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リアーナ・フィオールの婚約〜After Story〜
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【あらすじ】
「何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました」の主人公の妹リアーナ・フィオールのAfter Storyです!
リアーナに舞い込む婚約話。
政略結婚だと思ったが、相手は本当にリアーナを愛しているようで。
聖女でも、悪女でも、幸せになっても良いでしょう?
【登場人物】
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
カイン・エイヴィン・・・エイヴィン伯爵家の次男。能力は持っていない。
【本文】
あの日のお姉様の言葉が今も忘れられない。
「リアーナ、悪女になりたいのなら徹底的になりなさい」
「それでは、ただの私の可愛い妹ですわ」
「だって私、リアーナが大好きですもの」
その言葉がどれほどの優しさか分からないほど私は子供ではなかったし、
きっと私が思うよりずっと私はお姉様が嫌いではなかったのだと今なら分かる。
姉であるティアナ・フィオールが学園を卒業して一ヶ月が経った。
私は、学園で三年生になっていた。
学園では暫くの休暇があり、私はフィオール家に帰省していた。
そんなある日、フィオール家に一通の手紙が届いた。
私、リアーナ・フィオールへの婚約の申し込みである。
いつかこんな日が訪れることは理解していた。
もうロイド様への思い入れもない。
いや本当は始めから愛されたかっただけで、ロイド様を本当に愛してなどいなかったのかもしれない。
ただ皆が羨《うらや》むような愛を受け取りたかっただけなのだろうか。
このまま家同士の婚約を受け入れ、自分の幸せを諦めるの?
本当の愛を見つけたロイド様とお姉様は、あまりにも輝いて見えた。
私だって・・・そう、思ってしまう自分が嫌になる。
私はお姉様みたいに良い子でも優しい子でもない。
自分の性格の悪さなど、私が一番分かっているわ。
そんな思いを抱えながら、婚約についての話でお父様に呼び出された私は、お父様の部屋をノックする。
「お父様、リアーナで御座います」
「入れ」
相変わらず、私に興味など持って下さらないお父様。
きっと婚約を断ることなどしないだろう。
そう思っていた。
「今回の婚約を受け入れるつもりはない。リアーナ、暫く様子を見て、時が来たら上手く断りなさい」
「えっと・・・」
「今回の婚約の申し込みは、エイヴィン伯爵家の次男からだ。長男でもない伯爵家の次男など、我がフィオール公爵家に釣り合わない」
「分かりましたわ」
上手く言葉が出てこない。
知らない貴族と婚約しなくて良い安堵と、お父様の冷たい考え。
相反《あいはん》する感情に、身体が凍りつきそうだった。
「とりあえず今日は顔合わせを申し込まれている。すぐに断っては角が立つ。リアーナ、上手くやりなさい」
「はい」
お父様の部屋を出た私は、ため息をついた。
「もう、どうしたらいいのか分からないわ・・・」
私に婚約を申し込んだのは、カイン・エイヴィン様。
エイヴィン伯爵家の次男では、婚約を断られる可能性も理解していただろう。
たとえ断られたとしても、フィオール公爵家との繋がりが欲しかったのだろうか。
丁度お昼を過ぎた頃。
カイン・エイヴィン様が我がフィーオール家を訪ねて来た。
震える手を抑えながら客間の扉をノックする。
扉を開けると、黒髪の優しそうでありながらも凛とした顔つきの青年が立っていた。
「リアーナ・フィオールに御座います」
私が礼をすると、カイン様は優しく微笑んだ。
「カイン・エヴァンです。リアーナ嬢、早速で申し訳ないが私と婚約してほしい」
カイン様は深く頭を下げた。
「それは・・・」
「私は伯爵家次男だ。リアーナ嬢に釣り合わないことは分かっている・・・ねぇ、リアーナ嬢。この本を覚えているか?」
カイン様が私に差し出した本に見覚えはない。
「この本は私の宝物でね。しかし、ある日不注意で破れてしまったんだ。そこにリアーナ嬢が通りかかって、能力を使って直してくれた」
ああ、そうだわ。
あの時の私は、ロイド様と結ばれるために自身の評判を上げたかった。
「無能の聖女」ではなく、「慈悲深い聖女」と呼ばれるために必死だった。
「この本を直してくれたリアーナ嬢が、本当に輝いて見えたんだ」
取り繕った私を愛してしまったとでもいうのだろうか。
あれはただ、醜い私が自分を偽っていただけ。
しかし、それでもこの人が私に婚約を申し込むほど好きになってしまったというのなら、ちゃんと向き合おう。
「カイン様、私の話を聞いて下さいますか?」
私はお姉様に嫉妬していたこと、ロイド様の愛を求めていたこと、自分の利益のために能力を使っていたことを正直に話した。
きっと、失望される。
そんなことは分かっているわ。
だって、私はお姉様にみたいに美しくないもの。
しかし、カイン様は優しく微笑んだままだった。
「リアーナ嬢、本を直した後に君はなんて言ったと思う?」
「え・・・?」
「『貴方の大事なものを直せたのなら、この能力も悪くはないですわ』って微笑んだんだ」
「それは、少しでも皆に良く思われるために・・・!」
「リアーナ嬢、君は姉君への当てつけに、皆のために能力を使い、領地を見てまわり、皆を助けたと?」
「・・・そうですわ」
「ならば、君はやはり優しい人だ」
「どういう意味ですか・・・?」
「だって、姉君を陥《おとしい》れる方法など他に沢山あるだろう?それでも、君は優しい方法をとった」
「しかし!」
「もし君を悪人だという者がいるのなら、私が君の代わりに怒ろう」
ポロポロと涙が溢れるのが、自分で分かった。
駄目なのに。
お父様にはカイン様との婚約を断るよう、命じられている。
それでも、きっとこの人なら私の醜い部分も受け入れてくれるような気がした。
「私、お姉様に意地悪なことだってしましたわ!それに、それに・・・!」
「リアーナ嬢、それで姉君は君を嫌っていると言ったのか?」
「・・・言いませんわ。お姉様は優しいですもの・・・」
「違うよ。リアーナ嬢は勘違いをしている。きっと姉君は、君が優しい人間だと知っているだけだ」
「・・・優しくて、努力家な君を私も知っている。あの日から君に目を奪われてばかりだ」
カイン様が私の頬の涙をハンカチで拭った。
「リアーナ嬢、君を必ず幸せにすること誓おう。どうか、私と結婚してくれ」
「君が心から笑えるように、ずっと君の隣で一緒に歩もう」
それは昔読んだ絵本の王子様より格好良くて、素敵な台詞だった。
その時、ふとお姉様の言葉がよぎった。
「リアーナ、悪女になりたいのなら徹底的になりなさい。リアーナ、貴方は悪女には程遠い。それでは、ただの私の可愛い妹ですわ」
お姉様の言葉を思い出し、私はある決意をする。
「ふふっ」
「リアーナ嬢?」
「カイン様、私、今から悪女になってきますわ」
「え・・・?」
「少し、待っていて下さいませ」
私は客間を飛び出し、お父様の部屋の扉をノックする。
「お父様、リアーナですわ」
「なんだ」
私はお父様の前で深く礼をした。
「お父様、私、自分の幸せは自分で決めますわ。もうお父様の愛も求めない。認められるためなら、全てを受け入れることもしませんわ」
「そういう意味だ?」
「お父様、私は『聖女』としての地位を確立しましたわ。フィオール家に相応しい淑女になりました・・・ですから、政略結婚などしなくてもフィオール家の利益になってみせますわ」
「つまり、愛のある結婚をさせろと?」
「ええ。お父様も聖女である私にフィオール家を出られては困るでしょう?」
まるで悪女でしょう?
しかし嬉しいことに、もう私を悪女でも良いという人がいるのよ。
怖いものなんてもう何もないの。
「好きにしろ」
お父様はただ一言だけそう仰った。
それで、十分だった。
客間に戻った私は、カイン様に微笑んだ。
「ねぇ、カイン様。私、愛のある結婚がしたいですわ。私に愛を教えて下さいますか?」
「私を落とすのは結構難しいかもしれませんけど」
カイン様は嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、喜んで君に愛を教えよう」
ねぇ、カイン様。
知っていますか?
私の能力ではなく、言葉が嬉しかったと言われたのは初めてなのです。
きっともう私も愛を知り始めている。
聖女でも、悪女でも、幸せになっても良いでしょう?
だって、自分の人生を歩めるのは私だけなのだから。
fin.
「何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました」の主人公の妹リアーナ・フィオールのAfter Storyです!
リアーナに舞い込む婚約話。
政略結婚だと思ったが、相手は本当にリアーナを愛しているようで。
聖女でも、悪女でも、幸せになっても良いでしょう?
【登場人物】
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
カイン・エイヴィン・・・エイヴィン伯爵家の次男。能力は持っていない。
【本文】
あの日のお姉様の言葉が今も忘れられない。
「リアーナ、悪女になりたいのなら徹底的になりなさい」
「それでは、ただの私の可愛い妹ですわ」
「だって私、リアーナが大好きですもの」
その言葉がどれほどの優しさか分からないほど私は子供ではなかったし、
きっと私が思うよりずっと私はお姉様が嫌いではなかったのだと今なら分かる。
姉であるティアナ・フィオールが学園を卒業して一ヶ月が経った。
私は、学園で三年生になっていた。
学園では暫くの休暇があり、私はフィオール家に帰省していた。
そんなある日、フィオール家に一通の手紙が届いた。
私、リアーナ・フィオールへの婚約の申し込みである。
いつかこんな日が訪れることは理解していた。
もうロイド様への思い入れもない。
いや本当は始めから愛されたかっただけで、ロイド様を本当に愛してなどいなかったのかもしれない。
ただ皆が羨《うらや》むような愛を受け取りたかっただけなのだろうか。
このまま家同士の婚約を受け入れ、自分の幸せを諦めるの?
本当の愛を見つけたロイド様とお姉様は、あまりにも輝いて見えた。
私だって・・・そう、思ってしまう自分が嫌になる。
私はお姉様みたいに良い子でも優しい子でもない。
自分の性格の悪さなど、私が一番分かっているわ。
そんな思いを抱えながら、婚約についての話でお父様に呼び出された私は、お父様の部屋をノックする。
「お父様、リアーナで御座います」
「入れ」
相変わらず、私に興味など持って下さらないお父様。
きっと婚約を断ることなどしないだろう。
そう思っていた。
「今回の婚約を受け入れるつもりはない。リアーナ、暫く様子を見て、時が来たら上手く断りなさい」
「えっと・・・」
「今回の婚約の申し込みは、エイヴィン伯爵家の次男からだ。長男でもない伯爵家の次男など、我がフィオール公爵家に釣り合わない」
「分かりましたわ」
上手く言葉が出てこない。
知らない貴族と婚約しなくて良い安堵と、お父様の冷たい考え。
相反《あいはん》する感情に、身体が凍りつきそうだった。
「とりあえず今日は顔合わせを申し込まれている。すぐに断っては角が立つ。リアーナ、上手くやりなさい」
「はい」
お父様の部屋を出た私は、ため息をついた。
「もう、どうしたらいいのか分からないわ・・・」
私に婚約を申し込んだのは、カイン・エイヴィン様。
エイヴィン伯爵家の次男では、婚約を断られる可能性も理解していただろう。
たとえ断られたとしても、フィオール公爵家との繋がりが欲しかったのだろうか。
丁度お昼を過ぎた頃。
カイン・エイヴィン様が我がフィーオール家を訪ねて来た。
震える手を抑えながら客間の扉をノックする。
扉を開けると、黒髪の優しそうでありながらも凛とした顔つきの青年が立っていた。
「リアーナ・フィオールに御座います」
私が礼をすると、カイン様は優しく微笑んだ。
「カイン・エヴァンです。リアーナ嬢、早速で申し訳ないが私と婚約してほしい」
カイン様は深く頭を下げた。
「それは・・・」
「私は伯爵家次男だ。リアーナ嬢に釣り合わないことは分かっている・・・ねぇ、リアーナ嬢。この本を覚えているか?」
カイン様が私に差し出した本に見覚えはない。
「この本は私の宝物でね。しかし、ある日不注意で破れてしまったんだ。そこにリアーナ嬢が通りかかって、能力を使って直してくれた」
ああ、そうだわ。
あの時の私は、ロイド様と結ばれるために自身の評判を上げたかった。
「無能の聖女」ではなく、「慈悲深い聖女」と呼ばれるために必死だった。
「この本を直してくれたリアーナ嬢が、本当に輝いて見えたんだ」
取り繕った私を愛してしまったとでもいうのだろうか。
あれはただ、醜い私が自分を偽っていただけ。
しかし、それでもこの人が私に婚約を申し込むほど好きになってしまったというのなら、ちゃんと向き合おう。
「カイン様、私の話を聞いて下さいますか?」
私はお姉様に嫉妬していたこと、ロイド様の愛を求めていたこと、自分の利益のために能力を使っていたことを正直に話した。
きっと、失望される。
そんなことは分かっているわ。
だって、私はお姉様にみたいに美しくないもの。
しかし、カイン様は優しく微笑んだままだった。
「リアーナ嬢、本を直した後に君はなんて言ったと思う?」
「え・・・?」
「『貴方の大事なものを直せたのなら、この能力も悪くはないですわ』って微笑んだんだ」
「それは、少しでも皆に良く思われるために・・・!」
「リアーナ嬢、君は姉君への当てつけに、皆のために能力を使い、領地を見てまわり、皆を助けたと?」
「・・・そうですわ」
「ならば、君はやはり優しい人だ」
「どういう意味ですか・・・?」
「だって、姉君を陥《おとしい》れる方法など他に沢山あるだろう?それでも、君は優しい方法をとった」
「しかし!」
「もし君を悪人だという者がいるのなら、私が君の代わりに怒ろう」
ポロポロと涙が溢れるのが、自分で分かった。
駄目なのに。
お父様にはカイン様との婚約を断るよう、命じられている。
それでも、きっとこの人なら私の醜い部分も受け入れてくれるような気がした。
「私、お姉様に意地悪なことだってしましたわ!それに、それに・・・!」
「リアーナ嬢、それで姉君は君を嫌っていると言ったのか?」
「・・・言いませんわ。お姉様は優しいですもの・・・」
「違うよ。リアーナ嬢は勘違いをしている。きっと姉君は、君が優しい人間だと知っているだけだ」
「・・・優しくて、努力家な君を私も知っている。あの日から君に目を奪われてばかりだ」
カイン様が私の頬の涙をハンカチで拭った。
「リアーナ嬢、君を必ず幸せにすること誓おう。どうか、私と結婚してくれ」
「君が心から笑えるように、ずっと君の隣で一緒に歩もう」
それは昔読んだ絵本の王子様より格好良くて、素敵な台詞だった。
その時、ふとお姉様の言葉がよぎった。
「リアーナ、悪女になりたいのなら徹底的になりなさい。リアーナ、貴方は悪女には程遠い。それでは、ただの私の可愛い妹ですわ」
お姉様の言葉を思い出し、私はある決意をする。
「ふふっ」
「リアーナ嬢?」
「カイン様、私、今から悪女になってきますわ」
「え・・・?」
「少し、待っていて下さいませ」
私は客間を飛び出し、お父様の部屋の扉をノックする。
「お父様、リアーナですわ」
「なんだ」
私はお父様の前で深く礼をした。
「お父様、私、自分の幸せは自分で決めますわ。もうお父様の愛も求めない。認められるためなら、全てを受け入れることもしませんわ」
「そういう意味だ?」
「お父様、私は『聖女』としての地位を確立しましたわ。フィオール家に相応しい淑女になりました・・・ですから、政略結婚などしなくてもフィオール家の利益になってみせますわ」
「つまり、愛のある結婚をさせろと?」
「ええ。お父様も聖女である私にフィオール家を出られては困るでしょう?」
まるで悪女でしょう?
しかし嬉しいことに、もう私を悪女でも良いという人がいるのよ。
怖いものなんてもう何もないの。
「好きにしろ」
お父様はただ一言だけそう仰った。
それで、十分だった。
客間に戻った私は、カイン様に微笑んだ。
「ねぇ、カイン様。私、愛のある結婚がしたいですわ。私に愛を教えて下さいますか?」
「私を落とすのは結構難しいかもしれませんけど」
カイン様は嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、喜んで君に愛を教えよう」
ねぇ、カイン様。
知っていますか?
私の能力ではなく、言葉が嬉しかったと言われたのは初めてなのです。
きっともう私も愛を知り始めている。
聖女でも、悪女でも、幸せになっても良いでしょう?
だって、自分の人生を歩めるのは私だけなのだから。
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