、シモンもきちんと祭りを楽しんでいるみたいだからね」


 その言葉にほっと息を吐く。よかった、シモンもちゃんと祭りを楽しんでいるんだ。僕の護衛に専念して、美味しそうな匂いが漂う中なにも食べずにいたらどうしよう、なんて心配をしてしまっていた。
 約束通り、きちんと祭りを堪能出来ているのなら良いのだ。それなら僕も安心して祭りを楽しめる。

 それにしても、僕が必死にきょろきょろしても見つからなかったシモンをほんの数秒で見つけてしまうなんて。ライネスもシモン同様とっても目が良いんだなぁとちょっぴり感心。瞳キラキラ。
 シモンはいまクレープを食べているみたいだし、今度は僕もクレープを食べよう。そう思いライネスの手をしっかり引く。ライネスを迷子にさせないように!


「ライネス。しっかり手を繋ぐんだよ。離しちゃだめだよ?僕が守るからね」

「うん。離さないよ。守ってくれてありがとうフェリ」

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