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第一章:「召喚と追放」
第7話:勇者隊の影
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日が傾き、森を金色の光が包んでいた。
村の再建は順調だった。
家々には新しい屋根がつき、井戸には水が満ち、獣人たちはようやく“明日”を口にするようになった。
篠原蓮は村の外れで、壊れた金属の塊を前に座っていた。
古びた魔道具――かつて王国の魔導士が作った「防衛結界装置」の残骸だ。
「これが動けば、村の外周を守れるんだよな?」
「うん。でも壊れてもう何年も経つ。魔力回路が焼けてて、誰にも直せなかった」
リアが腰を下ろしながら言う。
蓮は頷き、装置に手をかざした。
《リサイクル発動――対象:魔導防壁装置》
《再構築・魔力循環ルート検出中……》
淡い光が、焦げた金属の内部を走る。
壊れた魔石が修復され、細い魔力の線が蜘蛛の巣のように繋がっていく。
次の瞬間、地面に光の陣が浮かび上がった。
ぼんっ、と小さな爆音。
リアがびくっと肩を跳ねさせる。
「うわっ、今の音なに!?」
「大丈夫。起動の反応だ」
光の陣が拡大し、村の外周をゆっくりと包み込んでいく。
透明な膜のような結界が張られ、風が止まった。
リアの金の瞳が見開かれる。
「……すごい……本当に、村全体が覆われてる」
「これで、外からの襲撃はしばらく防げるはずだ」
「やっぱり、あんたって……ただの人間じゃないよな」
「いや、普通の人間だよ。ちょっと“しつこい”だけだ」
蓮が笑うと、リアは呆れたように笑い返した。
――それは、戦いの後で初めて見る、本当の笑顔だった。
⸻
だが、その光景は遠く離れた場所からも目撃されていた。
王都アルゼリア。
中央塔の展望台。
巨大な水晶鏡の前で、神崎悠真は険しい表情を浮かべていた。
鏡の中には、森の上に広がる青い結界――蓮が作り上げた防壁が映っている。
「……あれが、篠原蓮の仕業だと?」
「はい。監視の魔眼が捉えました。王都の防御結界に匹敵する出力です」
側に控える魔導士が震え声で答える。
「最弱スキル《リサイクル》が、どうしてそんな力を……?」
「スキルの進化、あるいは……異世界の干渉かと」
悠真の唇が歪む。
「進化? Eランクのスキルが? ふざけるな」
その手が聖剣の柄を強く握る。
刃の中から、聖なる光が漏れ出した。
「俺が“選ばれた勇者”だ。
あいつは落ちこぼれ。俺の影にすらなれないはずの存在……!」
怒りが声を震わせる。
玲奈がそっと近づき、彼の手を取ろうとした。
「悠真くん、もういいじゃない。彼は彼で……」
「玲奈、何もわかってない!」
振り払われた手が宙を切る。
玲奈の瞳に、わずかな悲しみが宿った。
悠真は聖剣を掲げ、低く呟く。
「女神アリアよ。我が敵に“正しき裁き”を」
刃が光を放ち、天井にまで届く。
その光は王都中に広がり、“勇者の覚醒”を知らせる鐘が鳴った。
⸻
一方そのころ、森の村では――。
防衛結界の完成により、村人たちはようやく安心して眠ることができるようになっていた。
焚き火の傍で、リアが毛布にくるまってうとうとしている。
蓮はその横で、修理中の魔道具を手に取りながら呟いた。
「これで少しは、みんなが休めるな」
「うん……蓮のおかげ」
「いや、君たちが守ったんだよ。俺はその手伝いをしただけ」
リアが目を開け、金色の瞳で彼を見つめる。
「……本当にそう思ってるの?」
「うん?」
「人を助けるのに、見返りを求めないやつなんて、そういない。
でも、あんたは……壊れたものを見ると、放っておけないんだな」
蓮は笑いながら肩をすくめる。
「まあ、性分みたいなもんだ」
焚き火の火がぱちぱちと弾ける。
静かな時間が流れた。
だが、森の風が不意にざわめいた。
リアの耳がぴくりと動く。
「……誰か、いる」
「敵か?」
「気配は一人。でも、人間の匂い」
リアが立ち上がり、短剣を抜く。
蓮も剣を構え、木々の奥を見据えた。
そこに現れたのは、ローブを纏った若い男。
額に王国の紋章が刻まれている。
「――篠原蓮。貴様に王国からの命が下った」
「命?」
「異端者としての召喚命令だ。
勇者神崎悠真様の名において、貴様を拘束する」
蓮の表情が冷たくなる。
「勇者、ね……。俺を見捨てた男の名前を、もう一度聞くとは思わなかった」
男が杖を構え、魔法陣を展開する。
「抵抗するならば、容赦はしない」
「そうか」
蓮は静かに剣を持ち上げる。
青白い光が刃に走った。
「なら、容赦する気もない」
次の瞬間、光の閃きが夜を裂いた。
風が逆巻き、魔法陣が砕け散る。
ローブの男が驚愕の表情を浮かべ、膝をついた。
「な……何だ、この力……!」
「“再利用”だ。お前の魔法陣、壊れてたから直してやったよ。
――俺の形に、な」
地面に蓮の紋章が浮かぶ。
青い鎖のような光が男を拘束し、意識を奪う。
リアが呆れたように呟く。
「ほんと、便利なスキルだな」
「壊すより、直す方が性に合ってるだけさ」
蓮は倒れた男の杖を拾い上げた。
ひび割れた杖を《リサイクル》し、再生する。
そこから生まれたのは、精霊のような淡い光。
リアが見とれるように呟いた。
「綺麗……」
「これが、“再利用された命”だ」
蓮は微笑み、空へと光を放つ。
だがその瞬間、遠く王都の空でも同じ光が一瞬、輝いた。
悠真がその光を見上げ、唇を歪める。
「見てろよ、篠原蓮。
その“再生の力”――俺が全部、奪ってやる」
村の再建は順調だった。
家々には新しい屋根がつき、井戸には水が満ち、獣人たちはようやく“明日”を口にするようになった。
篠原蓮は村の外れで、壊れた金属の塊を前に座っていた。
古びた魔道具――かつて王国の魔導士が作った「防衛結界装置」の残骸だ。
「これが動けば、村の外周を守れるんだよな?」
「うん。でも壊れてもう何年も経つ。魔力回路が焼けてて、誰にも直せなかった」
リアが腰を下ろしながら言う。
蓮は頷き、装置に手をかざした。
《リサイクル発動――対象:魔導防壁装置》
《再構築・魔力循環ルート検出中……》
淡い光が、焦げた金属の内部を走る。
壊れた魔石が修復され、細い魔力の線が蜘蛛の巣のように繋がっていく。
次の瞬間、地面に光の陣が浮かび上がった。
ぼんっ、と小さな爆音。
リアがびくっと肩を跳ねさせる。
「うわっ、今の音なに!?」
「大丈夫。起動の反応だ」
光の陣が拡大し、村の外周をゆっくりと包み込んでいく。
透明な膜のような結界が張られ、風が止まった。
リアの金の瞳が見開かれる。
「……すごい……本当に、村全体が覆われてる」
「これで、外からの襲撃はしばらく防げるはずだ」
「やっぱり、あんたって……ただの人間じゃないよな」
「いや、普通の人間だよ。ちょっと“しつこい”だけだ」
蓮が笑うと、リアは呆れたように笑い返した。
――それは、戦いの後で初めて見る、本当の笑顔だった。
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だが、その光景は遠く離れた場所からも目撃されていた。
王都アルゼリア。
中央塔の展望台。
巨大な水晶鏡の前で、神崎悠真は険しい表情を浮かべていた。
鏡の中には、森の上に広がる青い結界――蓮が作り上げた防壁が映っている。
「……あれが、篠原蓮の仕業だと?」
「はい。監視の魔眼が捉えました。王都の防御結界に匹敵する出力です」
側に控える魔導士が震え声で答える。
「最弱スキル《リサイクル》が、どうしてそんな力を……?」
「スキルの進化、あるいは……異世界の干渉かと」
悠真の唇が歪む。
「進化? Eランクのスキルが? ふざけるな」
その手が聖剣の柄を強く握る。
刃の中から、聖なる光が漏れ出した。
「俺が“選ばれた勇者”だ。
あいつは落ちこぼれ。俺の影にすらなれないはずの存在……!」
怒りが声を震わせる。
玲奈がそっと近づき、彼の手を取ろうとした。
「悠真くん、もういいじゃない。彼は彼で……」
「玲奈、何もわかってない!」
振り払われた手が宙を切る。
玲奈の瞳に、わずかな悲しみが宿った。
悠真は聖剣を掲げ、低く呟く。
「女神アリアよ。我が敵に“正しき裁き”を」
刃が光を放ち、天井にまで届く。
その光は王都中に広がり、“勇者の覚醒”を知らせる鐘が鳴った。
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一方そのころ、森の村では――。
防衛結界の完成により、村人たちはようやく安心して眠ることができるようになっていた。
焚き火の傍で、リアが毛布にくるまってうとうとしている。
蓮はその横で、修理中の魔道具を手に取りながら呟いた。
「これで少しは、みんなが休めるな」
「うん……蓮のおかげ」
「いや、君たちが守ったんだよ。俺はその手伝いをしただけ」
リアが目を開け、金色の瞳で彼を見つめる。
「……本当にそう思ってるの?」
「うん?」
「人を助けるのに、見返りを求めないやつなんて、そういない。
でも、あんたは……壊れたものを見ると、放っておけないんだな」
蓮は笑いながら肩をすくめる。
「まあ、性分みたいなもんだ」
焚き火の火がぱちぱちと弾ける。
静かな時間が流れた。
だが、森の風が不意にざわめいた。
リアの耳がぴくりと動く。
「……誰か、いる」
「敵か?」
「気配は一人。でも、人間の匂い」
リアが立ち上がり、短剣を抜く。
蓮も剣を構え、木々の奥を見据えた。
そこに現れたのは、ローブを纏った若い男。
額に王国の紋章が刻まれている。
「――篠原蓮。貴様に王国からの命が下った」
「命?」
「異端者としての召喚命令だ。
勇者神崎悠真様の名において、貴様を拘束する」
蓮の表情が冷たくなる。
「勇者、ね……。俺を見捨てた男の名前を、もう一度聞くとは思わなかった」
男が杖を構え、魔法陣を展開する。
「抵抗するならば、容赦はしない」
「そうか」
蓮は静かに剣を持ち上げる。
青白い光が刃に走った。
「なら、容赦する気もない」
次の瞬間、光の閃きが夜を裂いた。
風が逆巻き、魔法陣が砕け散る。
ローブの男が驚愕の表情を浮かべ、膝をついた。
「な……何だ、この力……!」
「“再利用”だ。お前の魔法陣、壊れてたから直してやったよ。
――俺の形に、な」
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青い鎖のような光が男を拘束し、意識を奪う。
リアが呆れたように呟く。
「ほんと、便利なスキルだな」
「壊すより、直す方が性に合ってるだけさ」
蓮は倒れた男の杖を拾い上げた。
ひび割れた杖を《リサイクル》し、再生する。
そこから生まれたのは、精霊のような淡い光。
リアが見とれるように呟いた。
「綺麗……」
「これが、“再利用された命”だ」
蓮は微笑み、空へと光を放つ。
だがその瞬間、遠く王都の空でも同じ光が一瞬、輝いた。
悠真がその光を見上げ、唇を歪める。
「見てろよ、篠原蓮。
その“再生の力”――俺が全部、奪ってやる」
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