上司がSNSでバズってる件

KABU.

文字の大きさ
14 / 50

第14話:同じチーム、同じ気持ち

しおりを挟む
朝。
オフィスの空気が少しざわついていた。

「おい、見た? 新しい共同プロジェクトのチーム編成」
「広報と営業の混合って珍しいよな~」
「しかも、リーダー柊さんで、メイン担当が藤原!」

(……ついに正式発表)

モニターの前で、真由の心臓が高鳴る。
画面にははっきりと、

『プロジェクトリーダー:柊 誠
 サブリーダー:藤原 真由』

の文字。

(また、一緒に働ける……!)



数時間後。
広報部の会議室。
新チームの初顔合わせ。

柊がホワイトボードの前に立つ。
スーツの袖を少しだけまくって、いつもより軽い表情。

「まずは自己紹介から……と言いたいが、
 だいたい知ってる顔ばかりだな」

軽く笑いが起こる。

「今回の目的は、“会社のブランドを人で伝える”こと。
 それぞれの部署の“声”を集めて一つのストーリーを作る。
 ――以上」

(短っ!)

隣の席で、真由が小声でつぶやく。

「相変わらず要点しか言わない……」
「何か言ったか?」
「い、いえ! 何も!」

そのやり取りに、周囲が少し笑う。

美咲がニヤッとした目で言った。
「久しぶりに見たわね、課長……じゃなくて柊さんのツッコミ」
「仕事中だ」
「はいはい、“仕事中限定”ね」

(うわ、美咲さん、勘が鋭い……!)



会議後。
廊下を歩いていると、成田が近づいてきた。

「おい真由、なんかお前、また柊さんと息合ってるな!」
「ち、違うよ! 普通に仕事の話!」
「いや~、どう見ても“職場恋愛再開編”だろ~?」
「成田っ!」
「冗談冗談! でもまあ……羨ましいな、あの信頼感」

(……信頼、か)



夕方。
プロジェクトルーム。
資料を並べながら、柊と真由が向かい合う。

「藤原、この部分、もう少し柔らかい表現にしてみてくれ」
「はい……たとえば、“人のつながり”とか?」
「いいな。……やっぱり君の言葉は温度がある」

「っ……」
思わず手が止まる。

「相変わらず、褒め方ずるいです」
「事実を言っただけだ」
「それがずるいんです!」

彼が少し笑う。
その笑顔が、以前より近い。

(……この距離。もう“上司と部下”って感じじゃない)



夜。
残業フロアに二人きり。

「進捗、だいぶ早いな」
「課長――あ、えっと、柊さんがいると安心するから、かも」
「……課長でいい」
「え?」
「俺はもう“肩書き”にこだわってない」

一瞬、空気が止まる。

「……じゃあ、課長で」
「そのほうが落ち着く」

「私も、です」

視線が交わる。
その間に、言葉より強い何かが流れた。

「……このチーム、成功させよう」
「はい。絶対に」



翌朝。
出社すると、社内チャットがざわついていた。

《@WORK_LIFE_BALANCE:
“再出発は、同じ道をもう一度歩くことじゃない。
 隣を歩く人が、変わらないことだ。”》

「……また投稿してる」

そのコメント欄には、
“おかえりなさい”のメッセージが並んでいた。

(みんな、待ってたんだ)

スマホを見つめながら、
真由はそっと笑った。

その時、隣から声。

「藤原」
「はい?」
「コーヒー、ブラックでいいか」
「……覚えてたんですか」
「当たり前だ」

(もう、この人の隣が“日常”なんだ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

可愛い女性の作られ方

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
風邪をひいて倒れた日。 起きたらなぜか、七つ年下の部下が家に。 なんだかわからないまま看病され。 「優里。 おやすみなさい」 額に落ちた唇。 いったいどういうコトデスカー!? 篠崎優里  32歳 独身 3人編成の小さな班の班長さん 周囲から中身がおっさん、といわれる人 自分も女を捨てている × 加久田貴尋 25歳 篠崎さんの部下 有能 仕事、できる もしかして、ハンター……? 7つも年下のハンターに狙われ、どうなる!? ****** 2014年に書いた作品を都合により、ほとんど手をつけずにアップしたものになります。 いろいろあれな部分も多いですが、目をつぶっていただけると嬉しいです。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

10 sweet wedding

國樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-

プリオネ
恋愛
 せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。  ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。  恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...