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フェリアル・エーデルス
353.嫉妬でモヤモヤ
しおりを挟む「ライネス、大丈夫?もう痛いのない?」
「大丈夫、痛いのないよ。ごめんね、突然倒れてびっくりしたね」
鼻の付け根を指で摘まんでにっこり笑顔を浮かべるライネス。
シモンみたいに鼻血がどばーしちゃいそうなのかな。しちゃうかもってだけで終わってよかった。いつもシモンの出血多量で危なくなる場面を見ているから、とっても安心。よきよき。
安堵でふにゃあっと頬を緩めると、ライネスがそれを見下ろしてスッと目を細める。不意に顔を寄せられなにごと?と首を傾げた。
ちゅっ、と淡く響く口づけの音。額にふにふに押し付けられる柔い感触にピシッと固まった。
額にくっついていたそれはやがて下に降りてきて、目尻やら頬やらにちゅっちゅと何度も押し付けられる。最後にふにっと唇に触れると、ようやくライネスのそれが名残惜しそうに離れた。
「……どうしよう。好きすぎる……ずっと触れていたくて堪らない……」
首の後ろをさわさわ撫でられたり、手をむにむにとにぎにぎされたり。とにかく僕の体に触れようとしてくるライネスにそわそわ。困り顔で語られた言葉に胸がドキドキ高鳴った。
好きすぎて、ずっと触っていたくなるなんて……そんなの、どきどき、どきどきしちゃう。ライネスは意地悪だ。僕のことをこんなにどきどきさせるのに、ライネスはとっても余裕そう。ずるい……。
「ずるい。ライネス、ずるい」
「うん……?どうして狡い?何かしちゃった……?」
「僕、とってもどきどきしてるのに……ライネスはにこにこ……よゆー」
「余裕じゃないよ!?」
むぅ……と頬を膨らませてもごもご呟くと、ライネスが驚いた様子でカッと目を見開いて反論した。
余裕じゃない、なんて。冷静な顔をしてにこにこしておきながらよく言うものだ。僕みたいにあわあわそわそわ目ん玉ぐるんぐるんってしていないだろうに。
ぷくぷく。ほっぺが膨れた状態で地面のしのし。ライネスはそんな僕のふくふくほっぺをむにゅっと両手で包んで、顔を覗き込むような形でちゅっと口づけしてきた。
心臓ドキドキ。むぅ、どうしてライネスは不意打ちでちゅーをしてくるのだろう。ドキドキって硬直して、真っ赤な顔のまま動けなくなっちゃうのに。
何度も何度もちゅーをして。もしかしてライネスは俗に言う、キス魔?というやつだろうか。
それとも……ちゅー、キスをするのに慣れているから、もはや呼吸と同じレベルとか?僕以外にも、たくさんの人と好きを伝え合って、何度もちゅーをしたのかな。
「……む」
「フェリ?どうしたの?あっ、一応言っておくけれど、本当に余裕じゃないからねっ!?」
ライネスの声が右から左へ。今はそれどころじゃない。
ライネスが別の人とちゅーする光景を想像した途端、突如胸に湧いたこのモヤモヤ。これは一体何なのだろうか。もやもやーって気持ち悪い感覚があって何だか落ち着かない。
「むっ!むぅ!」
「フェッ、フェリ!?本当にどうしたの!?その可愛い攻撃は一体なに……!?」
ぎゅーっとされながら、目の前にあるライネスの胸をぽすっぽすっと攻撃する。完全に八つ当たりだとわかっているのに、どうして衝動が堪え切れないのだろう。
うるうると潤む視界の中、なんとか泣かないように唇をへの字に結んでもごもご答えた。
「……もやもや。もやもやする……」
「モヤモヤ?どうしてモヤモヤするの……?」
「ライネスが、他の人とちゅーする……好き好きって、ちゅーする……」
うん?とぱちくりするライネス。きょとん顔で数秒硬直したライネスは、やがて僕の言葉を完全に理解したようにぽぽっと真っ赤に頬を染めた。
かと思うと「うー……ッ!」と突然悶絶し始めて僕の額やら頬やらをちゅっちゅ。キス魔なライネスに戻ってしまいまたまたむぅっとなる。
そんな僕をむぎゅむぎゅ抱き締めたライネスに、感極まった様子で尋ねられた。
「フェリ、それもしかして嫉妬?私が他の人とキスする所を想像して、嫉妬しちゃったの?」
甘く蕩けるような笑み。嫉妬、という言葉にぱちぱち瞬いて、意味を理解した瞬間ぽぽっぷしゅーっと真っ赤な顔で硬直した。
しっと、しっと、嫉妬……。僕は、見たこともない、聞いたこともない人に嫉妬しちゃった?ライネスが他の人とちゅーするのが嫌だって、ライネス本人の前で、むっとはっきり答えてしまった……?
あわ、あわわ。なんてことを言ってしまったのかとそわそわ。か細く「忘れて……」と呟く僕をぎゅっと抱き締めたライネスが、甘い声で「いやだ」と答えた。
「あぁもうっ……!どうしてそんなに可愛いのっ?私を殺す気……?」
「うぅ……ごめんなさい……おかしなこと、言って……」
「何にもおかしくないよ!私だってっ、赤の他人がフェリとキスしていたら嫉妬して殺しちゃうよ!フェリの可愛い嫉妬は何にもおかしいことじゃないんだよ!」
「うん……?」
なんだかとっても物騒な言葉が聞こえた気がしたけれど、気の所為かな……。
きょとんとする僕をぎゅーぎゅー抱き締めて何やら悶絶するライネス。
うーむ、なんだかとっても初々しい反応をしているし、物騒なことなんて言うようには見えない。気のせいだったみたいだ、うむ。
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