最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.

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第三章:「クラスメイトとの再会」

第34話:玲奈の涙

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 夜の森を駆け抜ける風が、まるで悲鳴のように聞こえた。
 玲奈はひたすら走っていた。
 木々の枝が頬を掠めても構わず、ただ前へ。
 あの声を、あの叫びを、もう一度止めたい――その一心で。

 (悠真くん……! どうして、まだ……!)

 足がもつれ、土に膝をつく。
 息は切れ、胸が焼けるように痛い。
 それでも立ち上がり、夜の闇を睨んだ。
 彼がいるはずの廃村へと続く道は、冷たい霧に包まれている。

 「お願い、間に合って……!」



 崩れかけた教会跡で、悠真はひとり膝を抱えていた。
 空気が重い。光が歪む。
 女神の囁きが、まるで糸のように彼の意識を絡め取っていた。

 『勇者は壊れた秩序を修復するための器。お前の意志は不要だ。』

 「……やめろ……俺は……俺は俺の意思で……!」

 拳を地に叩きつける。だが、手は震え、思考が霞んでいく。
 剣を持つ手に浮かぶ紋章が、淡く赤黒い光を帯びた。
 まるで、肉体そのものが“誰かの所有物”であるかのように。

 悠真の唇が、勝手に動いた。
 「破壊せよ――再生の異端者、篠原蓮を……」

 「悠真くん!」

 その瞬間、霧を裂くように玲奈の声が響いた。
 彼の動きが止まる。
 振り返ったその瞳には、焦点がなかった。

 「……お前か。玲奈。」
 「やめて、お願い。もう戦わないで!」
 「俺は戦うために生まれた。
  女神が俺を選んだ。……それが、俺の存在理由だ。」

 「違う!」玲奈が叫ぶ。
 「選ばれたから生きるんじゃない! 
  生きているからこそ選ばれるの! それを、蓮くんは――!」

 その名を出した瞬間、悠真の瞳が赤く染まった。
 「その名を、俺の前で出すな……ッ!」

 剣が閃き、地面が裂ける。
 玲奈は反射的に身を翻したが、衝撃波が頬を掠めた。
 血の味が広がる。

 「どうして……そんな顔するの……悠真くん……。」
 玲奈の声は、もう震えていた。



 一方その頃、メルディナ。
 蓮は再生炉の前で最後の調整を終え、リアとセリナに向き直った。

 「座標、ここで合ってる。あの廃村だ。」
 セリナが魔力視で確認する。「女神の波長が異常に濃いです。彼が……危ない。」
 リアが歯を鳴らした。「あんた、また命懸けで行く気か?」
 「放っとけないだろ。悠真を捨てたのは、かつての俺たちだ。」
 「……やっぱお人好しだな。」
 リアが呆れたように笑う。だがその尻尾は、僅かに震えていた。

 「転移陣、展開します。」セリナが杖を掲げる。
 「行こう。壊れる前に、直す。」



 雷鳴が轟いた。
 教会の屋根が崩れ落ちる。
 玲奈が瓦礫を避けながら、悠真に近づこうとする。

 「悠真くん! お願い、思い出して! あの日、私たちが約束したこと!」
 悠真は目を細めた。「……約束?」

 玲奈は息を飲む。
 (どうか、届いて……!)

 「覚えてる? みんなで帰ろうって言ったよね。
  “もし魔王を倒したら、元の世界に帰って――”
  って。
  あの時、あなた笑ってた。あの笑顔、嘘じゃなかった!」

 悠真の剣が止まる。
 手が震える。
 「……帰る、世界……? 俺には、もう……そんな場所……。」

 玲奈は首を振った。
 「あるよ。あなたが帰る場所は、まだここにある。
  蓮くんも、みんなも、きっと――」

 「うるさいっ!!」
 悠真の叫びが、空気を裂く。
 聖印が暴走し、周囲の魔力が爆ぜる。
 玲奈は吹き飛ばされ、地面を転がった。
 痛みが全身を貫く。それでも立ち上がる。

 「あなたがどんなに壊れても――!」
 彼女は血に濡れた手で胸を叩いた。
 「私が、何度でも“再生”させてみせる!」

 悠真が顔を上げた。
 その言葉の響きに、一瞬だけ――女神の鎖が揺らいだ。



 その時、青白い光が天から降り注ぐ。
 蓮が転移陣から現れ、すぐに状況を把握した。
 「玲奈、下がれ!」
 悠真が振り向く。「またお前か、蓮!」
 「……ああ。お前を取り戻しに来た。」

 蓮が手を掲げると、空気が震えた。
 《リサイクル》の紋が地面に展開され、崩壊しかけた教会の瓦礫が逆流するように再構成されていく。
 その光が、まるで悠真の心に触れたようだった。

 「壊されたものは直せる。
  でも、直そうとしない限り、何も変わらない。」

 悠真の剣がわずかに下がる。
 女神の声が必死に叫ぶ。『勇者、抗うな!』
 だが、もうその声は霞んでいた。

 「……俺は……勇者じゃない。俺は、俺だ。」

 聖印が砕ける音がした。
 悠真の膝が折れ、地に伏す。

 玲奈が駆け寄る。
 「悠真くん!」
 彼は微かに笑って、呟いた。
 「……玲奈、泣くなよ。お前、泣くとブサイクだぞ。」
 その言葉に、玲奈の涙が零れた。

 「バカ……本当に、バカなんだから……!」



 夜が明けた。
 瓦礫の教会に朝日が差し込み、崩れた壁を淡く染める。
 悠真は意識を失ったまま、静かに眠っている。
 蓮がその傍に座り、光を見つめた。

 「まだ終わっちゃいない。
  ……だけど、やっと“始まり”には戻れた気がするな。」

 セリナが微笑み、リアが小さく頷いた。
 玲奈はただ、静かに泣きながら彼の手を握っていた。
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