余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓

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フェリアル・エーデルス

381.つぎの約束

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 トラードは直ぐに見つかった。皇宮の入口付近で片っ端から人に声をかけ、何やら「うちの隊長知りませんか!?」と慌てた様子。
 それを見たローズ、視線をスーッと逸らして他人のフリ。だめだよローズ。探してくれていたみたいなんだから、きちんとありがとしようね。


「トラード。トラード。落ち着いて」

「ん、んっ!?あぁフェリちゃん!なんでここに……ってローズ!!おま、おまっ、どこ行ってやがったァ!」


 とてとてと近付いてつんつん。僕を見下ろしたトラードがびっくりしたように目を見開いて、そしてローズにふっと視線を移す。その瞬間くわっと瞳を見開いて忙しない声をわっと上げた。

 スンと無表情で立っているローズにドタドタ駆け寄り、飛び付くようにぎゅーっと抱き締める。感動の再会、よきよき。
 会えてよかったねーとローズをぽんぽん。ローズは塩対応にトラードをぱっと引き離して、乱れた軍服の裾をきっちり直した。


「……探したぞ。お前、一体何処で迷子になっていたんだ」

「全部こっちのセリフだが!?」


 驚愕のトラード。思っていた通り、やっぱり迷子はトラードじゃなくてローズの方だったらしい。
 まぁ確かに、窓から窓を伝って皇宮をひたすら移動して回っていたローズと、普通に入口付近に居ながら必死に相棒を探していたトラード。
 この状況は誰が見てもローズを迷子と判断する。というか、実際そうだろう。


「フラフラするな馬鹿!お前はもっと緊張感を持て!ったく目ェ離したらすぐ居なくなるんだから……」


 迷子を叱るお母さんみたいなトラード。それをツーンと聞く反抗期の息子みたいなローズ。うーむ仲良しでよきよき。


「ごめんねフェリちゃん……またコイツが迷惑かけたみたいで……」

「ううん、大丈夫。僕も入り口探してたから、一緒に探せてちょうど良かった」

「あ、フェリちゃんも迷子だったのね」


 迷子じゃないもん!ちょっとだけ道が分からなくなっただけもん!
 まったく失礼ねぷんすかとふすふす息巻いていると、不意に頭にぽんと手を置かれピタリと止まった。

 ふっと顔を上げる。僕の頭をなでなでしていたのはローズだった。もしかして、お礼のつもりなのだろうか。


「……トラードを見付けてくれて感謝する。ありがとう」

「いやそれ俺のセリフな」


 ローズのありがとう、珍しい!いつもは聞けない言葉を聞けて嬉しくてにまにま。
 トラードが何やらツッコミを入れているけれど、今は嬉しい気持ちでいっぱいだからサラッと聞き流した。


「ごめんね。僕がレオのところに案内してあげられればよかったんだけれど……」

「いや、トラードと合流してから報告に行こうとしていた。だから丁度良かった」


 ローズの返答にほっと息を吐く。よかった、きちんと役に立てたみたいで。
 初めは皇太子宮に案内しようと思っていたけれど、如何せん道を覚えていなくて教えることが出来なかった。それに、レオがまだあそこにいるとは限らない。

 その場合は皇宮を探し回ることになる。そんなことをすれば僕まで迷子になってしまう可能性大だ。それなら先にトラードと合流させようという結論に。
 結果的に判断が正解だったようなのでほっと一息だ。


「俺からもありがとう、フェリちゃん。コイツ一人だと突拍子も無いこと仕出かすから、あのまま一人にさせてたら不審者として捕まってたかも」


 流石ローズの相棒トラードだ。ローズのことをよくわかっている。
 トラードの言う通り、あのままだとローズは騎士達に捕まっていただろう。何せ道を変えるために窓を利用していたのだから。
 知らない人から見たら人探しだなんて到底信じられない。普通に窓から侵入してきた不審者だろう。

 そう考えたら、ちょうどあそこにいて本当に運が良かった。ローズを保護できて……って、こんなこと言ったらぐりぐりされちゃう。ぐりぐり。


「そうだ!丁度会えたし、今伝えとくよ。施設の奴らがずっとフェリちゃんと会いたがってるからさ、もし良かったら、暇な時に会いに来てやってくれないかな」


 施設の……ローズとトラードの家族たちのことか。むぅ懐かしい……。
 そういえばこっちに戻ってきてからは一度も会っていないし、ここらで会いに行くのもいいかも。アップルパイを作って、ローズ達とパーティ……ふむ、とっても楽しそう。

 またサプライズ作戦を考えるのもよき。楽しい予定が増えたことにむふふと頬を緩ませて、トラードの言葉にこくっと強く頷いた。


「絶対行く!楽しみ!」


 二ッと明快な笑顔を浮かべたトラードに頭をなでなでされる。むっ、きもちいいのう。


「よし、そんじゃ俺らはそろそろ行くよ。ローズに任せて進んだら夜になっちゃいそうだし」

「……おい」


 ぱっと離した手をひらひらっと振るトラード。遠回しに失礼なことを言うトラードの首をローズが腕でぐぎぎっと締め上げた。くるしそう。
 トラードはぐぬぬと苦しそうにローズの腕から抜け出して、最後にもう一度僕にひらひら。ローズの手首をしっかり掴んで歩き出す姿はさながら迷子を確保するお母さんだ。

 ばいばーいと見送って安堵の一息。なんだかどっと疲れたような……ちょっぴり動きすぎたかな。もっと体力をつけないと。


「ふすぅ……」

「フェリアル様。帰ったらチーズケーキを食べて休憩しましょうか」

「むっ、うむ!」


 息をついた時、影からコソッと聞こえた声にこくこく頷いた。るんるん。チーズケーキチーズケーキ、むふふ。
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