富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ロックハート響子 Ⅲ

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 俺が夕食を作っている間、響子ちゃんは子どもたちとゲームをして遊んだ。
 俺にくっつきたがっていたが、包丁を持ったり火を扱ったりするから邪魔だ。

 オセロをし、トランプで遊んでいると、いつの間にか夢中になっている。
 ババヌキでは、皇紀が集中攻撃を浴びていた。

 先に上がった双子が、皇紀の後ろから響子ちゃんに抜くカードを教えるのだから、たまったものじゃねぇ。
 先に上がった者が皇紀の後ろに回る、というルールが確立していった。

 皇紀もカードを隠そうともしないのだから、見上げたもんだ。





 夕食は、響子ちゃんのリクエストで「焼き鳥」になった。

 俺はバルコニーに七輪を置き、ひたすら串に打った焼き鳥を焼いた。
 ちょっと酒が欲しくなる。

 鳥ばかりでは飽きるので、銀杏、アサリ、ホタテ、またナス、コンニャク、ピーマン各種、アスパラなども串に打ってある





 三分の一は塩だが、他はタレだ。
 タレは銀座の焼き鳥専門店に頼み込んで譲ってもらった。

 また、卵焼きにフライドポテト、ハマグリの吸い物を作る。

 ご飯もあるが、今日はバーベキュー的な食事だから、いつもよりも少ない。五合ほどだ。
 足りなければパンもある。









 響子ちゃんは

 「わんだほー!」「でりしゃす!」「くーる!」
 をネイティブ発音で連発する。

 子どもたちが顔を見合わせる。
 それから、双子を中心に、あれは英語でなんと言うのかをしきりに問い、ちょっと響子ちゃんを辟易とさせた。

 焼き鳥は200本も焼いたのだが、すべて子どもたちのお腹に消えた。

 亜紀ちゃんは
 「60本食べた!」
 と弟妹に威張っていた。

 よく太らないものだ。

 俺は残された大量の串を見て、何かに利用できないものかと思った。
 あまりに多いんだもん。



 食後は子どもたちが自分の部屋を紹介して回った。

 亜紀ちゃんは英語の教科書を取り出し、響子ちゃんに質問を幾つもした。
 だが、文法をどうやって説明していいのか分からない響子ちゃんは、半分くらいしか応えられなかった。

 皇紀の部屋はほとんどスルーされた。
 図鑑などで気を引こうと思っていたらしいが、惨敗した。

 双子の部屋では、有無を言わさずに、リボンや安物のアクセが披露され、響子ちゃんは恰好の人形代わりにされていた。





 そろそろ風呂に入れなければ。
 響子ちゃんは病院の狭い風呂で我慢していたのだから、のんびりと浸かってもらおう。

 まあ、シャワー文化だから浴槽には不慣れだろうが。


 使い方もあるので、亜紀ちゃんに一緒に入ってもらおうかと思ったが

 「タカトラと一緒がいい!」

 響子ちゃんがダダを捏ねた。

 双子が「いっしょに入ろうよー」と誘っても、頑として譲らない。





 M16を持つロックハート参事官の姿も目に浮かんだが、俺は一緒に入ってやることにした。
 8歳なんだからいいだろう。

 逆に、最悪なのかもしれないが。



 風呂場では夜明けや夕暮れ、月光のイメージ映像にフェリアーの歌を流した。
 照明を暗めにし、響子ちゃんの身体を洗ってやる。

 丁度満月の映像になり、響子ちゃんの小さな裸身が美しく照り映える。

 響子ちゃんの胸には、大きな手術痕がある。
 一生この傷と付き合っていくのだ。



 「今日は楽しかったか?」
 一緒に湯船に浸かりながら俺は聞いた。

 「うん」

 響子ちゃんは俺の脚の上に乗って呟いた。

 まだ身長が浴槽の高さに合ってないのだ。

 瑠璃と玻璃のときは、湯量を減らしている。

 俺はバブルジェットを入れてやったが

 「タカトラの音が聞こえない」

 と響子ちゃんが嫌がるので止めた。

 俺の音ってなんなのか。

 それなら、と俺は音楽を止めて歌い出した。
 俺には実は「お風呂場ソング100」があるのだ。
 実際は三倍くらいもあるが。

 甲斐バンド『百万ドルナイト』を歌ってやる。

 「俺の胸にとまった天使」

 という歌詞のとき、響子ちゃんは俺に向き直って抱き締めてきた。

 「稲妻の走る道よ」

 響子ちゃんは俺にキスをしてくる。
 頬だ。
 唇にすると、俺の歌が止まってしまう。



 「いい曲。タカトラは歌がとっても上手いよね」

 そんなことを言われたもんだから、俺は甲斐バンドの曲を続けて3曲歌ってやった。

 『LADY』『二色の灯』『翼あるもの』

 もう一度、リクエストで『百万ドルナイト』歌っている途中、

 「I LOVE YOU」

 響子ちゃんは俺の耳元でつぶやき、一層力を入れて俺に抱きついてきた。

 俺は頭から背中にはりついた長い髪をずっとなでてやった。









 風呂を上がり、俺は日本の風呂上りの作法を教えた。
 わざわざ買ってきたビン入りのフルーツ牛乳を、片手を腰に充てて飲むのだ。

 全員集めて実践すると、響子ちゃんもやってくれた。
 みんなで笑った。







 双子と寝るように言ったのだが、案の定響子ちゃんは俺と寝たがった。

 まあ、そうだろう。

 俺は響子ちゃんと一緒に寝てやった。
 響子ちゃんは俺の腕に抱きついて、ずっと離さなかった。





























 響子ちゃんの容態が急変したのは、それから三週間後だった。
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