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フェリアル・エーデルス
368.いちゃいちゃパパと大公妃さま
しおりを挟む「パパ、お花畑ありがとう。とっても綺麗で嬉しかった。お腹空かせたにゃんこ、ちょっぴりだけ面倒見れないかな」
「待て待て。取り敢えずどういたしましてだが。にゃんこって何だ、何の話だ」
お礼から何の前置きもなく本題に入ってしまった。パパの困惑顔を見て慌てて反省。もうしわけない。
もうすぐ帰る時間だけれど、想定外の出会いがあったので予定変更したのがついさっきのこと。今は訳ありそうなにゃんこを城へ連れて戻り、城の主であるパパににゃんこについてを相談しに来たところだ。
「庭園に迷い込んだようです。名前があるので飼い猫だと思うのですが、この体を見る限り捨て猫ではないかと……」
僕の足りない説明に補足してくれる頼れるお兄さんライネス。その補足にうむうむと感謝して様子を窺うと、パパが状況を把握したみたいになるほどと頷いた。
静かに紅茶を嗜んでいた大公妃さまを振り返り、パパが一言。
「だとよアグネス。猫好きの使用人にでも預けとくか?」
どうして大公妃さまに?とぱちくり。何やらライネスも含みありげに苦笑しているし……大公妃さまと猫に何かあるのかな。
きょとんと首を傾げること数秒。やがてコトッとカップを置いた大公妃さまが、僕の腕の中に収まるにゃんこを見て目を細めた。
細めたと言うより……目を凝らしている?もしかしてにゃんこがみたいのかな。慌ててとたとたーっと近寄り、大公妃さまににゃんこを見せてあげる。
相変わらず僕以外だと警戒しちゃうみたいだから、あくまで腕の中からだけれど。
「……可愛らしい子猫ちゃんね」
ピクッと耳を揺らすにゃんこ。もしかして、と思い至ってそーっと大公妃さまの傍に下ろしてみる。
案の定、にゃんこは大公妃さまに攻撃することなく素直に丸まった。どうやら大公妃さまの優しさに気が付いて警戒を解いたらしい。
隣で丸まるにゃんこを見て、大公妃さまが優しく目尻を緩める。無表情だからちょっぴり分かりづらいけれど、よくよく見ると何だか嬉しそうな表情だ。
ほわほわーっと癒しオーラ全開の空間からそそくさ離れライネスとパパの元へ。耳元に唇を寄せてヒソヒソ内緒話。
「大公妃さま、にゃんこ好きなの?」
「母上は昔から可愛いものに目がないんだ。特に小動物が好きらしいんだけれど、でもほら、いつも無表情だから……」
「動物の方がビビって逃げちまうんだよ。今回は珍しいな、中々見る目のある猫だ」
なんと。どうやら大公妃さまは可愛いものに目がない、けれど可愛いものに避けられがちなちょっぴり悲しい体質の人だったらしい。
そういえば初対面の時から僕に親切にしてくれたし、きっと子供好きでもあるのだろう。思い返してみれば僕も初めの頃は大公妃さまを怖がっていたから、避けちゃう小動物はその心境に近いのかな。
「あいつ顔怖ぇからな。そりゃちっこいのはビビるに決まって──」
「何か言ったかしら」
愉快げに言葉を紡ぎかけたパパを止めた冷たい声音。
ピシッと数秒硬直したパパが慌てて振り返り、いつの間にか背後に立っていた大公妃さまにあわあわ冷や汗をかいた。
「いや待て、違ぇよ誤解すんな。いつものお前も可愛いけど笑ってるお前がやっぱ一番可愛いってことだよ、な?分かるだろ?」
あせあせパパ、いつもの余裕気な様子とは真逆でとっても新鮮だ。大公妃さまには絶対に嫌われたくないという強い意志を感じる……。
「拗ねた顔も最高に可愛いぜ」
「……そう」
ツーンとパパから顔を背ける大公妃さま。パパからの角度だと見えないかもしれないけれど、こっちから見ると大公妃さまの真っ赤な顔が丸見えだ。
パパと大公妃さまのいちゃいちゃ、いちゃいちゃ……。なぜか僕まで顔が真っ赤っかに。あわわ……。
「……行こうかフェリ。ほら、ユウマも一緒に」
「うむ……」
「にゃあ」
二人のいちゃいちゃちゅっちゅが始まりそうな予感を察知。身内のライネスは僕以上に鋭いみたいで、早々に僕の目を塞いで退室を促した。
いつもは『なになにー?』と状況把握が遅れてあわあわっとなる僕だけれど、流石に今回はきちんと空気を読んだ。たいさんしますよーっと、そそくさ。
静かに部屋を出て数秒沈黙。にゃんこのユウマが足に擦り寄ってきたことで我に返り、ちっちゃな体を優しく抱き上げる。
それを見たライネスが恐る恐る手を伸ばし、指先だけユウマにちょんと触れた。さっきとは違い、ユウマが嫌がる気配は無い。
「あ、私が触れても嫌がらないね」
「にゃあ」
ゴロゴロと喉を鳴らすおちびにゃんこに苦笑する。人に慣れるのが随分早いなぁ……。
「ライネスがいい人だって分かったんだね。賢いにゃんこ。よしよし」
「にゃあ、にゃあ」
顎と耳をなでなで。気持ちよさそうに細められる虹色の瞳を見て頬が緩む。それにしても本当に綺麗な瞳だ。
虹色の瞳ってありえるのかな。にゃんこだからそういうこともあるかーとすぐに納得。綺麗だねーとよしよし。
「フェリはもう猫を一匹飼っているし、この子は大公家で引き取ろうか。飼い主が見付かったらアレだけれど……母上も、あの顔はきっともう飼う気満々だろうし」
うちの猫ちゃんは猫ちゃんじゃないんだよなぁ……と遠い目で思ったけれど、説明が難しいので口を噤んだ。むぐっ。
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