旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪

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4.セルトの部屋での勝負1

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セルト様の部屋は無駄なものが一切置いていない部屋だった。

何も置いていないからこそ片付いているような部屋。

だからこそどこか寂しさを感じてしまう。

セルト様がメイドに紅茶を二つ入れさせて、メイドを退室させる。

セルト様の自室には正真正銘私とセルト様の二人しか存在していなかった。

私は紅茶を一口飲んでから、背筋を今一度伸ばして微笑んだ。


「セルト様、ある勝負をしませんか?」


セルト様が紅茶に向けていた顔をすぐにこちらに向ける。

「逃げなければ勝ち。という単純な勝負ですわ」

「どういう意味だ?」

「簡単です。この部屋から先に出た方が負けですわ」

私の勝負の内容にセルト様の表情に疑問が浮かんでいる。

「ここは私の部屋だ。私が逃げるとはどういうことだ?」

「それは勝負が始まってからのお楽しみですわ。ここはセルト様の部屋。先に出ていく可能性はどう考えても私の方が高いでしょう。こんな有利な勝負なら逃げはしませんよね?」

私の挑発的な言葉にセルト様が私の瞳をじっと見つめる。

まるで瞳の奥から私の思惑全て見透かされているような気持ちになる。



「むしろ君の部屋でおこなってくれても良いくらいだ」



「それでこそ私が勝負を仕掛けるに相応しい旦那様ですわ」



私は残っていた紅茶を飲み干して、カップをテーブルに戻す。

「勝負に勝った方が相手に一つ願いを聞いて貰える。簡単でしょう? もしセルト様が勝利したら、セルト様が望むことを私が出来る限りの力を使って叶えてあげますわ」

「レシール、本気で言っているのか?」

「ふふっ、私はいつだって本気ですわ。その代わり、私が勝った場合はセルト様が叶える側ですわよ?」

「分かっている」

セルト様の紅茶もすでに空になっていた。








「では、ゲームスタートとしましょう?」








その瞬間、私はセルト様をソファでそのまま押し倒した。

「レシール……!?」

「あら、もう逃げますか?」

「っ!」

セルト様もこれが私の作戦だと気づいたらしい。

セルト様が勝った場合の要望を私が分からないのと同様に、セルト様も私が何を望むのかを知らない。

ここで負けるのはお互いリスクだと分かっているのだろう。

さて、ここで口付けの一つでもすれば女性が苦手なセルト様は逃げるかしら?

うーん、しかし女性が苦手な方に口付けをするのはいくら勝負といえど狡いかしら?

狡いことはしたくないわね……。

動きが止まった私を見て、私が考えていることをセルト様は悟ったらしい。





「レシール、勝負に情けは要らない」





その紳士らしい言葉に私は一瞬動きが止まってしまった。

その対応にセルト様は子供がいたずらをする時のような笑顔に変わった。




「案外、レシールも可愛いところがあるな。レシール、もう一度言う。勝負に情けは要らない」

「何故なら……」







「私も手加減をするつもりはないから」







その瞬間セルト様は腕にグッと力を込めて起き上がり、逆に私を押し倒した。
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