339 / 423
フェリアル・エーデルス
374.お嫁さん役
しおりを挟む「け、けっ、結婚!?」
文字通り泡を吹いて倒れるお父様。大公城から公爵邸に帰って早々、大事な話をぺらぺらーっと話した僕にこの反応だ。何となく予想はしていたけれど、こんなに驚かせてしまうなんて。
お母様はあらあらまぁまぁ!とニコニコして喜んでくれているけれど、お父様は何だか浮かない顔。
というより、白目を剥いてちーんとなっているので浮いているのかいないのかよく分からない。おっけーしてくれたって認識でいいのかな。いいよね。
「ディラン兄様、ガイゼル兄様。お父様がおめでとうって言っています」
「本当に言ってたか?俺には泡吹いて倒れたようにしか見えなかったぜ?」
「むぅ……」
「あまりに喜ばしい報告に歓喜したんだろう。そうだよなフェリ」
「うんっ!うん!そうですっ!」
ガイゼル兄様の呆れ声にしょぼぼん。それを見たディラン兄様が宥めるように語った言葉に、すかさずぱあぁっと表情を輝かせてこくこく頷いた。
あまりの嬉しさにばたんきゅー。そうだ、そうに違いない。流石ディラン兄様はとっても賢い。
帰る道中、馬車の中でドキドキ緊張していたけれど杞憂だったみたいでよかった。お父様もお母様も無事に僕とライネスの交際を認めてくれたし、こうして祝福ばたんきゅーもしてくれている。ありがたい、ありがたい。
これでそわそわも緊張も取り敢えずは無くなった。あとは大人になるまで修行を頑張って、ライネスの隣に立つに相応しい真のお兄さんを目指すのみ。
「シモン!シモンも一緒にはなよめしゅぎょーする!」
キラキラッ。瞳を輝かせてシモンにむぎゅーっと抱き着く。
影からせっせと荷物を取り出して整理していたシモンが振り返り、キラキラおめめの僕を見下ろしてニコッと頷いた。
「そうですね!一緒に花嫁修業しましょう!フェリアル様が花嫁役で、俺が花婿役で良いですか?」
「む?うんっ!僕がお嫁さん役やる!」
花婿修業がどんなものなのかわからないので、取り敢えずシモンの提案に素直にこくりこくり。
なるへそなるへそ、花嫁役と花婿役なるものがあるのだな。ふむふむ。
なんか楽しそう!わーいわーい!とぴょんぴょん跳ねる僕の背後で、兄様達が何やらこそこそと内緒話を始める。気になるけれど、聞いてもきっとよく分からないからスルーしておこう。
「チビのやつ、完全にシモンに騙されてやがるぜ……あいつチビの婿役がやりたいだけだろ」
「フェリが楽しそうなら構わない。シモンの次は俺がフェリの婿役だ」
「お前もかよ」
兄様達がこそこそと会話をする横で、シモンの隣にぴとっとしゃがみ込む。影から取り出される物たちをじーっと見つめて唇をへの字に。それにしても本当に荷物が大量だ……。
ぱちくり様子を窺い、やがてぴこーん!と閃いたこと。シモンが持ち上げようとしていた重そうな荷物。それとシモンの間にするーっと割って入り、ぐぬぬと持ち上げるべく腰を屈めた。
「フェリアル様!?駄目です!ちっちゃな体が潰れてしまいます!」
「大丈夫!これもお仕事なの。お嫁さんは旦那様をお手伝いして、癒しをあたえるんだよ」
「癒しなら四六時中与えられておりますが……」
絵本で培った知識をどどどやぁと披露する。
シモンの反応は思っていた『流石フェリアル様!すごいです天才です!』とは違い、何だかとっても困惑した様子。あれれ。
「僕、シモンに癒しをあたえるんだよ……?」
「あぁっ泣かないでっ!そんな顔も可愛らしいですから!いつでもどこでもフェリアル様は癒しの化身ですからっ!」
たくさんのもこもこお洋服や帽子が入った袋を持ち上げながらうるうる。ぷるぷると震える僕をシモンがむぎゅーっと抱き締めて、うりうりーっと頭に頬擦りした。あったかい、ぽかぽか。
「僕、きちんとお嫁さん役できてる……?」
「癒しを与えるのがお嫁さんなら、フェリアル様はいつでもお嫁さん出来てますよ。ごめんなさいフェリアル様。さっきはあまりに当然過ぎることを聞いてしまったので、少し困惑してしまったんです」
よしよしと頭を撫でられ、ほうっと息を吐く。
とりあえず、きちんとお嫁さん役が出来ているようなので安心した。これならライネスのお嫁さんに相応しい真のお兄さんになるまでそう時間は掛からないだろう。よきよき。
この調子でシモンと花嫁修業をして、旦那様に癒しを与えられるような人になって、お兄さんレベル最高位の真のお兄さんを目指さなくては。ぼくがんばる。
そうと決まれば!と瞳キラキラ。シモンからそろっと離れて、もう一度荷物の持ち上げに挑戦。
「ぐぬぬ……ぼくがんばるっ……シモンのお手伝いして、真のお兄さんになるっ……!」
これを部屋まで持っていくんだ。ぐぬぬ、ぐぬぅ……。
抜けない剣を引っ張るみたいに踏ん張る僕を見て、周りに立つみんながそわそわと応援してくれる。兄様達とお母様はがんばれーとエールを送ってくれるし、シモンも小さくガッツポーズだ。お父様はちーんしているけれど。
がんばる!がんばる!と踏ん張ること数秒。不意に荷物がふわっと軽くなって、まるで紙を持ち上げた時みたいな身軽さを感じてなぬっ!と瞬いた。
「む、むむっ!みてみてっ!軽い!僕できた!」
わーいわーいと荷物を持ち上げて万歳。なーんだ、こんなに軽いなら楽勝楽勝。えっへん。
ぽわぽわドヤ顔しながらとたたーっと階段を上って部屋へ向かう。その直前、兄様達が何やらコソコソ呟いたような気がした。
「……おい、あの触手……」
「黙れガイゼル。可愛いから合格だ。何も言うな」
441
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。