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階段落ち
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六花から電話を受け、俺はすぐに病院へ向かった。
響子の状態に問題は無いということで、一先ずは安心した。
しかし、問題は別にある。
俺は一江に連絡し、三人とも病院へ来るように伝えた。
病院に着き、念のために響子の病室へ向かう。
「あ、タカトラ!」
響子は元気そうだった。
六花が夕飯の準備をしている。
「火事があったんだって?」
「うん。びっくりしたけど、六花がすぐに外に出してくれたの」
「そうか、無事でよかったよ」
「大丈夫よ」
俺は響子の頭を撫で、一杯食べろと言った。
六花に声をかける。
「おい、あとで俺の部屋へ来い」
「はい…」
俺の部屋では、既に一江、大森、栞が待っていた。
「座れ」
栞だけはきょとんとしている。
椅子は俺のものしかねぇ。
しかし、一江を大森が即座に床に正座したのを見て、慌てて同じくする。
六花が入ってきて、同じように正座をした。
「お前ら、俺が怒っているのは分かってるだろうなぁ?」
「「はい」」
「石神くん、申し訳ありません」
「申し訳ありませんでした」
「目をつぶって、顔を上げろ」
四人は正座をしたまま、目を閉じ、背筋を伸ばした。
右手で思い切り全員の両頬をビンタする。
バシン、バシンと恐ろしく大きな音が響いた。
四人の顔はみるみる膨れ上がり、赤く染まる。
一江と大森、そして栞の胸を蹴り、後ろへ倒す。
六花には、もう一度ビンタをかました後で、拳で殴る。
六花は壁まで吹っ飛んで、ぐったりとなった。
「響子のことで、俺に断りもなく何かしたら、次はねぇぞ!」
「「「「はい!」」」」
「出て行け!」
「「「「はい!」」」」
四人は部屋を出て行った。
六花は足が動かず、大森に担がれた。
「すぐに処置室へ行くよ」
「え、陽子、大丈夫なの?」
「あのね、次に部長に会った時に、顔が腫れてるとか赤くなってたり青かったりしたら、また殴られるから」
「どういうこと?」
「「お前ら! 俺に対する皮肉かぁ!」ってね」
「あたしらは慣れてるから。とにかく一緒に来なよ」
「うん、分かった」
処置室で、一江は斎藤を見つけた。
「げぇ、お前かよ」
「あ、副部長」
四人は空いているベッドにそれぞれ腰掛けた。
「よりによってなぁ」
「そんなこと言われても。今は当直は僕しかいないんですから、諦めてください」
「まあいい、さっさとやるぞ」
一江は六花の状態を見た。
脳震盪を起こしているらしい。
「大森! 六花をみてやってくれ」
「分かった!」
「栞はあたしがやる」
「えーと、僕は?」
「お前はあたしたちを後でやれ」
「分かりました」
一江と大森はテキパキと消炎剤と鎮痛剤を用意し、処置を始める。
口の中を見たが、小さな裂傷程度だ。
歯根も問題が無い。
「あの」
斎藤がおずおずと手を挙げた。
「なんだよ!」
「あの、一応聞きますけど、みなさんどうしたんですか?」
「「階段から転げ落ちた!」」
「ああ、いつもの」
「そうだよ」
「うちの部って、みんな結構階段から落ちてますよね?」
「当たり前だろう!」
「いや、なんて言うか、パワハラ的なものって」
一江が斎藤の胸倉を掴んで言う。
「お前な、もう4年も部長の下でやってるよな?」
「は、はい、その通りです」
「だったらいい加減に分かってると思うんだけど?」
「はい」
「石神部長は、あたしたちが失敗、ヘマをしても怒ったりは絶対にない」
「はい」
「あたしらが階段から落ちるのは、いつだって別なろくでもない理由だよ」
「はい」
「お前は分かってると思ってたんだけどなぁ」
「副部長、あんまり舐めないでくださいよ。僕だって石神組だ。部長の大きさ、優しさはもう分かってますよ」
「だったらいい」
一江は手を放す。
「でも、今回は花岡さんや一色さんまでいるじゃないですか。これって問題になりませんか?」
「大丈夫だ。まあ、何かあれば、あたしと大森で絶対になんとかする」
斎藤は真面目な顔をして言う。
「僕だって、やりますからね」
「ふん、生意気なことを言うようになったな」
「斎藤! 今度抱かれてやるぞ!」
「いえ、大森先輩、勘弁してください」
第一外科部の遣り取りを聞いて、栞は涙を流す。
「なによ、栞。しっかりして。もう終わったことなんだから」
「うん、でも申し訳なくて」
「大丈夫だから、痛みはどう?」
六花は大森から氷嚢を顎下から布で縛られた。
「しばらく頬に当てておいてね。一時間したら外して。新陳代謝が落ちるから。多分青あざになるけど、ファンデーションで隠すのよ」
「お手数をおかけしました」
六花は脳震盪も徐々に解け、深々と礼をして響子の病室に戻った。
一江は大森の処置を始め、斎藤に薬品の指示を出す。
響子は夕食を食べ終えていた。
「六花!」
両頬に氷嚢を当てている六花を見て、響子が驚く。
「片付けますね」
「そんなのより、六花、どうしたの?」
「ちょっと階段から落ちまして」
「えー! 大丈夫なの?」
「すぐに一江さんたちが処置して下さいました」
「でも、痛そう」
「大丈夫ですよ」
六花は笑おうとしたが、痛みで顔が引き攣る。
「こないだね」
「はい」
「痛いのがなくなる呪文を教わったの」
「そうですか」
響子は手招いて、六花をベッドに座らせる。
背中に回って小さな手を六花の頭に乗せ、目をつぶるように言った。
「いたいのー、いたいのー、あれ、なんだっけ?」
六花は目をつぶったままでいた。
「えーと、いたいのー、いたいのー、うーん……いたくない!」
六花は背を向け、目を閉じたまま、涙を流した。
「響子、ありがとうございます。痛みが驚くほど消えました」
「そう? よかったー!」
「はい、響子のお蔭です」
「響子、本当にありがとう」
響子の状態に問題は無いということで、一先ずは安心した。
しかし、問題は別にある。
俺は一江に連絡し、三人とも病院へ来るように伝えた。
病院に着き、念のために響子の病室へ向かう。
「あ、タカトラ!」
響子は元気そうだった。
六花が夕飯の準備をしている。
「火事があったんだって?」
「うん。びっくりしたけど、六花がすぐに外に出してくれたの」
「そうか、無事でよかったよ」
「大丈夫よ」
俺は響子の頭を撫で、一杯食べろと言った。
六花に声をかける。
「おい、あとで俺の部屋へ来い」
「はい…」
俺の部屋では、既に一江、大森、栞が待っていた。
「座れ」
栞だけはきょとんとしている。
椅子は俺のものしかねぇ。
しかし、一江を大森が即座に床に正座したのを見て、慌てて同じくする。
六花が入ってきて、同じように正座をした。
「お前ら、俺が怒っているのは分かってるだろうなぁ?」
「「はい」」
「石神くん、申し訳ありません」
「申し訳ありませんでした」
「目をつぶって、顔を上げろ」
四人は正座をしたまま、目を閉じ、背筋を伸ばした。
右手で思い切り全員の両頬をビンタする。
バシン、バシンと恐ろしく大きな音が響いた。
四人の顔はみるみる膨れ上がり、赤く染まる。
一江と大森、そして栞の胸を蹴り、後ろへ倒す。
六花には、もう一度ビンタをかました後で、拳で殴る。
六花は壁まで吹っ飛んで、ぐったりとなった。
「響子のことで、俺に断りもなく何かしたら、次はねぇぞ!」
「「「「はい!」」」」
「出て行け!」
「「「「はい!」」」」
四人は部屋を出て行った。
六花は足が動かず、大森に担がれた。
「すぐに処置室へ行くよ」
「え、陽子、大丈夫なの?」
「あのね、次に部長に会った時に、顔が腫れてるとか赤くなってたり青かったりしたら、また殴られるから」
「どういうこと?」
「「お前ら! 俺に対する皮肉かぁ!」ってね」
「あたしらは慣れてるから。とにかく一緒に来なよ」
「うん、分かった」
処置室で、一江は斎藤を見つけた。
「げぇ、お前かよ」
「あ、副部長」
四人は空いているベッドにそれぞれ腰掛けた。
「よりによってなぁ」
「そんなこと言われても。今は当直は僕しかいないんですから、諦めてください」
「まあいい、さっさとやるぞ」
一江は六花の状態を見た。
脳震盪を起こしているらしい。
「大森! 六花をみてやってくれ」
「分かった!」
「栞はあたしがやる」
「えーと、僕は?」
「お前はあたしたちを後でやれ」
「分かりました」
一江と大森はテキパキと消炎剤と鎮痛剤を用意し、処置を始める。
口の中を見たが、小さな裂傷程度だ。
歯根も問題が無い。
「あの」
斎藤がおずおずと手を挙げた。
「なんだよ!」
「あの、一応聞きますけど、みなさんどうしたんですか?」
「「階段から転げ落ちた!」」
「ああ、いつもの」
「そうだよ」
「うちの部って、みんな結構階段から落ちてますよね?」
「当たり前だろう!」
「いや、なんて言うか、パワハラ的なものって」
一江が斎藤の胸倉を掴んで言う。
「お前な、もう4年も部長の下でやってるよな?」
「は、はい、その通りです」
「だったらいい加減に分かってると思うんだけど?」
「はい」
「石神部長は、あたしたちが失敗、ヘマをしても怒ったりは絶対にない」
「はい」
「あたしらが階段から落ちるのは、いつだって別なろくでもない理由だよ」
「はい」
「お前は分かってると思ってたんだけどなぁ」
「副部長、あんまり舐めないでくださいよ。僕だって石神組だ。部長の大きさ、優しさはもう分かってますよ」
「だったらいい」
一江は手を放す。
「でも、今回は花岡さんや一色さんまでいるじゃないですか。これって問題になりませんか?」
「大丈夫だ。まあ、何かあれば、あたしと大森で絶対になんとかする」
斎藤は真面目な顔をして言う。
「僕だって、やりますからね」
「ふん、生意気なことを言うようになったな」
「斎藤! 今度抱かれてやるぞ!」
「いえ、大森先輩、勘弁してください」
第一外科部の遣り取りを聞いて、栞は涙を流す。
「なによ、栞。しっかりして。もう終わったことなんだから」
「うん、でも申し訳なくて」
「大丈夫だから、痛みはどう?」
六花は大森から氷嚢を顎下から布で縛られた。
「しばらく頬に当てておいてね。一時間したら外して。新陳代謝が落ちるから。多分青あざになるけど、ファンデーションで隠すのよ」
「お手数をおかけしました」
六花は脳震盪も徐々に解け、深々と礼をして響子の病室に戻った。
一江は大森の処置を始め、斎藤に薬品の指示を出す。
響子は夕食を食べ終えていた。
「六花!」
両頬に氷嚢を当てている六花を見て、響子が驚く。
「片付けますね」
「そんなのより、六花、どうしたの?」
「ちょっと階段から落ちまして」
「えー! 大丈夫なの?」
「すぐに一江さんたちが処置して下さいました」
「でも、痛そう」
「大丈夫ですよ」
六花は笑おうとしたが、痛みで顔が引き攣る。
「こないだね」
「はい」
「痛いのがなくなる呪文を教わったの」
「そうですか」
響子は手招いて、六花をベッドに座らせる。
背中に回って小さな手を六花の頭に乗せ、目をつぶるように言った。
「いたいのー、いたいのー、あれ、なんだっけ?」
六花は目をつぶったままでいた。
「えーと、いたいのー、いたいのー、うーん……いたくない!」
六花は背を向け、目を閉じたまま、涙を流した。
「響子、ありがとうございます。痛みが驚くほど消えました」
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「はい、響子のお蔭です」
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