富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《オペレーション・ラストソング》 Ⅱ

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 「石神先生、お願いがあります」

 《オペレーション・チャイナドール》が終了した数日後、鷹が俺の部屋に来て言った。




 鷹は毎日のようにロシア上空を偵察し、詳細な報告を上げている。
 《ブレイド・ハート》を率いて、少しでも多くの情報を集めようとしてくれていた。
 それは作戦上の必要性でもあったが、何よりも鷹はロシアで生き残っている人々を何とか救いたいと考えていたことを俺は知っていた。
 鷹は以前から偵察の合間に生きている人間を見つけると、毎回本部に救助の許可を求めて来た。
 本部も状況を確認しながら、救援部隊を送り、または鷹たちが直接救出した。
 そうした救出者は数千人にも上る。
 本来は偵察活動の中での救出は非常に危険であり、俺としては許可したくはない。
 当然、許可しなかったこともある。
 しかし、鷹が必死に頼んで来る。
 目の前に救える人間がいるとなると、鷹は毎回救助の許可を求めて来た。
 何度も敵の攻撃を受けたこともある。
 ロシア上空を鷹たちが飛んでいるのは敵ももう分かっていたので、攻撃のチャンスは逃さなかった。
 敵の攻撃に対抗する戦力を送るのは、それだけ損耗の可能性もあり、それは鷹も承知していたが、それでも、だった。
 俺もみんなも鷹の思いは分かっていたし、俺たちも、出来ることなら救いたい。
 だから出来るだけ協力していた。
 鷹は感謝し、その分ますます偵察に熱心に励んでいた。
 まあ、《ブレイド・ハート》は離脱スピードが「虎」の軍の中では最高だ。
 そのために結構な襲撃に遭っても鷹たちであれば逃げ出すことが出来た。
 しかし救助のために、自分たちが囮になって攻撃を引き付けることさえあった。
 俺は何度も鷹に注意したが、鷹は救出者を優先した。
 その心はもちろん分かっていたので、俺も強くは言えなかったのだ。

 そんな中で《オペレーション・チャイナドール》を決行した。
 中国全土で生存者を救出しながら侵攻する浄化作戦だった。
 中国がロシア同様に一切の通信が途絶えたからこその作戦決行だった。
 俺は10億もいた中国の人口から、生存者も膨大にいるだろうと考えていたのだが、実際には違った。
 中国は既に「業」により壊滅していたのだ。
 生存者は予想を遙かに下回り、1万人もいなかった。
 その結果に鷹もショックを受けていた。
 それに「虎」の軍にも多くの死傷者が出た。
 特に北京の大空洞でのものだったが、俺たちが知らぬ間にああいう仕掛けが既に構築されていることが脅威だった。

 だから、俺はロシアを壊滅させる作戦を決意した。
 もうこれ以上生存者を探している時間も無いし、危険も冒せない。
 まだロシア国内に生存者がいるだろうことは予測していたが、「業」の侵攻を止めなければならない段階に来ていたのだ。
 《ニルヴァーナ》は世界中のあちこちで常に感染者が絶えず、何度かパンデミックの危機もあった。
 それに「ゲート」による《百鬼夜行》も度々起こり、いくら俺たちがソルジャーやデュールゲリエを配備しても必ず死傷者が出た。
 しかも最近では人間による「虐殺部隊」が横行し始めている。
 「虎」の軍は常に迎撃し鎮圧しているが、それでも毎回死者や負傷者が出続けている。





 鷹は「ロシア浄化作戦」の実行に反対こそしながったが、最後に徹底的に生き残った人間を探し出して救出したいと申し出て来たのだ。
 俺としては、もうロシア人の救出は限界だろうと考えていた。
 生存者は少ないだろうし、反対に救出に伴う危険性は高まっている。
 特に《ディラック・クラウド》が拡がりつつあり、もうロシアにほとんど「人間」はいないだろうと考えられていた。
 しかし、鷹は必死に偵察任務の間に生存者の可能性を探し出し、まだ生き残った人間たちがシベリアの山中などにいることを突き止めて来た。
 
 「鷹、それは分かったが、もうこれ以上の救出作戦は難しいぞ」
 「はい。それは分かっています。でも、何とか救い出したいのです!」
 「……」

 「業」はロシアを完全掌握し、国土は魔界と化しつつあった。
 それが日々色濃くなって行った。
 「ゲート」をロシア国内の至る場所に瞬時に展開し、いつでも膨大な数の妖魔を輩出出来ると分かっていく。
 つい先日も鷹の「ブレイド・ハート」が数十京の膨大な妖魔に襲われそうになったが、超高速での退避でなんとか免れた。
 「ブレイド・ハート」はマッハ数百で移動するためだ。
 しかし、もうこれ以上の偵察も難しいと俺は判断した。
 また、地雷的な妖魔の噴出場所をいくつも展開し、俺たちが近づけば突然の襲撃に晒されることも判明していた。
 あの中国北京での「大空洞」の小規模なものだ。
 だからこそ、俺はロシア全土の壊滅作戦を決定したのだ。
 最も危険なのは《ディラック・クラウド》であり、それが《ニルヴァーナ》の空気感染型であることが判明した。
 救出の最中に《ディラック・クラウド》に覆われれば、生存者はもちろん、完全密封の気密服ですらどうなるのか分からなかった。
 鷹の率いる「ブレイド・ハート」の情報統括部門の長官アザーロフ・ドミトリーと副官のマルセル・イーストも鷹の主張する救出作戦には反対だった。
 俺も鷹を説得したが、鷹は尚も涙を流し俺に救出作戦を懇願して来た。
 俺は断り続け、鷹は俺に頼みに来続ける。

 しかし柳が「オロチ・ストーム」を編み出し、双子が《ディラック・クラウド》はもちろん、「ゲート」内部の無力化の効果も高いことを証明した。
 双子が鷹の願いを何とかしたいと考えていたのだ。
 「オロチ・ストーム」に最も喜んだのは鷹だった。
 まあ、最初は大笑いして習得出来なかったのだが、その時にはまだ「オロチ・ストーム」の効果が分かっていなかったせいもあるだろう。
 俺が「オロチ・ストーム」の完成記念パーティ(習得懇願パーティ)を開いたのだが、鷹はそれとは別に柳に感謝し、何度か《キャッスル・ドラゴン》に赴いて柳たちに渾身の料理を振る舞って感謝した。
 柳が子どもたちが大感激していた。
 「オロチ・ストーム」のお陰で、救出作戦が具体的な現実味を帯びて行った。
 鷹は茜と葵の《トラキリー》にも協力を要請し、茜たちももちろん全面的に同意して俺に嘆願に来た。
 また救援活動に熱心な六花と「紅六花」にも話し、六花たちも俺に頼み込んで来た。
 そうして最後の救出作戦《オペレーション・ラストソング》が決定された。
 俺が鷹たちの熱意に折れたのだ。
 鷹が涙を流して俺に感謝した。

 《オペレーション・ラストソング》の具体的な内容は、鷹の《ブレイド・ハート》が探し出した生存者の位置情報を元に、救出部隊が向かう、というものだ。
 この作戦の危険性は、鷹も十分に承知していた。
 だからこそ、詳細な生存者の位置を突き止めて行ったのだ。
 中でも危険性の高い場所には「紅六花」たちが向かい、シベリア山中の散開して生存している広域の生存者たちを「トラキリー」が救出する。
 その間も鷹の「ブレイド・ハート」が偵察しながら、他の場所の生存者も捜索し続ける。
 《轟霊号》をシベリア東端に接岸し、救出者の収容と支援部隊の待機場所とした。
 鷹の「ブレイド・ハート」がデュールゲリエたちを含めて500、「トラキリー」は同じく8000、「紅六花」は30000もの部隊になる。
 余談だが、「トラキリー」には発足以来、転属の希望者が殺到した。
 それは茜と葵たちに戦場で救われた者たちだった。
 彼女らに感謝し、自分も是非入隊したいとの希望だった。
 俺は「トラキリー」はそれほど大規模な部隊にするつもりも無かったのだが、自然と8000もの大所帯に膨らんだ。
 それに更に俺は迎撃要員として亜紀ちゃんと真夜、真昼、柳、それに羽入と紅を任命した。
 それと虎蘭。
 虎蘭はこの後の《オペレーション・ゴルディアス》に参加してもらうつもりだった。
 俺以外で《オペレーション・ゴルディアス》の参加者はこの《オペレーション・ラストソング》には加えないつもりだった。
 しかし虎蘭だけは特別に加えた。
 ある懸念があったためだ。
 強力な戦力を持つ者が必要だった。
 もちろん俺も同行する。




 鷹が本当に喜んでいた。
 あの日、俺に必死に頼んで来た鷹が、嬉しそうにしている。
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