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32,誕生日の衣装選び
しおりを挟む僕の髪は真っ白で、雪みたいだとよく言われる。
瞳は金色。兄様には宝石みたいだって言われるけど、それなら僕と同じ兄様の瞳も宝石だろう。
けど何かが違うらしい。僕が同じだって言ったら、なぜかすぐに否定されてしまった。
僕のは宝石だけど自分のは石ころだとか何とか。兄様は頭がいいけど、たまにおかしなことを言うのだ。
まぁそんなことはどうでもいい。
いや兄様の瞳はどうでもよくないよ?どうでもいいのは僕の瞳が宝石みたいでなんたらかんたら~っていう話題のことね。
なんで突然容姿を再確認したかと言うと、この真っ白の髪と金色の瞳のせいで、今ちょっとめんどくさいことが起こっているからだ。
「やはりシルビオ様には濃緑が最も似合うかと。純白の御髪と相俟って、森の精霊の如く豊かで涼やかな印象を纏わせることが出来るはずです。ベースは深碧、ネクタイは孔雀緑など如何でしょうか」
「いいや、シルにはそれこそ純白が似合うはずだよ。フリルやレースを多めにして、ジャケットに宝石も散らばせよう。白なら美しい金色の瞳を際立たせる事も出来る。シルの本来の輝かさを殺さない控えめな純白で行くべきだと思うね」
「いいえ御二方、ここはあえて黒を選ぶべきです。シルビオ様の天使の如き純白を強調させる為には漆黒が最適かと。穢れを知らぬ白銀を包む真夜中の妖艶を連想させる漆黒。背徳感もありますし……コホンッ、フレンセン家の象徴でもある漆黒を纏うことにもなりますし、やはり黒が最適と存じます!」
えぇー、初めのセリフから順に、仕立屋のペーターさん、兄様、エリルです。
いや二人はともかくエリルは何で混ざってるんだ……しかも一番長文だし。
護衛だからって除け者にする気はないけどね?ないけど……ここは違くない?いま何の時間だと思ってるの。
はい、なんの時間なのか。ずばり僕の誕生日パーティー衣装選びだ!
例の拉致事件からしばらく。
捜査が一向に進展を見せない中でも僕はどんどん回復し、ようやく部屋を出ることを許可されるまでになった。
というわけで、もうすぐ迫る誕生日パーティーのため、主役となる僕の衣装選びをしようと兄様に提案されたのが事の発端である。
だがしかし……もう会話で大体お察しだと思うが、この通りまったく議論が進んでいない。
僕は仕立屋さんに全部任せるって言ったんだ。いや、僕その……服のセンスないからさ。
前世でも母さんが買ってくれたTシャツばっかり着てたんだ。クマがプリントされたやつとか車がプリントされたやつとか。
ちゃんとした服……オシャンティーな服は着たことがない。
ジャケットやらベストやらなんやら、ファッションに疎い僕にとってはもう別世界だ。ここ別世界だけど。
というわけで、仕立屋さんが邸に来た時すぐに言った。コーディネートはお任せします!って。
それを聞いていた兄様が目を見開いて近付いてきて僕に問い掛けた。服、選んでもいいの??と。
いやいいけど、僕はペーターさんに言ったんだけどなぁ……。
やっぱあれかな、弟の服選びってやってみたいもんなんかな。確かにもし可愛い妹が居たらって考えたら分からんこともない。僕も妹の服選んであげたい。
「まったく。帝都一の仕立屋と聞いて呼び出したのに、実際はこの程度の実力だったのか。がっかりだよ」
「……あの人、どんな仕立屋連れて来ても同じこと言うんだろうなぁ」
やれやれと言うように首を振る兄様。
そんな兄様を見て呆れたようにそう呟いたのは、僕の背後に控える護衛のラルクだ。隣のケイコウペアもうんうんと頷いている。
まぁそうだね、僕もそう思うよ。兄様ってほんとにブラコンだからなぁ。
唯一認める時があるとすれば、兄様と同じ純白の意見を持つ仕立屋だけだろう。
「ちなみに、シルビオ様はどんな服がお好みですか?」
「色やフリルの加減、襟の形など、どんなものがお好みでしょう?」
ケイに続きコウも聞いてくる。ラルクも興味津々って顔だ。
いやぁ、僕はそういうのよく分からないからなぁ。でもそうだな、しいて言うなら……
「フリルとかレースとかは控えめにしてほしいな」
「えぇ、なんでっすか?絶対似合うのに」
「だって、女の子みたいでしょ?僕は男だよ、どうせならカッコイイ服がいいな」
「なるほど。ではもしかして白色も?」
「うん、あんまり。白ってどう考えてもかわいいし、それなら黒の方がいいかも。黒ってカッコイイから」
部屋の中心で議論を交わしていた三人がバッ!と振り返った。
ありゃ、聞こえてたか。確かにそんな距離離れてないからな。普通の声の大きさで喋っちゃってたし。
ペーターさんが瞳をうるうるさせて泣きそうな顔でこっち見てる。会話にすらならなかった濃緑を思い出して悲しくなっているんだろう。
ごめんね……実は僕、緑はそれほどなんだ。好きでも嫌いでもないっていうか。
兄様はガーン!!という効果音が聞こえてきそうなほど絶望的な表情を浮かべていた。落ち込んでいるのが目に見えて分かる。
ごめんね兄様。白もとってもいいと思うんだけど、前世の自分を思い出してどうしても躊躇いが勝っちゃうんだ。
だってほら、普通のどこにでもいる平々凡々な男子学生だったからさ。白ってお姫様の色、みたいな印象が強いんだ。男なら王子様、とか。
今の自分の容姿はなかなかのもんだと思ってるけど、意識はどうにもならない。
容姿に白が似合ってても、僕の意識は黒を求めてる!!
「シルビオ様!流石はシルビオ様です、自らに最も似合う色を熟知してらっしゃるとは!」
感動いたしました!と目を輝かせるエリル。
そんなエリルを憎々しげに睨む兄様と、悔しそうに顔を歪めるペーターさん。なんか、僕が適当に言ったばかりにごめんね……。
いやでも、ほんとにどんな服でもいいんだよ?白でも緑でも黒でもなんでも。
「うーむ、ミューはどう思う?」
「ミャー?」
腕の中に抱いていた猫を見下ろす。
ほんとは連れてきちゃダメって言われていたけど、ミューがめちゃくちゃ僕についていきたそうに扉を爪でカリカリ攻撃してたから連れてきたのだ。
ミューは腕の中からスタッと飛び降り、とたとたと三人の元へ向かう。
テーブルに乗ってレースやフリル、色の種類が載った資料を見下ろすと、肉球をぺたっとある一箇所に乗っけた。
「なになにー?これ、リボン?しかも、赤……」
「ミャー」
「あぁそっか、ミューの目とおんなじ色だもんね」
ぱちぱちと目を瞑って鳴くミュー。
どうやら自分の目が赤だから僕のリボンも赤くしろということらしい。何それ可愛い。
「赤いリボン、いいね」と答えると、ミューは機嫌良さそうにゴロゴロ鳴いた。
耳もピクピクしてるし、尻尾もゆるりと揺れている。
おーいおい、かわいすぎかー?
「ペーターさんっ!僕リボンは赤がいいな!」
「へ、あ、あぁ、はいっ」
ペーターさんが、持っていたメモ帳にササッと何やらメモる。
ボーッしていた兄様とエリルがハッとすると、三人はまたこうじゃないあぁじゃないと議論を再開しはじめた。
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