余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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フェリアル・エーデルス

374.お嫁さん役

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「け、けっ、結婚!?」


 文字通り泡を吹いて倒れるお父様。大公城から公爵邸に帰って早々、大事な話をぺらぺらーっと話した僕にこの反応だ。何となく予想はしていたけれど、こんなに驚かせてしまうなんて。
 お母様はあらあらまぁまぁ!とニコニコして喜んでくれているけれど、お父様は何だか浮かない顔。
 というより、白目を剥いてちーんとなっているので浮いているのかいないのかよく分からない。おっけーしてくれたって認識でいいのかな。いいよね。


「ディラン兄様、ガイゼル兄様。お父様がおめでとうって言っています」

「本当に言ってたか?俺には泡吹いて倒れたようにしか見えなかったぜ?」

「むぅ……」

「あまりに喜ばしい報告に歓喜したんだろう。そうだよなフェリ」

「うんっ!うん!そうですっ!」


 ガイゼル兄様の呆れ声にしょぼぼん。それを見たディラン兄様が宥めるように語った言葉に、すかさずぱあぁっと表情を輝かせてこくこく頷いた。

 あまりの嬉しさにばたんきゅー。そうだ、そうに違いない。流石ディラン兄様はとっても賢い。
 帰る道中、馬車の中でドキドキ緊張していたけれど杞憂だったみたいでよかった。お父様もお母様も無事に僕とライネスの交際を認めてくれたし、こうして祝福ばたんきゅーもしてくれている。ありがたい、ありがたい。
 これでそわそわも緊張も取り敢えずは無くなった。あとは大人になるまで修行を頑張って、ライネスの隣に立つに相応しい真のお兄さんを目指すのみ。


「シモン!シモンも一緒にはなよめしゅぎょーする!」


 キラキラッ。瞳を輝かせてシモンにむぎゅーっと抱き着く。
 影からせっせと荷物を取り出して整理していたシモンが振り返り、キラキラおめめの僕を見下ろしてニコッと頷いた。


「そうですね!一緒に花嫁修業しましょう!フェリアル様が花嫁役で、俺が花婿役で良いですか?」

「む?うんっ!僕がお嫁さん役やる!」


 花婿修業がどんなものなのかわからないので、取り敢えずシモンの提案に素直にこくりこくり。
 なるへそなるへそ、花嫁役と花婿役なるものがあるのだな。ふむふむ。
 なんか楽しそう!わーいわーい!とぴょんぴょん跳ねる僕の背後で、兄様達が何やらこそこそと内緒話を始める。気になるけれど、聞いてもきっとよく分からないからスルーしておこう。


「チビのやつ、完全にシモンに騙されてやがるぜ……あいつチビの婿役がやりたいだけだろ」

「フェリが楽しそうなら構わない。シモンの次は俺がフェリの婿役だ」

「お前もかよ」


 兄様達がこそこそと会話をする横で、シモンの隣にぴとっとしゃがみ込む。影から取り出される物たちをじーっと見つめて唇をへの字に。それにしても本当に荷物が大量だ……。
 ぱちくり様子を窺い、やがてぴこーん!と閃いたこと。シモンが持ち上げようとしていた重そうな荷物。それとシモンの間にするーっと割って入り、ぐぬぬと持ち上げるべく腰を屈めた。


「フェリアル様!?駄目です!ちっちゃな体が潰れてしまいます!」

「大丈夫!これもお仕事なの。お嫁さんは旦那様をお手伝いして、癒しをあたえるんだよ」

「癒しなら四六時中与えられておりますが……」


 絵本で培った知識をどどどやぁと披露する。
 シモンの反応は思っていた『流石フェリアル様!すごいです天才です!』とは違い、何だかとっても困惑した様子。あれれ。


「僕、シモンに癒しをあたえるんだよ……?」

「あぁっ泣かないでっ!そんな顔も可愛らしいですから!いつでもどこでもフェリアル様は癒しの化身ですからっ!」


 たくさんのもこもこお洋服や帽子が入った袋を持ち上げながらうるうる。ぷるぷると震える僕をシモンがむぎゅーっと抱き締めて、うりうりーっと頭に頬擦りした。あったかい、ぽかぽか。


「僕、きちんとお嫁さん役できてる……?」

「癒しを与えるのがお嫁さんなら、フェリアル様はいつでもお嫁さん出来てますよ。ごめんなさいフェリアル様。さっきはあまりに当然過ぎることを聞いてしまったので、少し困惑してしまったんです」


 よしよしと頭を撫でられ、ほうっと息を吐く。
 とりあえず、きちんとお嫁さん役が出来ているようなので安心した。これならライネスのお嫁さんに相応しい真のお兄さんになるまでそう時間は掛からないだろう。よきよき。
 この調子でシモンと花嫁修業をして、旦那様に癒しを与えられるような人になって、お兄さんレベル最高位の真のお兄さんを目指さなくては。ぼくがんばる。

 そうと決まれば!と瞳キラキラ。シモンからそろっと離れて、もう一度荷物の持ち上げに挑戦。


「ぐぬぬ……ぼくがんばるっ……シモンのお手伝いして、真のお兄さんになるっ……!」


 これを部屋まで持っていくんだ。ぐぬぬ、ぐぬぅ……。
 抜けない剣を引っ張るみたいに踏ん張る僕を見て、周りに立つみんながそわそわと応援してくれる。兄様達とお母様はがんばれーとエールを送ってくれるし、シモンも小さくガッツポーズだ。お父様はちーんしているけれど。

 がんばる!がんばる!と踏ん張ること数秒。不意に荷物がふわっと軽くなって、まるで紙を持ち上げた時みたいな身軽さを感じてなぬっ!と瞬いた。


「む、むむっ!みてみてっ!軽い!僕できた!」


 わーいわーいと荷物を持ち上げて万歳。なーんだ、こんなに軽いなら楽勝楽勝。えっへん。
 ぽわぽわドヤ顔しながらとたたーっと階段を上って部屋へ向かう。その直前、兄様達が何やらコソコソ呟いたような気がした。


「……おい、あの触手……」

「黙れガイゼル。可愛いから合格だ。何も言うな」

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